バトンタッチした話

加速・D・歩

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108 知ってはいた

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 レッカラくんのやる事、それは、僕は知ってた。

 ずいぶん前から稀人──カレンくんに対して色んな生徒から制裁という前に言った生徒会の部下達が彼らに近づく者に対して行う事を制裁と呼ばれるんだけど、それをされていた。
 僕が怪我してるカレンくんに会ったのも、それが行われた後だった。


 レッカラくんは、その制裁に似た事をカレンくんにしていたっぽい。といっても、彼自身が、ではなくてカレンくんに対してフラストレーションが溜まってる生徒達が集まって……と言う感じらしい。

 僕はそれを見ぬふりしてしまってる。本当は許される事じゃない。それに、稀人相手に……彼は【別の世界】から来て一人で心細い筈で、レッカラくんに「やり過ぎだよ」と言っても「お灸を据えてるだけだ。誰かがやらなければアルファ達はアイツのモノになるんだぞ」っていって、行ってしまう。
 
 時々、レッカラくんが前よりも感情を制御出来なくなってるのを感じて、少し怖くなる。
 見える所にも傷が出来てきたカレンくん。でも、僕は彼と交流する事を禁止されてるから……ふと、彼の隣にいる金髪の人と目が合う、自分の後ろめたさを見透かされたように感じてその場から離れた。




「マルゥメ」
「ワグーッツンさま、なんですか?」
「あの稀人について知ってるか」
「、それはどういう意味で……ですか、」
「彼は最近誰かに暴行を受けてるそうだ」
「……そうなんです、ね」
「ブェラレは、」

 ワグーッツンくんに、事の内容を把握してるような会話に冷や汗をかく。
 レッカラくん、バレてる、でもこのままじゃ彼は──……

「本当の事を言います」
「主犯は僕です、僕が……、彼にワグーッツンさまを取られたくなくて、ごめんなさい」
「稀人相手に、分かってるのか?」
「はい。どんな罰でも受け入れます」

 口から当たり前のように出てくる言葉に感情が乗らない。それはワグーッツンくんからも、そう、聴こえるのは気の所為……?
 僕はこの件の主犯となり、暫くは【軟禁】される事になった。
 とはいえ、ヒート時期と変わらない退屈な日々が始まった。

 ワグーッツンくんと離れて心寂しい。レッカラくんを庇う意味があったのか、と思いつつも僕より彼が側に居た方が安心できる。

【寮】の【生徒達の部屋】ではなくて、階は不明で限られた人じゃないと訪れられない【場所】基本、軟禁だから、人と会うことは禁止で食事は決められた時間に配給される。
 ヒートの時期はただ、ただ、1人寂しく過ごさないといけないのが、僕への罰────


──トントンと【扉】がノックされて食事の配給時間。

 食事だけが通れる所から今日の料理が見えて手を伸ばして受け取る。
 毎日、[薬]も支給されてそれを飲むとすぐ眠くなるから[睡眠薬]なのかな、と思ってる。
 する事が無いし、鬱々と過ごすより寝てる方が良いからと[薬]を飲んだ。


 それに、この[薬]を飲むと気分がフワフワして良い夢が見れる、ワグーッツンくんとシテる夢──


──出てこいよ


──け──……


──…………やる


 ふあ、っ、ん……目が醒めるけど、今が朝なのか、夜なのか分からない。窓があれば良いのに。でもそしたら脱走しちゃう人が出るのかな。




 それから多分、4ヶ月ぐらい経って軟禁が解けた。
 久しぶりに【部屋】に戻ろうとしたら【前の部屋】ではなくて新しい所を用意されてた。

 ワグーッツンくんにいっぱい迷惑をかけちゃったし、仕方ないよね。
 僕は新しく2年生に学年も上がってて【自室】に向かった。
【前の部屋】も豪華だったけど、【一人部屋】なのに、凄い。

 案内してくれた人に挨拶してから【リビング】にある椅子に腰掛けて明日の事を考えてると【ドア】が開いた。

 音がする方へ振り向くと、何処かで見かけた事がある、金髪の人が居た。

「あ、あの、」
「【ココ】【俺の部屋】だから」
「へ? だって、【一人部屋】って……」

 金髪の人はドカと目の前の椅子に座る。
 一人部屋は一人部屋でも彼の、って事……? でも、それならなんで僕が【ココ】に案内されたの? 少し混乱してると彼は笑った。その表情──……


「ああ、俺の名前、今は知らねぇか。」
「トィン・ヌルィニ・トーチヴォン」
「え、あ……も、もしかして……」
「アイツの兄貴。よろしくな、マルゥメ?」
「ぁ、はいっ、よろしくお願いします!」

 道理で似た表情だと、彼はワグーッツンくんのお兄様らしくて、彼に頼まれて僕を、【ヴォン先輩の部屋】に住む事になったらしい。

 彼から香りが来るのは香水らしくて、色んな香水の瓶を見せてくる。

「マルゥメ、お前もコレつけろよ」
「ぁ、良い香りですね」
「似合うと思ってさ。ココら辺に、こうやって付けるんだ」
「ん、そうなんですね」

 首には[ガード]があるから顎下辺りに彼の手の甲がきて、香水をつける。
 優しい花の香が心を落ち着かせる。


「元々【一人部屋】だからベッド1つしか無かったんだけど、もう一つ用意したから。同じ【部屋内】だけどな」
「いえ、気を使わせてすみませんっ」

 とても良い先輩、この人もアルファなんだよね。でも、ワグーッツンくんが頼った人だし、ヒート中は1人にさせてくれるだろうけどそしたら何処で過ごすんだろ。
 って思ってたら聞かれて疑問に思ってる事を話すと、その期間中は、【友人の所】へ寝泊まりする事になってると。

「何から何まですみません」
「気にするな、オメガなんだから。むしろもっと他のやつらみたいに堂々としてろ」
「は、はい……」


 ワグーッツンくん以外の男の人とこうやって至近距離で寝るのは分かっていてもドキドキする。寝ないと、……おやすみなさい。
 
 


 ワグーッツンくんが登校してる姿を見かけて、駆け寄る。

「ワグーッツンさまぁ!」
「マルゥメか」
「あ、マル! 久しぶりだな!」
「え、カレンくん? あの、レッカラくんは」

 ワグーッツンくんの横に立ち挨拶すると彼の逆側からヒョッコリ出てきたのはカレンくんで、レッカラくんの姿が見えなくて戸惑ってるとワグーッツンくんは、何事でもないように、

「アイツなら退学した。あと番候補も」
「そ、そんなっ、なんで、」
「理由? マルゥメ分かってるだろ」
「アイツ酷いんだよ、オレの事集団でイジメようとしてさ!」

 ワグーッツンくんの言葉に固まる。
 レッカラくんを庇った意味がない、ワグーッツンくんの隣にはカレンくんがいて、僕が軟禁されてる期間すぐの出来事だったらしくて唖然としてしまう。

「次はお前が退学だ」とならない様に僕は必死にワグーッツンくんに媚びる。
 彼の腕にしがみついて、目を見つめる。

「なあ! わーぐつ! 早く行こうぜ」
「ああ」
 
 しがみつく腕をとかれて、彼はカレンくんを追いかけてしまう。このままじゃ──と僕も追いかけた。

 そんな一日が終わって、【部屋】の椅子に力なく座った。
 疲れた……僕、レッカラくん、……はあ。


──カチャ

「辛気臭ぇ顔してんな。どうした?」
「あ、ヴォン先輩お疲れ様です。実は──……」
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