お前しかいない

菫川ヒイロ

文字の大きさ
上 下
4 / 50

しおりを挟む





「私、カメラマンをやりたいんです! 」

 立花さんはそう言った。
 確かに、はっきりと、目をキラッキラに輝かせて言った。
 
 
  『何で!!!!! 』
  
 
 だから俺は今すぐそう叫びたいくらいに衝撃的だった。
 正直、俺は彼女は演者の方だとばかり思っていたからだ。
 
 
 だってそうだろ?
 彼女はとても美人だ。そんじょそこらの女優なんかよりも断然美人だし、
 俺があの桜並木で彼女を初めて見た時、
 嘘みたいに綺麗なあの画が今でも頭に媚びりついて離れない。
 
 
 間違いなく映画のワンシーンだった。
 だから、彼女が映像部を復活させようとしていると聞いた時俺は
 あの心を鷲掴みされた画をもう一度見れるのだと
 期待していたのに……
 
 
 それなのにどうしてそんな裏方に、貴女は表舞台に出るべき人ですよ!
 と今すぐ教えてあげようとしたが、
 
 
「そっか、じゃあ後は演者が必要ね。
 まぁ目立ちたがり屋のおかしな人種は何処にでもいるから
 すぐに見つかるでしょう。
 そうそう、ちなみに私は脚本、栄ちゃんが監督だから
 これは絶対だからよろしくね」
 
 
 鈴がどんどん話を進めてしまう。
 
 
「加納さんって脚本書けるんですか! 」


 立花さんが鈴の話に食いついた。また目をキラッキラに輝かせていて眩しい。


「書けるけど? 」


 鈴も少し気圧され気味に答える。
 そうなのだ、彼女の熱量は少しばかり他人よりも多い気がする。
 
 
「凄いです! ど、どんな話を書けますか? 
 私はですね、こう人間の内面が出て来るような映像が撮りたいんですけど
 そういうのって可能ですかね? 
 あっ、別に名前にかけたとかそういうのじゃないんですけど、ごめんなさい。
 で、出来ますか? 」
 
 
 鈴が俺の方を見て、目で合図をしてくる。
 どうにかしろという事らしいが、物怖じしない鈴が俺に助けを求めるとは
 めずらしい事もあるものだ。
 
 
「あの、立花さん。鈴はそう言うのも書けるので大丈夫ですよ。
 だからきっと立花さんの撮りたい映像がとれると思います」
 
 
「そ、そうですか!それは素晴らしいです、加納さん!
 いや、加納先生とお呼びした方がいいのでしょうか?
 是非、そうしましょう、是非! 」
 
 
 立花さんは鈴の手を取って宣言するが
 
 
「お願いだから止めて! 」


 鈴ははっきりと拒絶する。
 俺は鈴がこんなにたじろぐ姿を初めて見た気がする。
 
 




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

激愛マリッジ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:47

魔法少女プリティカナン

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:46

男は朦朧とした頭で雄臭い水分を悦ぶ

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

物理重視の魔法使い

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:215

物理最強信者の落第魔法少女

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:18

【BL:R18】ある高級男娼の始まり

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:44

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:397pt お気に入り:8,130

ガールミーツワンダーハロウィン

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

龍神様の供物

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:53

処理中です...