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その恋は危険です
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しおりを挟むシャッとカーテンを開ければ光が射し込んだ。
昨日とは違い天気は晴れ、少しだけ気分が上がるのは刷り込まれた所為なのだ
ろうけど、それでも気分よく今日を始められるのは良い事だと思う。
結局何だって気の持ちようなのだから、それなら少しでも気分よく過ごした方が
いいに決まっているし、小さくてもプラスはプラスなのでどんな些細な事でも
加点方式にしている。
目玉焼きが上手に焼けたとか、前髪がばっちり決まったとかそれだけで、いいえ
そう言う細かな加点が重要なのだ。例え時計の針が止まっている事に気付くのが
遅かったとしてもだ。
*****
ハアハアハアハア
朝の空気はとても清々しくて、走っていると余計にそれが感じられて寧ろラッキー
なのではないかと思う。ほら今だって私がちょうど着いた時に信号が青へと
変わったではないか!
ハアハアハアハア
少しばかりの運動不足もこれで全てがチャラにはならないにしてもきっとプラス
にはなるはずだ、そう思えば会社に遅刻しそうになっているこの状況も悪くは
ないのだ。
ハアハアハア あっ
今日は晴れているけど、昨日までは雨だった。だから路面が滑りやすくなって
いた事に気付いた時にはもう私の身体は無重力で、そしてこれから地球に吸い寄せ
られる事が決定していた。
「おっと、大丈夫ですか? 」
私は地球にではなく人間に吸い寄せられた。
「あはっ」
思い寄らない事に遭遇した時に出た言葉は、言葉なのか息なのかも分からない
そんな音で、でもしっかりと私を抱きとめてくれた相手があまりにもカッコ良す
ぎたのはかなりのプラスだった。
「怪我はないですか? 」
胸は既に痛い。ドキドキが止まらない。これは走っていた所為でなんかなくて
私が彼にときめいているからだ。嗚呼、なんて最高の出会い方なのだろうか?
こんな運命的な出会いがあるなんて最高なのでは?
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
いつまでも、永遠に、彼の腕の中に居たかったけど、そんな訳にもいかないので
私は彼から離れて、身だしなみをチェックするのは怪我を気にしたのではなく
彼の前では最高の私で居たいからだ。
「よかった、じゃあ気をつけて下さいね」
そんな眩しい笑顔が私を襲う。
駄目だ、これを逃していけないと私の直感が言っている。
服装からいって学生だろうか? でもそんな事などどうでもいい事だった。
「あの」名前だけでもと行ってしまう彼を呼び止めようとした時
「シルバ! お弁当忘れてるわよ! 」
大きな声で走ってくる女性。
「あ、ママ。ありがとう」
そして私は大きく朝の空気を吸い、息を整えてから歩き出す。
どうやらもう心臓は落ち着いている。
「もう、他に忘れ物はない? 大丈夫なの? 」
「うん、大丈夫だよママ」
私は思い出した。
今、私は遅刻しているのだと。
だからまた走り出す。
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