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悪の根源

４

　手にしたのはモデルガン。
　こんな物で俺を殺そうとしていたのか？
　間抜けめ、こんな事すら分からない奴に俺は一体何をムキになっていたのだろう
　か？
　
　
　全てが無駄だった。
　こんな事をする為にわざわざ食事会を止めたというのに、こんな事なら適当に
　誰かを寄こせば今頃は気分よく酒を飲めていただろう。
　
　
　らしくない。
　全くもって俺らしくなかった。
　こんなつまらないミスをしてしまう程に俺は惚けてしまっていたとでも？
　この俺が？
　
　
「ああ、それは私が変えて置いたのよ。流石に危ないでしょ？　本物は」


　俺が自分の不甲斐なさに呆れているとそんな事を後ろから言われた。
　そうだった、この部屋にはもう一人居たという事をすっかり忘れていた。
　
　
「何を言っている？　」


　俺が振り向けばそこにはこちらに向けられた銃口があり、俺の思考は答えを
　導き出すのだ。そういえば部屋に入った時の男がどうして跪いていたのか、
　それはよく考えれば何かを探している姿ではないか！　それなら全てに納得
　出来る。


　パ―――ン
　
　
　乾いた音が響く。
　でも誰もその音を不思議に思う者なんてここには誰もいないのだ。


　久しぶりに撃った割にはちゃんと当たってくれて安心している私。
　きっとパパならこんな私の姿をみたら怒るであろう事が想像出来て、
　思わず苦笑いをしてしまうのは昔からの癖だ。
　
　
　目の前に転がる二つの死体をどう処分すればいいのかと考える事などなく、
　当然の様に火葬にした。部屋に在ったライターと持って来た殺虫剤で燃やした。
　これでリセット出来る。
　それが今の私が最初に思った事だった。
　
　
　早くしないといけない。
　火のついた部屋を出た私はエレベーターまで走った。
　悪の根源はもう無くなった、これからは私の新しい人生の始まりだ。
　そしてエレベーターの扉は既に開いていた。
　
　
「やっと来たのかい、待っていたよ」


　老婆がエレベーターの中から私にそう言った。