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菫川ヒイロ

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ビルダヴ家の掟

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「よう! 」


「よう! 」


 そんな挨拶をするのはいつもの事で、俺は買って来た物を冷蔵庫へと入れる。
 その間も別にニタは何も言わない、読んでいる本から全く視線を外さない。
 そもそも家の中に勝手に入って来ているのに、それすらも気にしていないのだ。
 俺の事を許しているのか、それとも気にすらしていないのか、どちらかと言えば
 前者であって欲しいとは思う。
 
 
 入れ終わったら俺はすぐにニタを後ろから抱きしめた。
 
 
「なに、どうしたの? 」


 そう言いながらもニタは本を読み続ける。
 だから俺も負けじと耳を齧った。
 
 
「もう、今良い所だから邪魔しないでくれる? 」


 ニタはそう言うがこっちだって溜まっているのだ。
 我慢なんて出来る訳がない。折角久しぶりのお泊りである、どれだけ楽しみに
 していたと思っているのか? 俺はもう我慢なんて出来ないし、そんな聞き分け
 のいい子ではないのだ。
 
 
「え? もう、しょうがない人だなぁ」


 そしてニタも俺を受け入れてくれた。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 ニタは一個下の学校の後輩だった。
 俺が通っていた学校は学力が高めの男子校である。
 そんな中で日々競い合う事を求められた俺達が何処かにはけ口を求めるのは
 自然な流れだった。
 
 
 勿論、近くに女子校もあって普通に彼女持ちも居たには居たが、それでも俺達は
 そうはならなかった。認め合えるのはニタしか居なかったのだ。だからそれが
 歪だとも思わないし、普通だったのだ。
 
 
 そして俺達は今も変わらずこうして一緒に居る。
 休みが合った日はニタの家に入り浸るのいつもの過ごし方だった。
 
 
「僕の為にクツーリも戦ってくれるのかな? 」


 我が家の掟の話をしたらニタにそんな事を聞かれて俺は戸惑った。
 今までそんな事、考えた事も無かったのだ。もしそうなった時、俺は兄ちゃんに
 挑むのだろうか? あの兄ちゃんに? 別にそれがおかしな事ではないのだ、
 我が家では力が全てなのだから。
 
 
 勝ってしまえば誰も文句なんていう奴はいない。
 そう言う意味では非常にシンプルで分かりやすい。
 そうであるのなら考えなければならないのだ、俺も。
 弟と同じように兄ちゃんを倒す方法を。
 
 
 そして俺は思い出していた、あの兄ちゃんの姿を。
 弟を瞬殺し、呆然としている弟へ向けたあの顔を。
 
 
 だから少しだけ怖くなってしまって俺はニタを抱き寄せた。
 
 
 






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