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旅の行方
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しおりを挟む夜道を母と一緒に手を繋いで歩いたあの日
「ごめんね」と言われて私は許す事なんて出来なかったし、
ましてや怒る事など出来るはずもなく、ただ母の細い指の一本一本がしっかりと
感じられたあの夜の事を忘れる事は無かった。
*****
子連れの女が旅をするという事がどういう事なのかなんて私にはまだよく
理解出来ていなくて、ただ母と一緒に居られるというだけで嬉しかった。
ましてや知らない場所へ行くという経験は子供だった私には冒険に出るような
感覚だった。
知らない街、知らない人、知らないモノばかりで目が回りそうになる私の手を
母が握る。これは決してはなしていけないと自分で思いながらも視線はあちこち
飛んでいるから上手く歩けずに母を困らせていた。
「しっかり歩いて、私が歩きにくいから」
母にそう言われたって子供の好奇心がそうそう抑えられる訳もなく、私はそんな
やりとりを何度も繰り返し、「あれは何? 」ととにかく聞き、「あれが欲しい」
ととにかく強請った。今ならそんな事は出来ないって知っているし、無理だと
言ってくれればまだ受け入れられたのかもしれない。
「駄目よ」
そんな母の言葉が私にはどうして駄目なのか、何が駄目なのかと駄々をこねる
理由には十分な言葉だった。なんて面倒な子供であった事だろう。そんな私を
黙らす為に母は結局買い与えてくれた、その時買って貰ったお菓子の味なんて
大しておいしいものでは無かったのに。
そんなものさえ買わなければ少しは違ったのかもしれない。
もう少しだけ夢の様な時間を味わえたのかもしれない。
無駄遣いの果てに待っていたのは当然のように夢の終わり。
耳を塞ぎたくなる現実だった。
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