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お前しかいない
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しおりを挟む祭りの日から部長の様子がおかしい。
部活中なのに気もそぞろで、まったく集中しておらず、
小さなミスが何度も続く、そんな事が何度もあって
今ではもう練習さえしなくなってしまったのだ。
あれだけ威勢よく出て行った結果がこれである。
よっぽどショックを受けたのだとは思うが、それでも
演劇部の部長としてやって来た人がこうも変わってしまうとは……
俺はなんだかガッカリした。
*****
「出来たよ、次の脚本」
私は書き上げた脚本を栄ちゃんに渡した。
「これでやっと眠れる」ここしばらくは寝不足の日々だった私が、
書き上げた時に一番最初に思った事はそれだった。
今回は前回の反省を生かし一本だけにしたが、結局分量が増えてしまって
あまり変わらないという事になってしまった訳だが、
その辺は栄ちゃんがどうにかするのだろう。
役目は終わったと寛いでいる私に虹子はカメラを向けて来る。
「ちょっと虹子、勝手に撮るな! 」
「ごめんごめん、ついね、つい」
虹子は悪びれる様子もなく謝るのはいつもの事だが、
このやり取りにも慣れてしまった自分がなんだか嫌だ。
これじゃあまるで、虹子と私の仲がいいみたいじゃないか?
「ねえ鈴、今回はどんなお話なの? 」
「自分で読め! 」
だから私は虹子には説明なんてしてやらないのだ。
どうせ、読んだ方が理解してもらえるのだから……って結局
虹子に期待している自分に気づいて嫌な気分になった。
「栄ちゃん、私は変わってしまったようです」
急にそんな事を口走った私に、部屋の中の温度が下がっていく。
寝不足って良くないんだという教訓が私の胸に刻まれた。
「何それ? 栄ちゃん、鈴が壊れたよ。 もう、今日は解散ね。
はい、解散解散。とっとと帰りますよ~」
虹子は帰る準備をさっさと始めてしまうから、みんなも合わせて
さっさと部屋を出る。
「ほら、鈴。帰るよ」
虹子に促されながら私も部屋を出るが気まずさしかなかった。
「鈴、本当に大丈夫なの? 」
千里にまで心配される始末。
「大丈夫よ、千里。 ちょっと寝不足なだけ。寝れば治るから心配ナッシング」
「本当に大丈夫? 」
余計心配された。でも、もういいのかもしれない。
別に開き直ってるとかではなくって、今回の話はきっと
前回とは比べ物にならないくらいに大変になる事は決まっているのだから。
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