恋愛倉庫

旅の行方

２

　父の名前はロダレーズニー。
　肌は浅黒く、髪は深い緑。右の脇腹に星型の黒子がある。何故かは分からないが
　癖のある独特の言葉遣いをする。それが婚約者であった母を捨て、どこの馬の骨
　かもしれない女と駆け落ちした男だった。
　　

　当然そんな男が幸せに暮らせるなんて訳がない。
　何故ならそれが村の掟だったからだ。
　婚約破棄という重罪には死をもって償うのがこの村での決まり。
　そしてそれは母の役目であった。
　
　
　ただ母のお腹の中には既に私がいた事が全ての始まりだった。
　父は全てが計算ずくであったのだ、母がすぐに追っては来れない事を分かって
　いての駆け落ちである。
　
　
「だから私は反対したのだ、あんな男なんか信用できないと！　我が家に迎え
　入れるなんてするべきでは無かった！　なんて事だ！　ご先祖様に何と言えば
　いい、私の代で終わらせてしまうではないか！　」
　
　
　温厚だと思っていたお爺様が取り乱しているのをその時母は初めて見たという。
　
　
「落ち着いてあなた。今更そんな事を言ったって仕方がないじゃない。この子が
　追う事は出来ないのだから、あなたが追って頂戴。あなたがあの男を連れて帰っ
　てくればいいのよ。それで全ては丸く収まるから」
　
　
　お婆様は冷静に状況を判断し、お爺様を送り出す。
　そして父の実家へと乗り込んだのは当然の事だった。
　どう落とし前を付けるのかを話しに行ったお婆様が父の家へ着いた時にはもう
　家が燃えていた。
　
　
　それは父が火を放ったのか、それとも自分達で燃やしたのかは分からない。
　焼け跡からは三人分の骨が見つかった。
　父の両親とまだ幼かった妹。
　物事はどんどんと大きくなって行った。