不定期∶どこかの【世界】の話

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・主人公の話

1番目アスカの話2

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 アスカが彼女らに追いついた時──ユウカ、クルエラ、ミルルはミルルが借りた部屋で過ごしていた。3人は仲が良さそうにしてるのが窓から見えた。
 初めて見るミルルという彼女。自分達よりもひと回り年上に見える。お上品にカップに口をつける動作はお嬢様みたいだった。
 もし自分が手に持つ銃でペルソナ達を殺してたらあの場所に居られただろうか。

 考えても仕方ないこと──組織は彼女達の邪魔をしろと言ってたがそれは即ち殺すか殺されるか。それだけ。
 渡された仮面を顔に付けた。


 月明かりだけの夜。
 星はあまり見えない。もっと田舎に行けば見れるかな。照準を彼女達に向けて発砲。でも彼女達、いやユウカは持っていたスプーンの反射でいち早く回避をし、クルエラも反応。ミルルだけが少し遅れて戦闘準備に入る。
 家具を盾にしながら彼女達はアスカの攻撃を避け、やり返す。
 ミルルを殺せばと彼女を狙うが、ユウカの信じられないテクニックで彼女は守られる。

 銃じゃダメだ。大剣でも勝てるか分からない。けど、彼女は一旦下がった。




「やっぱりアスカだったんだ」
「うん。久しぶりユウカ。それに初めましてミルル」
「誰? あんた達の知り合い?」
「昨日のペルソナはアスカだったんだね。でも何で狙うの? 貴女も参加者だよね」
「上位3人以外はペルソナに回れってさ。私は“2人を殺したくない”だから、死んで。ミルル」


 郊外の少し開けた場所で3人と対峙する。ペルソナは顔に着けて大剣をミルルへ向け斬ろうとするけどユウカとミルルに応戦される。
 クルエラは少し様子見をしてるけど──

 剣が地面に当たる音、銃の音それが当たる音、それだけが聞こえる。
 何度も、何度も撃ち合って何度も何度も交差して、ミルルが転んだ所を襲うが──

「──カ、は、クルエラ……?」
「私達は“お友達”になったの。アスカの事は大好き。だけどね、お友達を殺そうとした貴女は──」

 を聴く前にアスカは地面に倒れた。ガシャンと持ってた剣も地面に落ち倒れる。
 間一髪で救われたミルルはホッとしていた。
 
 アスカは親友の顔よりもユウイチの顔を思い出していた。命令に失敗してしまったのか、もしユウイチが──目覚められたら幸せな人生を送って…………




──ふわふわとしてる。気持ちいいベッドで寝てるみたいだった。
 目を開けようとするのに開かなくて何があったんだっけ、と思い出そうとする。
 漠然と今まであったことを思い出したアスカは“死んだ”のだと気づく。あの後の試練はどうなったんだろうと思いつつももう死んでる自分には関係ないと気持ちを追いやる。
 それよりもユウイチは──

『目を開けてご覧』
 
 突然聴こえた声に固まる、恐る恐る目を開けると逆光で分からないけど男性が居た。
 目を凝らしても全く顔が見えない中、彼は何処か指を指した。そこには空にある雲に寝かされてるユウイチの姿だった。彼のもとへ急いで近寄り彼の手を握ると温かかった。

「ここは、何処ですか、私は死んだのでは……?」
『キミ達は確かに死んだよ。キミはクルエラに。彼はキミが失敗した罰として。じゃあ【天国】に行こうか』
「てん、ごくですか……? ユウイチはともかく、私は……地獄では、」
『事情があってね。まぁあっち【天国】の神様に話し聞いてよ』


 そう言い終えると目の前の男性は居なくなり、3人誰かが居た。

 雲の椅子に座るいかにも創造神みたいな白い髭に白い衣の男性と両隣にはアスカと同じ年頃の女性と少し上の男性が居た。

「あの、此処は……」

 アスカは戸惑いながらも彼らに話しかける。

「私の名前は聖花せいか。こちらがお父様と兄のラト。それと弟が居るんだけどまだ来てないみたい」

 お父様と呼ばれた椅子に座る男性はにこやかにアスカを見てるけど、ラトと呼ばれた聖花の兄はアスカの事を睨んでいた。
 戸惑いつつ何故自分が【天国】に居るのかを聞くと。

「人間達のいう【天国】と【天界】は少し違うのですが、貴女の今までの行いを見てきました。事情があるみたいですけど、人を殺してきた人生は普通なら【異界】、【地獄】に行くべきなんだけど、私達が困ってる事を貴女に、その戦う能力を使って手伝って欲しいの。私もサポートしますわ」
「は、はあ。手伝える事があれば……私はいつ【地獄】に落ちても構わないんですけど、私の恋人のユウイチは……【天国】に……」
「ええ、分かってますわ。お父様も貴女の活躍に“期待”してると」

 初めての時は緊張してたけど【天界】で日々過ごしてると聖花と打ち解け親友と呼べるものになっていく──

 聖花はアスカに【天界】で過ごすのに必要な翼の使い方や生きてる頃には無かった魔法という存在の使い方などを叩き込む。聖花自体は《回復》や《蘇生》といったモノが得意で攻撃はあまりという。

哀歌あいかちゃんなら攻撃が得意だから今度会うことにしましょう!」
「アイカ? 聞いたことない名前、【天界】に居たっけ」
「哀歌ちゃんは【異界】の人よ。悪魔族の、」
「悪魔と仲いいの?」
「ええ、私達は幼馴染でもありますから」

「やっほー! あ! アンタがアスカね! アタシの名前は聞いてると思うけど哀歌あいかよ!」
「アスカです、よろしくねアイカ」

 雲の上に赤黒い魔法陣が出現したかと思ったらそこから妖艶な女性が明るめな声でアスカに話しかけた。彼女が哀歌【異界】に住んでる悪魔だった。
 周りの一般天使は遠くから彼女達を眺めている。白い雲と青空に周りは金髪碧眼白い翼と頭の輪っかが光ってる人達の中で哀歌は悪魔らしく赤紫の目と髪に二本の角とコウモリ型の黒い翼に尻尾でセクシーな服装をしていた。


「アスカの武器ってそれなの?」
「うん、小さい時から使ってる大剣。アイカは鎌?」
「そー、かっこいいでしょ! セイカは杖だよね~」
「ええ、《聖魔法》を唱えるためですわ」

 哀歌はアスカに見て覚えてと鎌を振りながら《攻撃魔法》を連発してアスカに向かって攻撃してきた。火の魔法や雷、風様々な魔法がアスカを襲い、ケガをすればすかさず聖花が《回復魔法》で癒した。

 何度食らって、何度唱えて、何度敵を倒して──……

「うんうん、いい感じ。セイカ前に言ってた通りに」
「そうね、そろそろね」
「うん? どうしたの2人とも」

 哀歌と聖花二人は胸に手を当てると各々赤い光と青い光が光りそれを同時にアスカの大剣に触ると──

「わっ、私の大剣が! 黒い刀身と白い刀身になってる」
「アタシ達の力をこの剣に《付与》したのよ」
「これで私達の力が使えるわ。」

 元々は普通の大剣だったのが、半分は黒い刃もう半分は白い刃になっていた。グリップの部分も違和感があってアスカは哀歌達に言われるまま両手でグリップを持つと、剣が2つに割れた。

「え、ええ?!」
「アタシの攻撃重視の剣と」
「私の回復重視の剣に分かれるようになってるわ」

 回復重視の剣を振るとキラキラと白い粒が、妖精の鱗粉の様に落ちる。それを手に取ると怪我はしてないけど少しヒンヤリしてて気持ちが良かった。
 攻撃重視の剣を1振りすると地面が割れた。横に薙ぎ払うと空を斬る。

「なんか凄いのになっちゃったね」
「でもこれぐらいしないと“アイツ”にはね」
「ええ」
「アイツって?」
 
 哀歌達が“アイツ”と呼ぶ存在。それが、アスカがこの【天界】に居る理由だった。




 とある【世界】に旅立った時だった──アイツに初めて会ったのは──……






メモ…単語ルビ…──
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