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まだ恋をした事がない
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しおりを挟むデートというものを初めてした。
きっと何もかもが不格好で、何一つとして思い通りに出来た事なんて無かった。
つくづく自分が何も出来ない人間なんだと思い知らされるが、彼女はまったく
そんな事を気になどしなかった。
そんな所がいいなって思った。
この人となら一緒に生きていけるって思った。
だから別に断る必要なんてないし、それはきっと失礼な事になってしまうのでは
ないだろうか? tとさえ思ってしまう。
でもいいのだろうか本当に?
「あれ、入らないんですか? 」
ラブホテルの前で彼女にそう聞かれて、自分の足が止まっている事に気が付く。
だってまだ一回目のデートだし、こういうのは良くないのではなかったか?
否、それはこっちから誘うのがダメで向こうから誘われれば問題はないのでは?
いろんな思いが頭の中を駆け巡り、巡りながらも足は動いた。
結局は単純な生き物で、欲求には勝てないのだ。
だから何も間違っていない。
この結果は当然なのであって決して仕組まれたものではないのだ。
そもそもこれは望んでいた事ではないか。
「赤ちゃんが出来ました」
それだけの事をしたからそれはそうなのだろうという思いと、こんな形で自分が
結婚を決める事になるのだという予想外な展開に不思議な気持ちになったが、
それでも言うべき事は分かっていたし、何を言うかはすでに決めていた。
「結婚してください。必ず幸せにします」
そこからは順調に話は進んだし、彼女の体調も考えて簡単な結婚式だけで済ませ
ることになった。家に帰れば彼女が迎えてくれるという生活のなんという幸せな
事か、求めていたものが本当に手に入ったのだ。
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なんて愛おしいのだろうか?
そして赤ちゃんが生まれた。
幸せだった。
来世に期待していたはずだったのに、今は来世なんて無くていいと思う。
この幸せな今をどんな事をしてでも守りたかった。
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あんなに苦しい思いをして生んだはずの我が子だろ?
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