バトンタッチした話

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・本編

139 家族の話

 マルの両親は普段から仲良しだ。
 お父様はお母様に対していつも、さり気ないアイコンタクトから、スマートな動作で愛情表現をする。
 俺ら子供側も、使用人達も2人が睦まじく過ごしてるのを見るのが好きだ。
 俺は実の子じゃないけど、普通に受け入れ育ててくれた恩が2人にはある。
【学校】を卒業したら彼らの仕事の一部を手伝うか、外に働きに行くか。
 跡を継ぐのは、二トーマ兄様で、それから下の子ってのは外で働きに行くのが一般的だ。
 この【世界】じゃ、15歳になったら成人で何処かに働きに行くのは普通だからな。
 
 前に思ったか忘れたけど、貴族だから15歳超えても【学校】に行くし、そこで勉強なり、コネクション? 野心家でもなければ人脈は程々だろうけど。まぁ上の爵位になればなるほど子供は親の爵位に振り回される、って聞くけどな。
 例えば友達になったけど、本当はその爵位目当てで、ちゃんとした友達じゃなかった、とかな。
 俺も友達作るならうわべな連中は嫌だな。

 で、話が違う方へ。いつもだから気にはしてないけど、つい、連想ゲームになっちゃうんだよなあ。
 何処で働くかは未定としても一応考えとこ。
【王国】の騎士や魔法騎士とか魔術師とかそういうのは、俺には難しいし……んー、冒険者もあんま貴族がなる職業じゃないのと安定もしないし。
 婿養子とか家庭教師とか他にもあるっぽいけどまだピンときてないなぁ。
 
 マルはワーチャンのお嫁さんでしょ、まぁ働くとしても回復師だっけ。そういうのに就けそうだし、ツー君は学校の先生かなぁ。アリァナ姉様はもう結婚してて普段は旦那さんの所で住んでる。
 俺らが帰ってきたから彼女も里帰りしてきたって。
 4姉弟の中で1人だけ女性だったから子供は女の子が欲しいんだとか。まぁ、男の子が出来てもそれはそれで可愛がるとは思うけど。
 アリァナ姉様と結婚した義兄様はドォラゲ・デュラーグって名で種族は獣人で爬虫類系の人。リザードマンとはなんか違うんだよなぁ。爬虫類詳しくないからコレ! ってのが分かんなくて。
 でも姉様をいつでも大事に接してくれてる紳士。
 年齢自体は少し年上だけど、出会いは【学校】の先輩であちらから猛アタックだったらしい。
 最初は同じ学生と言っても面識が無かったから断られたり、だったらしいけどお互い知ってる友人達が仲を取り持って? 徐々に親睦を深め合って~みたいな感じらしい。
 姉様はこんな感じに結婚したけど、二トーマ兄様に恋人の話はまだ聞いたことがない。

 俺らが小さい頃から誰かが好きとか、恋人になった~とか聴いてないんだよな。
 まぁ、絶対知ってないととは思ってないから分かんねぇけど。そういや、前にそれとなく聞いたときは『親の決めた相手でいい』とか言っててマジ? って、まぁ貴族だとあるあるではあるんだけど。
 お見合い話や小さい頃に許嫁いいなずけを決めたりとかさ。
 許嫁に関しては爵位が上の方では多いらしい。やっぱポッと出で相手が出来てその子が良い子でも家族や友人や~と色々とあるらしいから小さい頃から見ていくみたいな? 詳しくねぇけどさ。

 もし、お見合いパターンなら、あの仲良し夫婦だしお見合い相手で変な人は連れてこないだろうけどどんな人が来るのか気になるな。

 マルゥメ、まぁ、マルだけど。今はワーチャンとラブラブ。彼は四男だし結婚相手は自由にしていいらしいからこのままだったらマルと結婚するんじゃないかな。
 爵位的にもそうなったらマルは玉の輿なんだけど、本人達には野心がないからどっかの【領地】を任されて過ごすか暫くは【王都住み】かな?
 
 弟のマッコィツ、ツー君も二トーマ兄様みたいに恋愛の話を聞かないんだよなぁ。どっちもイケメンで優しい性格だしモテてはいると思う。
【学校】も共学だし。
 てかマルの親姉弟みんな美形だからなぁ……そこに関しては引く手あまただと思う。
 いつだったかどっかの【パーティー】に行った時はそりゃ凄かった。

 その【会場】に顔なじみが居たのもあってか着いたらすぐに囲まれてたし。
 俺? あー、まー……、黙々と立食してましたわ。
 だってマルから紹介された人達は居たけど、彼らからしたら俺って謎じゃん。あんな美形の中で1人だけ平凡だし、黒髪黒目だし。
 まぁ、稀人説は囁かれてたらしいんだけど、マル達が公表してなかったから──、一応この【世界】に落ちた稀人たちはどんな【国々】にいっても保護はされる。
 けど、本当に大事にしてくれる所が多いけど、一部その、稀人の能力? を求めて大事にしない人たちも居るとかでさ。
 マルの両親はその話を知ってたから、俺も来たての頃は小さかったのもあって彼らの子として育ててもらった。








──……目が醒める。
 久しぶりに懐かしい夢を見た。
 息子のマルゥメがまだまだ小さい頃、その日も普段と変わらない平和な日々を過ごしていた。

 妻のサニャーラと【自室】でお茶を飲んでいると【ドア】のノック音が聴こえて入ってきたのはマルゥメだった。
 白髮でも黒髪でもない白色には近い綺麗な銀髪で母親譲りの紫の目をした彼は、私達の前で緊張した面持ちで『おとうさま、おかあさま、あさってにあの【湖】でまれびとが現れます。ぼくの“運命の人”なので、ほごしたいです』と。
 突然の事でビックリした。
 いつもマルゥメは物静かな子で、あまり喋らない子でもあったし、稀人の話もしたことが無かったからその事を知ってるのも驚いた。

『マルゥメ、その稀人が貴方の伴侶に、と言うことですか?』
『ううん、違います。でもぼくにとってはとても大事な人……兄弟として迎え入れてくれませんか?』
『分かりました、あなた……』
『ああ、明後日だな。お前がそこまで言うんだ。検討しておこう』
『ありがとうございます。あさってには僕も一緒にいきます、何処からでてくるのか知ってるから』
『うむ、分かった。』

【部屋】を出ていく息子にお互い顔を見合わせる。
 稀人、まさかな……と思うが一応明後日の為に使用人に【船】の用意やらを準備してもらい、兄弟として育てると言っていたから一応、架空の養子としての受け入れの紙を書く。
 もし違うのであればそれでもいい。
 稀人はこの【世界】に落ちてくる人々の事で、過去には英雄になる者も多い。
 今では保護される事が多くその度に彼らの持つ知識や文化を知りこの【世界】は豊かになっていった。けど、その一部で彼らを大事にしない者たちも多い。
 貴族という立場だとそういう話も入って来やすい。
【サロン】に行くと色んな噂話や諸々が入ってくるからな。

【街】では【劇】などで稀人がこの【世界】に居る勇者達と英雄になり悪を倒す、なんていう話が人気になっている。
 



 その日は快晴で雲一つ無いいい天気だった。
 私はマルゥメと使用人を連れて【湖】のほとりに居た。
 稀人は【世界】に【隕石】に乗って落ちてくる。最初はもし、落ちてくるのであればその衝撃波や水がこちらに大波となる筈だと、警戒したのだが、息子のマルゥメはたんたんと、使用人に【湖】の真ん中へと【船】を出すようにと指示する。

 困惑する使用人は私をみる。私はマルゥメにせめて【ココ】で待機する様にと伝えると渋々頷いた。
 ただの子供が見た夢──ならばそれはそれで今日はこの【湖】で遊び過ごせば良い。
 空を見上げても隕石は落ちてこないし、と息子を見るとただ一点を見つめる。
 
 その目の先は──【湖】の真ん中だった。


『おとうさま! ケースが!』
『えっ、あ! 彼を救出しろ!』
『『はっ!』』

 息子が突然指差して叫ぶ。私達大人は上を見上げていたから反応が少し遅れたが、稀人は【湖の中】からゆっくりと浮上して、浮かび上がった。
 使用人が乗る【船】は急ぎその稀人に近づき引き上げた。
 すぐにちゃんと息をしてるかを確認し、マルゥメも《回復》を使う。この歳で《聖魔法》を使いこなすとは……
 ちゃんと息をし始めた稀人の濡れた体を《生活魔法》で乾かしたあと布で包み【屋敷】に戻り、使用人や医師に指示を出し用意した【部屋】へ稀人を運んだ。

 その間もずっとマルゥメは稀人の手を握り続けていた。
 サニャーラやアリァナとトーマも心配そうに様子を見に来たが暫くは慌ただしいだろうから彼女達にはまた声をかけると伝える。
 医師にある程度、怪我や熱を出してないかを診てもらい。
 息子から事前に聞いていたが、ほぼマルゥメと同じ歳ぐらいの子だった。
 こんな小さい頃にこの【世界】に来るなんて……、そしてこのまま何処かにやるのはこの子がどういう扱いになるのかと不安に思い、私は【自室】に妻のサニャーラ、私達、娘のアリァナと息子の二トーマを呼び、稀人の無事を報告すると彼女達は安心した様な表情になった。
 そして、マルゥメの希望として娘達にも『あの子を稀人ではなく架空の世帯からの養子として家族に迎える』と伝えると『それが良いですわお父様』と言ってくれる。
 マルゥメからはもう『かれの名はケースです。ワィーレ・ケースとして家族の一員にしてください』と言われてることも伝えた。

 彼の名前を勝手に付けて良いものなんだろうか? 本人が名乗りたい名があるんじゃないか? と思うがマルゥメは真剣な眼差しで伝えてくるので[紙]にサインをした。


 夜になって息子から稀人──『ケースの目が醒めた』と聞いて妻と2人で先に会う。
【ベッドの中】で私達を見る不安げな目。息子はずっと彼の手を握ってるようだった。
 出来るだけ怖がらせない様に、と私達は手短に話す。


『会えて嬉しいよ。君の名を聴かせてくれないかな?』
『俺……? 俺の名前はけ──すけ、は──だ、け──す』
『ふむ、ケースだな。息子から聞いていた通りか』
『けーす? ちが、俺の名前はけ──すです』
『? ああ、私達の名前を言ってなかったね。ワィーレ・ガドゥーレ、妻のサニャーラあと、娘と息子がまだ居るが今日は疲れただろう。また明日にしよう』
『がーれさん、さにーらさん……はい』

 後々知ったことだけど、お互いの名をちゃんと発音出来ないらしい。だけど、ケースの方は私達の名をほぼちゃんと発音出来るようになった。
 今のケースに本当の名を聴くと『もう忘れちゃいました。俺はケースでいいんですよ』と笑いながら言う。
 マルゥメとの会話を聴いてると多分忘れては無いと思うんだが……まぁ、良いだろう。

 その次の日には娘と息子もケースに挨拶をして、彼らはすぐに仲良くなった。特にアリァナは小さいケースを本当の弟のように、寂しい思いをさせたくないとよく会いに行ってたな。
 3日間ほど彼に用にした【部屋】で過ごし医師からも『体調で悪い所は見当たりません』と言われたあと、マルゥメが【自室】の【ベッド】で寝るようになった。
 本当は止めるべきなんだろうが、なんだか止めづらく……なんと表現したらいいのか。本当に“運命の人”と言ってたように彼を大事にしてるのが分かる。
 
 彼と出会う前のマルゥメは大人しい子だった。誰かから守ってもらう様な繊細な子のイメージがあったが、彼ケースと出会ってからは彼を護る騎士の様なイメージを感じるときがある。
 そんなマルゥメもティン公爵の息子ワグーッツン卿といい仲になったと。
 彼とは小さい頃から親しい関係ではあったものの、恋人とかでは無かったから……まぁ、彼から猛アピールは周りから見ててもされてたんだが、マルゥメはケースに付きっきりだったからなぁ……

 何にせよ、久しぶりに帰ってきて元気な顔が見れて良かった。明日にはまた【学園】に帰ってしまうが、また元気に帰ってくるのを楽しみに待つとしよう。

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