恋愛倉庫

愛している

３

　男には何の能力もないと占い師に証明されてからというもの男達の扱いが雑に
　なったのは当然の結果なのだろうが、それよりも男達自身にやる気が無くなった
　のが一番大きかったのだろう。何処にも逃げ道がなくなってしまったのだから。
　
　
　自堕落な生活。
　それが日常になってしまったらきっともう終わりだと思った俺は、みんなを盛り
　立てる事にした。自分一人ではどうしたって無理だと思ったが、仲間が居れば
　どうにかなると考えたからだ。
　
　
　まずは幼馴染のデックからだった。
　
　
「やっぱりな、お前ならそう言うと思ったよ」


　デックはすぐに俺の言う事を理解してくれて、そして協力してくれた。
　俺達にだって出来る事はあるとみんなを奮い立たせ、何だっていい、成功体験を
　すれば自信はついてくるのだ。それを積み重ねて行けば俺達は大丈夫なはずだと
　軟弱なシステムによって俺達はどうにか毎日を生き抜いていた。
　
　
　でも誰もが俺達の言う事を聞いてくれる訳じゃない。
　方向性が違う者も当然いて、他人の足を引っ張る事でしか自分の存在を証明
　出来ない様な奴らは必ず居るがそんな奴らを相手になんてしていたら身が持たな
　い。だからそんな奴らは存在しない事にしたのは仕方が無い事だったと思う。
　

　存在しない奴らとの意思疎通は占い師にでもさせておけばいい。
　そんな事よりも俺達は真っ当に生きて行くべきだろう。例えどんなに辛い状況
　だとしてもそれでも精一杯生きる事が重要なのだ。そう信じた結果俺は婚約者
　になる事が出来たのだから間違いではなかったと思った。
　
　
　でもそれは救いなどでは無かった。
　何が変わる訳でもなかった。
　結局俺は認められるなんて事もなく、ただただ振り回されるだけだった。
　それでも何かあるはずだと、何かに期待していたのはもはや信仰にも似た境地
　であったが、それすらも無残に叩き潰された。
　
　
　突然の婚約破棄。
　
　
　ブツっと自分の中で糸が切れたような音がした。


　デックは俺がこのサバイバルに参加すると思っているだろうし、誰もが既に俺の
　動向を伺っていた。元婚約者である俺が有利な情報を持っているのではとさっそ
　くハイエナのように嗅ぎまわる連中が現れ始めている。でももうそんな事なんて
　どうでもいいのだ。
　
　
　だって俺はこのサバイバルには参加しないのだから。
　
　
　もう全てを諦めた。
　全部が無意味に終わった。
　でももう十分に頑張ったのだからそれでいいだろ？
　これ以上何もしたくなんかない、自堕落に生きる事はそんなに悪い事ではないっ
　て思うよ今は。