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それもまた理
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しおりを挟む勇者の願いは彼女の命を救う事。
それは確かに叶った、この世界から魔法を失くす事と引き換えに。
結果、一人の少女の命が救われた。
それで大団円だったはずである。
*****
「すまないな、こんな物しかないんだ」
私はお茶と一緒に木の実を出した。
何も無いよりはマシだと思ったが、これならお茶だけの方がよかったかも
しれないと出した後に気付いてしまった。
「ありがとう。頂くよ」
勇者は私のそんな気も知らないでパクパクと食べる。
まあ味なんてそんなに気にするような奴でも無かったなと、少しだけ昔の事を
思い出す。
あの頃はいろんな事があったな、なんて年寄りくさく考えてしまう自分に苦笑を
浮かべる私に勇者が聞く。
「実はな、ここに来るまでにいろいろ言われたんだ魔法使いだった者達に。
『なんて事をしてくれたんだ! 』とか『これからどうやって生きて行けばいい
んだ、責任を取れ! 』だとかさ。今まで魔法で全てを賄っていた者達にすれば
そうだよな。俺の所為で出来た事が出来なくなって、不便になってしまったんだ。
普通の魔法使いがそんなだったら、世界一の魔法使いはさぞ大変なんだろうって
さ」
「よせやい! 別に私は世界一では無かっただろうに。まさか英雄様に褒められる
とか恥ずかしいじゃないか! 」
体温が上がるのが分かる。
「お前は相変わらず、変な所で律儀だな」
「ほっといてくれ! 私達の世界では褒められるなんて事に慣れている奴なんか
居ないんだよ! まったく、恥ずかしい奴だな。あ~恥ずかしい」
私はパタパタと手で顔を仰いだ。
きっと今、私の耳は真っ赤になっている事だろう。
想像すると余計に体温が上がる。
「何か困っている事は無いか? 俺でよければ手伝うぞ? 」
そしてそんな事を真剣に聞いてくる彼を私はきっぱり断った。
「要らないよ。気持ちだけで充分さ。私は今の生活に満足しているし、それに
楽しいんだ。今までは魔法で何だって出来たし、出来ない事なんて何も無いと
思っていた。でもこうして魔法が使えなくなってから毎日が楽しいんだ。
どうやってやるかを考えるのが楽しいし、出来た時は凄くうれしい。初めて
魔法が使えた時みたいな、あのワクワクする感じがするんだ。それにだ、私は
すぐに気付いたよ。やっている事は魔法となんら変わりなんて無いって事に。
文句を言っていた奴らなんざ、所詮魔法を使っていただけだ。魔法ってものを
理解している者にとっては何も問題はないのさ」
だから私は新しい魔法が使えるようになった気分である。
「そうか、それならよかったよ」
「ああ。もう心配事も無くなっただろ? さっさと帰ってやれよ。彼女が待って
いるんだろ? 」
少しばかりの嫌味もあったが、気を利かせたつもりだった。
「そうか、お前は知らないんだな。別れたんだ」
まさかそんな言葉が帰ってくるなんて思っていなかった。
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