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・主人公の話
1番目アスカの話1
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彼女の名前は──アスカ。
元々どこにでも居る女子学生だった。
──というのは建前で、彼女は殺し屋だった。
とある【世界】で小さい時からある組織に殺し屋になる様に育てられた。
その時、ユウカとクルエラという2人と仲が良かった。他にも同世代の子供がその組織には居たが各支部に送られアスカはとある国の夫婦の元で“普通の子”として成長する。夫婦は我が子のように愛情を持って育ててくれた。彼女も2人のことが好きで何処に出かけるもの、近所の子供達と遊ぶのも大切な日常として過ごしていた。
ある日いつものように学校から帰ってくるとき道中にある公園で自分を呼ぶ人影に気づき近寄るとヨボヨボして杖をつくお爺さんだった。彼は公園にあるベンチに腰掛け彼女を隣に座る様にベンチを軽く叩く。
アスカは隣に座ってお爺さんと話す。公園には老若男女人がいる中、彼女達も穏やかに雑談してるように見えた。お爺さんの胸にあるバッジは彼女が所属してる組織のマークだった。
彼は彼女に話す──組織としての行動を。
家がゴウゴウと焼けていくのが見えた。アスカはここにきて数年間住んだ家が炭としていくのをただ何も無い感情で見ていく。
手に持ってるのは彼女の武器──大剣。この【世界】この時代にしてはそんな武器で戦うものは居ないが何故かこの大剣を好んだ。
家に帰ってきて準備をした。壁に隠していた小さい時から一緒の武器大剣を取り出す。
下の声で夫婦の夫が帰ってきた声がした。アスカは料理の配膳をしてる妻の手伝いをする。
『今日の学校はどうだった?』他愛もない“いつもの会話”彼女は『友達と遊んだよ』と伝えると2人は嬉しそうに『良かったね』と彼女の頭を撫でた。
小さい時は大剣を地面にズルズルと引きずる事が多かったけど、今は普通に持てる、振れる。叩き潰せる。
最初に夫婦の夫に剣で殴って気絶し倒れる。妻は短い悲鳴と何故そんな事をするのかと、何が起こってるのか理解できてないようだった。
『ここに来れて、とても楽しかった。2人のことは一生忘れない』
本当にいつまでもこの“平和な日常”が続けばよかったのに。彼女は組織の殺し屋だ。夫婦の元で暮らしていてもいつか来る終わりを知っていた。
夫婦を剣で殴って、斬って絶命させ思い出の家に火を付けた。
少しでも、あの世へ、天国へ行けるようにと願った。自分が手を出さなくてもこの町は消滅する。
家が焼けたあと、町の人達に手を出す。顔見知りも友達も全て殺し回った。返り血でドロドロになった。基本暗い夜に殺していったのだが彼女を見た者は口々に『バケモノ』と呼んだ。
全てが“居なくなった”町の外れであの日あったお爺さんが立っていた。
アスカが近づくと「合格」とだけ言い。彼の後へついていく。
連れてこられた場所には久しぶりに見る同期たちが数人居た。半分以上彼らの顔は暗かった。自分に対して親しい人を殺して行く行為に。
ユウカ達の姿が見えなくてアスカは残念だった。彼女達は数いる同期の殺し屋の中で、自分よりも鮮やかに人を殺していく。小さい時に、クルエラと見た。クルエラはユウカに憧れてそれと同時に愛した。そんな2人を見て羨ましかった。自分にもいつか──愛する人が出来るんだろうか。と。
それから3人で組何度か殺しの仕事をしてとても楽しかった。
「今日でまたお別れかー」
「でもいいな、私は【フランス】だよ二人は【ニホン】って所なんでしょ?」
「【ニホン】は【ニホン】でも地域が違うからね~会えたら嬉しいけど、会えないかも……ユウカは?」
「うん、ユウカこの前の──」
ユウカはこの前の仕事でミスをして昏睡状態になってしまった。心配する2人をよそに組織は気にもとめずに事を進めていく。“儀式”の為に──
組織では数年に一度、組織所属の殺し屋2人を選ぶ儀式を行う。その為、選ばれた“蕾”達を各支部のお偉いさんが選び出す。各地に散った蕾達は組織所属の殺し屋から【儀式の神殿】への道々何度も殺されかけるが無事に到達した者が──……『死神』になると
あの日、【ニホン】に来て数年経った。そろそろ儀式の始まりが近いんだろうなぁと隣を歩く人を見る。
「アスカ、どうしたの?」
「んん。何でもないよ! ……でも、もし、私が突然居なくなっちゃったりしたらさ、どうする?」
「アスカが?! めっちゃ悲しむに決まってんだろ、てかなんか心配事でもあるんだよな、」
「んーん。ユウイチは気にしなくても大丈夫。ね、」
「俺さ、アスカの事が好きなんだ。付き合ってるからそうなんだけど、……俺、アスカの事大事にするから、卒業したら“結婚”しよ!」
「うんっ、うん、嬉しい」
彼、ユウイチと離れる、そんなの嫌とアスカの中で組織を裏切る決心が生まれる。
【ニホン】に来てからまたあの時と同じ事になるって思ってた。住宅地であの時と違うのは組織の人間が親に選ばれていた。偽家族として付かず離れずの距離感。形式としてある親。
ずっと海外で過ごしてたアスカが【ニホン】に来てから日本語があまり上手じゃなかったけど、優しいクラスメイトの元徐々に話せるようになった。その1人がユウイチ。
彼を見た時に彼女の今まで会ってきた人達と“何か”が違う。もし彼を手にかけることを想像すると、それなら自分が消滅したい──と思わせる何かがあった。
「儀式の日は来週からだ」
「……分かりました」
ついに儀式の日が始まろうとしていた。各場所に居る儀式の参加者──蕾達。アスカはユウイチと会いたくなって彼に連絡をした。
人気がなくなった公園で彼と会う。アスカがあまりにも思い詰めた表情をしていたのか長い沈黙をユウイチから話しかけると彼女は彼にしがみついてわんわん泣いてしまった。突然の事で彼は焦るが、彼女に何か“事情”があるのだと察して彼女の背中をポンポンと撫で落ち着かせた。
「どうしたんだよ」
「私、……引っ越すの」
「っえ、いきなり過ぎないか」
「……っ、」
「よしよし、それで最近少し思い詰めていたのか」
頭を撫でまた背中を撫でるユウイチにアスカは少し目を閉じる。本当の事は言えない。彼が知ったら『バケモノ』だと言って去ってしまう。それに、組織が彼を殺しに行ってしまう。
「あのね、帰ってこれたら──」
「絶対、帰ってこいよ。俺はアスカの事忘れねぇから。こんな事言うと変だろうけど、なんか“運命”を感じるんだ」
「うん、私もユウイチと、運命を感じるよ」
引っ越す場所も彼には伝えずに──
【儀式の神殿】は組織の本拠地がある場所。必要な物だけ持って飛んだ。
あの場所へは数カ月で行ければ良いんだけど、ユウカにも会いたいなぁ。同じ飛行機じゃなかった。もしかしたら、もう進んでるのかも。アスカは目的地へ進んでいく。
夜、休んでいる宿の窓が割れた。
窓から入ってくるのは組織と分かるペルソナをつけた者たち。彼らは銃をアスカに向けて発砲した。
壁に銃弾が当たる。それを避け、大剣を盾にして近づくとなぎ倒す。まだ数人外に居る“気配”を感じ窓から屋根に降りると夜──月明かりに照らされたペルソナ達が攻撃してきた。
ドシャ、ガシャン。屋根で戦うには足場が悪いので剣を突き刺す。1人、2人屋根から落ちて転落していくペルソナ達を横目で見ながらまだ居る者へ剣を振った。
宿には先払いをしてるし血まみれの服は元々黒い服だったから小さな鞄に必要なものだけを詰め、剣を担いで屋根伝いに走り抜ける。
朝来た宿の人が見たら事件になるのかなー、と思いつつもアスカはもう宿の人も殺されてるかもなぁと思いつつ走った。
何度か宿の襲撃を終え昔来たことがある場所へついた。組織の1人クルエラが住む街だった。“気配”で彼女を探し声をかけるとぱあっと彼女が笑う。
「久しぶり!」
「会えて良かった!」
手を取って抱き合う。ユウカも好きだけどアスカはクルエラが好きだった。だから会えて嬉しい。
少し会話をして住んでた話とか、ユウカと会ったのかとか、彼女はまだ来てないらしい。クルエラは早くユウカと会いたいらしくて毎日楽しみにしてると言ってた。クルエラと一旦別れて後日会うことにして街で食事を取るためカジュアルレストランに入った。
席ごとにちょっとした壁があって背もたれに座りながら料理を待ってるとサラダステーキと飲み物が来てモグモグと食べてると一人の女性──胸には見知ったバッジを付けてる人がアスカの横に座った。
「アスカ、ですね」
「はい。どういう要件で?」
顔にペルソナを付けてないから戦う人では無いものの儀式の試練中の声かけだけあって一応警戒はする。
女性は今の試練途中経過を話した。
「と言うことで、あなたの知っての通りユウカ、クルエラそしてミルルが蕾たちの中で試練を進めてます」
「私は、入ってないんだ」
結構ペルソナを殺してきてるのに、と少し残念がるアスカ。武器が大剣の中では一番殺してるもののやはり現代は銃が多い為どうしても一歩及ばず。と言ったところだった。
「ミルルなんて名前初めて聞く。同期にいたっけ」
「彼女は──家の生き残りで」
「そうなんだ。あの日の、子かぁ。」
「彼女はユウカと共に試練を突破していってます」
「へぇ! それはお互いに知ってのこと?」
あの日、小さい頃にユウカが預けられた【場所】にクルエラとアスカは行っていた。あの家には兄と妹の子供がいてその子らが出かけてる間にユウカは彼らの親を殺害していた。あの日クルエラと一緒に見てたから──それにミルルもあの時──……
隣に座る彼女は「知らないでしょうね」と答えた。
「それで私は脱落?【ニホン】に帰ってもいいの?」
「いえ、貴女にはやってもらうことがあります。」
組織の命令。組織に飼われてる殺し屋はどんな命令も断れない。
「ユウカの進行を邪魔しろと?」
「ええ。命令は絶対です」
「……、分かり、ました。」
美味しく食べてた食事も味がしなくなった。アスカの中で親友の一人を邪魔しないといけないのが辛かった。と同時に自分は死ぬんだと、ユウイチに会う前に死んでしまうのだろうと思った。
組織が言うにはペルソナ達自体かなり腕の立つ殺し屋達らしいが予想を超えて上位3人が暴れ回ってると言う事でそれ以下の参加者にも戦うようにと言われた。
その日からペルソナの襲撃が止み、携帯には彼女達が居るであろう場所が定期的に伝えられた。
あの日、組織の女性に命令された時──彼女からペルソナと銃を渡された。アスカも好む武器が大剣であって銃でもナイフでも素手でも相手を殺せはする。
“今”この時目の前の女性を撃ったら──そんな風に思うが殺ったとしてもまた別の組織の人間が現れるだけ──
所属する組織は、大昔から存在する。表で信仰される宗教と同じく人々の根深い場所から根を生やすように……単純に1つを潰しただけでは彼らから逃れる事は出来ない。
それに私達は産まれてそこで命令によって動くだけの人形達。
葛藤しながらも彼女達を追ってる日々の中──
「アスカ!」
「え、ゆう、いち? どうして此処に──」
「久しぶり! アスカの引っ越し先【フランス】だったんだな!」
将来を誓い合った恋人が何故前に暮らしてた国とは別の所へ? とハテナを浮かべて困惑するアスカにユウイチは笑顔で抱きついた。
「修学旅行でここに来たんだよ! やっぱ俺達“運命”的だな!」
「ぁ、修学旅行、ね! 本当に凄い! 会えて……嬉しい」
街中でキスをする2人。周りが見えてないイチャつきぷりだった。でもそこには色んな人が居た。
近くの公園でアスカは殺し屋の試練のことは話せないので普通に暮らしてた話や友達と再会した話をした。ユウイチもアスカが引っ越したあとの話や今回行く旅先の話をして過ごしてた。
「また会おうよ。数日間は居るしさ、どっか案内して!」
「うんっ、楽しみにしてるね!」
次の日からまた会えなくなることを知ってるアスカはユウイチと何日も過ごす。これが終わったらユウカ達と……
「スゲー! やっぱ外国の教会いいな、アスカこっちこっち!」
「うん? なぁに?」
ユウイチがアスカを呼び寄せ、出店でいつの間にか買ったという指輪を彼女の薬指にはめた。
「卒業、したらって言ってたけどさ……こんな機会ないかもしれない。俺と結ばれてください」
「うん、“約束”する。死がふたりを分かつまで……ううん。死んでもなお、一緒に居て悠一」
「ああ、死んでも君を縛るよ。飛鳥」
陽の光が差すステンドグラスの光に照らされて二人は口づけをした。
ユウイチと何度も遊びに行ってる間も『早く彼女らの邪魔をしろ』と命令が来る。
彼が【ニホン】に帰ったら、そう思ってたのに──
その日は大雨だった。2人で傘をさして歩いてた。周りには帰宅時間で人が多くて気付かなかった。
彼の苦しそうな声に、彼が地面に倒れる。手にはベッタリと血がつく。小さな男の子がナイフを持って彼の体に刺していた。男の子はナイフを持ったまま唖然としていた。けどアスカはそれどころでは無く必死にユウイチに声をかけた。周りも騒然とし遠くから救急車の音がした。
彼女も一緒に乗り込む。メールが来て『このままでは彼は死ぬ、が命令遂行すれば助ける』と書いてあった。
病院に着くとバッジをつけた医者がやってきた。
アスカは歯向かう気は無かった。親友を手にかけても守りたいものが出来てしまったから──
彼の治療が終わってベッドに寝かされてる。意識はまだ戻らないが医者は『貴女の行動次第で彼は目覚めるし、目覚めなくもなる』と脅してきた。アスカは昏睡状態のユウイチを残し──ユウカたちの元へ
元々どこにでも居る女子学生だった。
──というのは建前で、彼女は殺し屋だった。
とある【世界】で小さい時からある組織に殺し屋になる様に育てられた。
その時、ユウカとクルエラという2人と仲が良かった。他にも同世代の子供がその組織には居たが各支部に送られアスカはとある国の夫婦の元で“普通の子”として成長する。夫婦は我が子のように愛情を持って育ててくれた。彼女も2人のことが好きで何処に出かけるもの、近所の子供達と遊ぶのも大切な日常として過ごしていた。
ある日いつものように学校から帰ってくるとき道中にある公園で自分を呼ぶ人影に気づき近寄るとヨボヨボして杖をつくお爺さんだった。彼は公園にあるベンチに腰掛け彼女を隣に座る様にベンチを軽く叩く。
アスカは隣に座ってお爺さんと話す。公園には老若男女人がいる中、彼女達も穏やかに雑談してるように見えた。お爺さんの胸にあるバッジは彼女が所属してる組織のマークだった。
彼は彼女に話す──組織としての行動を。
家がゴウゴウと焼けていくのが見えた。アスカはここにきて数年間住んだ家が炭としていくのをただ何も無い感情で見ていく。
手に持ってるのは彼女の武器──大剣。この【世界】この時代にしてはそんな武器で戦うものは居ないが何故かこの大剣を好んだ。
家に帰ってきて準備をした。壁に隠していた小さい時から一緒の武器大剣を取り出す。
下の声で夫婦の夫が帰ってきた声がした。アスカは料理の配膳をしてる妻の手伝いをする。
『今日の学校はどうだった?』他愛もない“いつもの会話”彼女は『友達と遊んだよ』と伝えると2人は嬉しそうに『良かったね』と彼女の頭を撫でた。
小さい時は大剣を地面にズルズルと引きずる事が多かったけど、今は普通に持てる、振れる。叩き潰せる。
最初に夫婦の夫に剣で殴って気絶し倒れる。妻は短い悲鳴と何故そんな事をするのかと、何が起こってるのか理解できてないようだった。
『ここに来れて、とても楽しかった。2人のことは一生忘れない』
本当にいつまでもこの“平和な日常”が続けばよかったのに。彼女は組織の殺し屋だ。夫婦の元で暮らしていてもいつか来る終わりを知っていた。
夫婦を剣で殴って、斬って絶命させ思い出の家に火を付けた。
少しでも、あの世へ、天国へ行けるようにと願った。自分が手を出さなくてもこの町は消滅する。
家が焼けたあと、町の人達に手を出す。顔見知りも友達も全て殺し回った。返り血でドロドロになった。基本暗い夜に殺していったのだが彼女を見た者は口々に『バケモノ』と呼んだ。
全てが“居なくなった”町の外れであの日あったお爺さんが立っていた。
アスカが近づくと「合格」とだけ言い。彼の後へついていく。
連れてこられた場所には久しぶりに見る同期たちが数人居た。半分以上彼らの顔は暗かった。自分に対して親しい人を殺して行く行為に。
ユウカ達の姿が見えなくてアスカは残念だった。彼女達は数いる同期の殺し屋の中で、自分よりも鮮やかに人を殺していく。小さい時に、クルエラと見た。クルエラはユウカに憧れてそれと同時に愛した。そんな2人を見て羨ましかった。自分にもいつか──愛する人が出来るんだろうか。と。
それから3人で組何度か殺しの仕事をしてとても楽しかった。
「今日でまたお別れかー」
「でもいいな、私は【フランス】だよ二人は【ニホン】って所なんでしょ?」
「【ニホン】は【ニホン】でも地域が違うからね~会えたら嬉しいけど、会えないかも……ユウカは?」
「うん、ユウカこの前の──」
ユウカはこの前の仕事でミスをして昏睡状態になってしまった。心配する2人をよそに組織は気にもとめずに事を進めていく。“儀式”の為に──
組織では数年に一度、組織所属の殺し屋2人を選ぶ儀式を行う。その為、選ばれた“蕾”達を各支部のお偉いさんが選び出す。各地に散った蕾達は組織所属の殺し屋から【儀式の神殿】への道々何度も殺されかけるが無事に到達した者が──……『死神』になると
あの日、【ニホン】に来て数年経った。そろそろ儀式の始まりが近いんだろうなぁと隣を歩く人を見る。
「アスカ、どうしたの?」
「んん。何でもないよ! ……でも、もし、私が突然居なくなっちゃったりしたらさ、どうする?」
「アスカが?! めっちゃ悲しむに決まってんだろ、てかなんか心配事でもあるんだよな、」
「んーん。ユウイチは気にしなくても大丈夫。ね、」
「俺さ、アスカの事が好きなんだ。付き合ってるからそうなんだけど、……俺、アスカの事大事にするから、卒業したら“結婚”しよ!」
「うんっ、うん、嬉しい」
彼、ユウイチと離れる、そんなの嫌とアスカの中で組織を裏切る決心が生まれる。
【ニホン】に来てからまたあの時と同じ事になるって思ってた。住宅地であの時と違うのは組織の人間が親に選ばれていた。偽家族として付かず離れずの距離感。形式としてある親。
ずっと海外で過ごしてたアスカが【ニホン】に来てから日本語があまり上手じゃなかったけど、優しいクラスメイトの元徐々に話せるようになった。その1人がユウイチ。
彼を見た時に彼女の今まで会ってきた人達と“何か”が違う。もし彼を手にかけることを想像すると、それなら自分が消滅したい──と思わせる何かがあった。
「儀式の日は来週からだ」
「……分かりました」
ついに儀式の日が始まろうとしていた。各場所に居る儀式の参加者──蕾達。アスカはユウイチと会いたくなって彼に連絡をした。
人気がなくなった公園で彼と会う。アスカがあまりにも思い詰めた表情をしていたのか長い沈黙をユウイチから話しかけると彼女は彼にしがみついてわんわん泣いてしまった。突然の事で彼は焦るが、彼女に何か“事情”があるのだと察して彼女の背中をポンポンと撫で落ち着かせた。
「どうしたんだよ」
「私、……引っ越すの」
「っえ、いきなり過ぎないか」
「……っ、」
「よしよし、それで最近少し思い詰めていたのか」
頭を撫でまた背中を撫でるユウイチにアスカは少し目を閉じる。本当の事は言えない。彼が知ったら『バケモノ』だと言って去ってしまう。それに、組織が彼を殺しに行ってしまう。
「あのね、帰ってこれたら──」
「絶対、帰ってこいよ。俺はアスカの事忘れねぇから。こんな事言うと変だろうけど、なんか“運命”を感じるんだ」
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夜、休んでいる宿の窓が割れた。
窓から入ってくるのは組織と分かるペルソナをつけた者たち。彼らは銃をアスカに向けて発砲した。
壁に銃弾が当たる。それを避け、大剣を盾にして近づくとなぎ倒す。まだ数人外に居る“気配”を感じ窓から屋根に降りると夜──月明かりに照らされたペルソナ達が攻撃してきた。
ドシャ、ガシャン。屋根で戦うには足場が悪いので剣を突き刺す。1人、2人屋根から落ちて転落していくペルソナ達を横目で見ながらまだ居る者へ剣を振った。
宿には先払いをしてるし血まみれの服は元々黒い服だったから小さな鞄に必要なものだけを詰め、剣を担いで屋根伝いに走り抜ける。
朝来た宿の人が見たら事件になるのかなー、と思いつつもアスカはもう宿の人も殺されてるかもなぁと思いつつ走った。
何度か宿の襲撃を終え昔来たことがある場所へついた。組織の1人クルエラが住む街だった。“気配”で彼女を探し声をかけるとぱあっと彼女が笑う。
「久しぶり!」
「会えて良かった!」
手を取って抱き合う。ユウカも好きだけどアスカはクルエラが好きだった。だから会えて嬉しい。
少し会話をして住んでた話とか、ユウカと会ったのかとか、彼女はまだ来てないらしい。クルエラは早くユウカと会いたいらしくて毎日楽しみにしてると言ってた。クルエラと一旦別れて後日会うことにして街で食事を取るためカジュアルレストランに入った。
席ごとにちょっとした壁があって背もたれに座りながら料理を待ってるとサラダステーキと飲み物が来てモグモグと食べてると一人の女性──胸には見知ったバッジを付けてる人がアスカの横に座った。
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「はい。どういう要件で?」
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結構ペルソナを殺してきてるのに、と少し残念がるアスカ。武器が大剣の中では一番殺してるもののやはり現代は銃が多い為どうしても一歩及ばず。と言ったところだった。
「ミルルなんて名前初めて聞く。同期にいたっけ」
「彼女は──家の生き残りで」
「そうなんだ。あの日の、子かぁ。」
「彼女はユウカと共に試練を突破していってます」
「へぇ! それはお互いに知ってのこと?」
あの日、小さい頃にユウカが預けられた【場所】にクルエラとアスカは行っていた。あの家には兄と妹の子供がいてその子らが出かけてる間にユウカは彼らの親を殺害していた。あの日クルエラと一緒に見てたから──それにミルルもあの時──……
隣に座る彼女は「知らないでしょうね」と答えた。
「それで私は脱落?【ニホン】に帰ってもいいの?」
「いえ、貴女にはやってもらうことがあります。」
組織の命令。組織に飼われてる殺し屋はどんな命令も断れない。
「ユウカの進行を邪魔しろと?」
「ええ。命令は絶対です」
「……、分かり、ました。」
美味しく食べてた食事も味がしなくなった。アスカの中で親友の一人を邪魔しないといけないのが辛かった。と同時に自分は死ぬんだと、ユウイチに会う前に死んでしまうのだろうと思った。
組織が言うにはペルソナ達自体かなり腕の立つ殺し屋達らしいが予想を超えて上位3人が暴れ回ってると言う事でそれ以下の参加者にも戦うようにと言われた。
その日からペルソナの襲撃が止み、携帯には彼女達が居るであろう場所が定期的に伝えられた。
あの日、組織の女性に命令された時──彼女からペルソナと銃を渡された。アスカも好む武器が大剣であって銃でもナイフでも素手でも相手を殺せはする。
“今”この時目の前の女性を撃ったら──そんな風に思うが殺ったとしてもまた別の組織の人間が現れるだけ──
所属する組織は、大昔から存在する。表で信仰される宗教と同じく人々の根深い場所から根を生やすように……単純に1つを潰しただけでは彼らから逃れる事は出来ない。
それに私達は産まれてそこで命令によって動くだけの人形達。
葛藤しながらも彼女達を追ってる日々の中──
「アスカ!」
「え、ゆう、いち? どうして此処に──」
「久しぶり! アスカの引っ越し先【フランス】だったんだな!」
将来を誓い合った恋人が何故前に暮らしてた国とは別の所へ? とハテナを浮かべて困惑するアスカにユウイチは笑顔で抱きついた。
「修学旅行でここに来たんだよ! やっぱ俺達“運命”的だな!」
「ぁ、修学旅行、ね! 本当に凄い! 会えて……嬉しい」
街中でキスをする2人。周りが見えてないイチャつきぷりだった。でもそこには色んな人が居た。
近くの公園でアスカは殺し屋の試練のことは話せないので普通に暮らしてた話や友達と再会した話をした。ユウイチもアスカが引っ越したあとの話や今回行く旅先の話をして過ごしてた。
「また会おうよ。数日間は居るしさ、どっか案内して!」
「うんっ、楽しみにしてるね!」
次の日からまた会えなくなることを知ってるアスカはユウイチと何日も過ごす。これが終わったらユウカ達と……
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「うん? なぁに?」
ユウイチがアスカを呼び寄せ、出店でいつの間にか買ったという指輪を彼女の薬指にはめた。
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ユウイチと何度も遊びに行ってる間も『早く彼女らの邪魔をしろ』と命令が来る。
彼が【ニホン】に帰ったら、そう思ってたのに──
その日は大雨だった。2人で傘をさして歩いてた。周りには帰宅時間で人が多くて気付かなかった。
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病院に着くとバッジをつけた医者がやってきた。
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