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愛している
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しおりを挟む「ちょっと何してるのよ」
勝手に俺の部屋へ入って来た女は就寝中だった部屋の主を蹴り起こす。
突然の事で何が起こったのかが理解出来ていない頭が最初に思った事は
『なんだまだ早朝じゃないか』である。
まだ誰もが眠っている朝の9時に起こされるのは最悪だった。
そして俺はもう一度眠ろうとベットへ這いあがった。
正直何処の誰が来たとかどうでもいいのだ、今はただ眠りたいという欲望が
俺の原動力である。
「はあ? 寝させないわよ。ちょっとこいつを連れて来て」
ドタバタと誰かが入って来てドタバタと俺は連れていかれるが、それさえも
どうでもよくて目を開ける事すらしなかった。だから水をかけられて起こされた
時は流石に怒鳴った。
「なんて事をするんだ! これじゃあ寝れないだろ」
「寝させない為に水をかけたんだからそれでいいのよ! 何をまだ寝ようとしてい
るのよミブラ! 」
「なんだルリアナか。何か用か? 」
辺りを見回してここが何処なのかを確認した結果、俺は仕方なく目の前にいる女
と会話する事にした。だって黒ずくめに囲まれているんだぜ? 流石に痛いのは
嫌だ。
「どうして参加してないのよ。訳を言いなさい! 全てミブラの為に準備をした
のに当人が居ないんじゃ意味がないでしょ? 」
「何を言っているんだ? 俺は婚約破棄をされたんだろ? それなのにどうして
参加しないといけないんだ? そもそも俺の為って何だよ。ルリアナの為だろ?」
まったくもって理解出来ない。
一体あれの何処に俺の為の要素があると言うのだろうか?
「はあ? どうして私がそんな事をするのよ」
「俺に聞かれたって知らないよ。全部自分で始めた事だろ? それとも占い師に
でも勧められたのか? 」
「そんな訳ないでしょ! 私がどんな思いで準備をしたと思ってるのよ。
折角ミブラの為に準備したのに全部無駄になってしまったのよ、謝りなさいよ」
どうして俺が謝らないといけないのだろうか?
でも何だかそれでもいい気がして来た。
それでこのやり取りが終わるのであればそれでいい。
「ごめん。これでいいか?」
言われた通りに謝ったのに状況に変化はなかった。
「アンタね、私の思いを踏みにじっておいてよくもそんな……」
「思い思いって何だよ! 俺に興味何て無かっただろ! 」
何をそんなに怒る事があるというのだろうか? 世界富豪である彼女にとって
みればあれぐらい大した事ではないはずだ。それなのに何がそんなに気に入らな
いというのか俺には理解出来ない。まあ一度も理解なんて出来た事は無かった
訳ではあるけれど、それにしたって不可解だった。
「私は……愛していたのよミブラの事を、たぶん」
とても言いにくそうに、恥ずかしそうに言うルリアナ。
何だよそれは、ふざけているのか?
「俺も愛しているよ」
「じゃあ……」
「勘違いするな! ルリアナが愛してるのは俺じゃなくて自分自身だ。
俺が愛しているのはこの自堕落な生活だ。だからもう放っておいてくれ、
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そして俺は家に帰る。
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