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菫川ヒイロ

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ビルダヴ家の掟

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 力こそが全て
 
 
 それが我が家のルール。パワーオブパワーが基本原則であるのだから俺は当然の
 ように勝負を挑むのである。
 
 
「親父、俺と勝負をしてくれ! 」


 何においても勝負から始まり、勝負で終わる。
 だから我が家では必ず頂点である親父に挑む事から始まり、勝てば願いは叶うの
 である。だからこそ俺は挑むのだ、彼女との結婚を許してもらう為に。
 
 
「ロビ、馬鹿な事を言っちゃあいけない。俺よりも弱い奴が親父に勝負を挑むなん
 て百年早い。まずは俺達を倒してからだ」
 
 
 そう言って兄ちゃんは俺の前に立ちはだかるのである。
 その鍛え上げられた肉体を誇示して、俺にプレッシャーをかけてくる。
 だがそんなプレッシャーごときに負ける訳に行かないのだ。
 だって俺は彼女と結婚すのだから。
 
 
 愛する人と必ず一緒になってみせる!
 
 
 その思いだけで俺は強く成れる。
 だから絶対に負けたりなんかしない、それが男というものだ。
 
 
「クツ兄、勝負だ」


 そして俺はまず、次男のクツ兄に勝負を挑んだ。
 
 
「え? 俺もすんの? 面倒臭ぇな、もうお前の勝ちでいいよ」


 クツ兄はそう言って辞退し、俺の不戦勝が確定する。
 
 
「おい、お前そんな事でいいのか? 
 ビルダヴ家の男として恥ずかしくはないのか! 」


 兄ちゃんはクツ兄に言うがそんな事にはもう慣れている。


「久々にフルパワーの兄ちゃんが見たいんだよ。前よりも強くなってるんだろ?」


「まあな」


 簡単に乗せられてしまう兄ちゃんだが、でもそれは俺にとってはあまりよろしく
 ないのだ。何故ならば兄ちゃんは滅茶苦茶強い、ただそれだけの理由である。
 そんな馬鹿な理由があるのかと見た事が無い人はいうだろうが、見た事がある俺
 が言うのだ、尋常ではないのだ。
 
 
 でも、それでもここさえ乗り越えられたなら俺は結婚出来る。
 親父はもう歳だし、明らかに弱ってきているのが分かる。
 俺だってこの日、この時の為に鍛えて来たし、勉強もして来た。
 クツ兄で無駄に体力を消費する事などなく兄ちゃんに挑めるのだ、これは寧ろ
 好機である。
 
 
 この点に関してはクツ兄の優しさなのだろう。
 でも兄ちゃんを煽ってフルパワーを出させるようにしたのは勘弁して欲しかった。
 
 
「じゃあいくよ~」


 クツ兄の号令により俺達は向かい合い、手と手を握る。
 勝負はもう始まっている。何度も何度も自分のカタチになるように握り直す。
 
 
「巻き込むなよ」


 分かっている。分からない程度に巻き込む術を俺はもう習得しているから。
 どうすれば俺が有利な状況になるのかは研究積みであった。
 そして始まる運命のアームレスリング。
 
 
「レディ、ゴー! 」


 勝負は一瞬。
 気が付けば俺は仰向けの状態だった。
 腕の力だけで回されたのだ。
 こんなもの、どうやったら勝てるんだ……
 
 
「勝者、兄ちゃん」


 勝ち名乗りが上がる中、呆然と天井を眺めていた俺の方を見て兄ちゃんは言う。
 
 
「残念だったなロビ」


 俺にはその顔が悪魔に見えた。
 







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