異世界騒動記。「さて、一丁やる気だしますかね‥。」

桂木 鏡夜

文字の大きさ
3 / 15
一章

二話「初勝利の味は気持ちの良い物ではなかった。」

しおりを挟む
「ギギギギ!!」

 物体が俺目掛けてがむしゃらに剣を振るう。

 俺は其れをまた避けると、二撃目が振るわれるがそれも後ろへ飛び避けた。

 剣の重たさが釣り合っていないのか、動作が遅い。

 始めは焦って間一髪だったが、動きも単調で避けれない速さではない。

「ギギギギ。」

 しばし互いに動きを止め、唾を飲み込む。

 完全に向うはる気だ。

 その瞬間、俺の足の下にあった枝がパキッと音を鳴らし、緊張の糸を切った。

「ギャギギギ!!」

 物体はまた正面から突っ込んできて、真上から剣を振り下ろした。

 やはり動作は遅い。

 冷静に其れを避け、剣は地に当たる。

 その隙に俺は物体に突進してマウンドを取った。

 正直、ケンカなんて小学校低学年ぐらいでしかした事が無い。

 だがそっちが殺す気ヤルキならこっちだって加減しない。

 俺はそのまま物体の顔面を殴り付けた。

 ガン!ガン!ガン!!

 物体は必死の抵抗で剣を持ち上げ様とするが俺はその手を押さえつけ、剣をもぎ取ろうとすると、物体の拳が俺の顔面に炸裂する。

 ガン!!

 痛い!単発で意識を失う程ではないが、何回も食らえば確実に意識は朦朧としてくる痛さだ。

 ガン!ガン!と顔や頭に拳が当てられるが、とりあえず剣だけは取り上げねばと、しがみ付き、ヤケ糞ぎみに物体の手に思いっきり噛み付いた。

 こんな時に恥ずかしいとか汚いとか言ってられない!

 その効果もあってか、物体の握力が緩み見事に武器を取り上げた。

  取り上げる事に意識を取られ過ぎたのか、その隙に物体は俺の下から抜け出し、俺目掛けて飛び上がった。

 俺は咄嗟に剣を突き立てると、そのまま生々しい音と何とも言えない感触をつ足り、物体の体を貫いた。

「ぎ、ギギギギ‥」

 そして、物体は体全体を脱力させ動きを止めた。

 はぁ‥はぁ‥と息が上がる。

 そして目の前で剣が突き刺さったまま紫色の血を流す生き物に俺は嘔吐した。

〇〇〇〇

吐き切った所為なのかは分からないが時間が経つと徐々に落ち着きを取り戻し、今の状況を把握する。

 顔は腫れ上がっているのかジンジンとしていて、体には引っ掻き傷が至る所に付いていて、生傷だらけだ。

 我ながら情けない勝ち方だ。

 それに生き物を殺したのは勿論始めてで、とても嬉しいと言える雰囲気では無かった。

 だがるかられるか、選択肢は2つしか無かったのだ。

「悪く思わないでくれ。」

 物体に手を合わせると、気色悪いが念の為、物体から剣を抜き取り回収した。

「また似たような奴と出くわすかもしれんからな。」

 そして俺は歩きだした。

 行く当て。と言うよりも何処に行けばいいか分からないのだが、取り敢えず川を下る事にした。

 変に森の中に入って迷子になるより川を下る方が迷う心配が無いからだ。

 「ま、元々迷ってんだけどな。」

 それに加えて食べ物はまだ無限収納インベントリの中に何日かは持つぐらいに残っている。
 
  無くなってしまえば、それこそ問題だが、今は節約しつつ前に進む事に専念するべきだろう。

「あの場所にいても仕方ないしな。」


 
====== ===== ====== =======

取り敢えず書き溜めた物を小出しにしていきます。

 お付き合い頂けると幸いです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...