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お前しかいない
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しおりを挟むようやく邪魔者も居なくなり、私だけの時間になった。
迎えにきた鈴に「お詫びにどうぞ」と缶コーヒーを貰ったので、
「安っすいお詫びだな」とお礼を言っておいた。
鈴は眉間に皺をよせながらも笑って帰って行く。
とぼとぼと歩く栄ちゃんと弾むように歩く鈴、そんな二人を見送りながら
私は気合を入れた。この映画は成功させなくてはならないのだ。
さっそく作業を始めた私はずっとモニターと睨めっこをしていた。
「良いのよ、良いのが撮れてるのになぁ」
私に残された時間など後わずかしか無いというのに、こうして見入ってしまう
それだけのものなのに、あの馬鹿の所為で私はこんなにも苦労しないといけない
とは損な役回りでもあり、やりがいという面でいうなら最高なのだろう。
「ブラックだわ」
編集作業を進めながら、鈴に貰った缶コーヒーの存在を思い出して一口、
口にした。
「まっずいコーヒーは目が覚めるわ~ 」
コーヒーとはまた違う、缶コーヒーという飲み物は私には合わないのだ。
そもそも私は紅茶派であるのだが、そう言えば誰にもそんな事言っていなかった
事に今更気づいて、おかしな関係があるものだと思う。
もうすっかり気心の知れた仲だと思っていたのに、
こんな事も話してしなかったのだから
「別にいいんだけどね」
私達は別に仲良しクラブをしたい訳ではないのだから、
知らなくてもいいはずなのに、鈴ならそういうのも分かってくれるんじゃないか
と、何処かで期待していたのかも知れない。
「ピーターは何でも知ってるのね」
私はこの台詞を言うときの千里が一番好きだった。
完全に入り込んだ千里の顔はもはや別物のようになるのは、
レンズ越しにいつもゾクゾクしながら撮っている
だからつい私もマネして言ってしまうのだ、
そうする事で私もお話の中に入ったように錯覚できるから。
「栄ちゃんはやっぱりうまいのよね、千里の扱いが」
いつの間にか栄ちゃんと呼ぶようになったのは鈴の所為ではあるけれど
それが当たり前でもう塚田君なんて気持ち悪くて言えそうにない。
栄ちゃん、栄ちゃん、スケジュール管理も出来ないポンコツの栄ちゃんは
こちら側の人間なのではと私は思っているが、その答えは鈴が出さないと
いけない事なので私は栄ちゃんに厳しく接するのだ。
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