バトンタッチした話

加速・D・歩

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・本編

149 競技大会

 ヨカッ8ネは【競技大会】。
【高等部】だと10月らしいんだけどね。親の都合……兄弟が多いと、同じ時期にやるのは困るってことで。
 
 
「聞いてたけど、凄いね……」
「うん。緊張してきた……」
「俺となら、ケース。出来るよな、ほら、まだ緊張してるか?」
「ん。だぃじょうぶ。」

「・・・マルゥメ。何があっても俺がお前をリードする」
「うんっ、頼りにしてる。」


──ただダンスするだけなのに
──あそこの雰囲気だけ違うな
──俺達も頑張るぞー!
──おー!

 1年は恒例のダンスを披露する。
 相性の良い2人からそれ以上のグループで。 
 俺はメイチャンと。マルはワーチャンと。
 
 舞台袖でお客さんを観たら結構な人が居て、うわあ……ってなってた俺はメイチャンに抱き締められて彼の鼓動を聞いてたら落ち着いてきた。
 
 構成は先生とクラスのリーダーが決めて、俺達とマル達以外は真ん中で踊る。両側から俺達が出てきて、ペア踊りをする。そんでマルとワーチャンでしめにはいって、いい感じに披露するみたいな。
 最後はモチ君たちが《幻影》でモンスターを出して倒して……って。

──次のクラス準備できましたか──……?
──では『月下の湖』──


【暗いステージ】の上で皆が静かに踊る。ステップや衣装の擦れる音が聴こえるぐらいで、俺とマルは舞台袖の所から弓で《マナ矢》を上に撃って演出。
 キラキラとマナが彼らに振り注いで幻想的な雰囲気に。

 ベースとなるダンス、振り付けはあるものの好きに各々表現するコンテンポラリーダンス部分もある。
 話の流れでは【とある湖】に大昔舞い降りた男神がそこに住む人達と出会い、交流していく。満月の夜に彼は上へ戻りたいのか、水の上に立ち神秘的な踊りをしていた。
 それを見て人々は彼の周りに【船】を出しその上で踊り……
 しかし、そんな楽しい時間は突然終わりを告げる。
 空からモンスターが落ち──【湖】の水は大荒れるようにモンスターの動きに合わせて周囲の人達を飲み込んでいく──

 そんな中、そのモンスターを打ち倒そうとするふたりが現れる。なんやかんやしてそのモンスターを倒したのが──……のちの勇者誕生と言われてる一つの話らしい。
 勇者がいつ出現したのかは各【地域】ごとに諸説あるなか、この話は人気らしくて、今回やる事に。

 そろそろモチくんが《幻影魔法》でモンスターを出すだろうから俺達も【ステージの上】で踊る。
 各自マナを自分の体に纏わせると俺らは白っぽい黄色だけど、《炎》なら赤とか《草》なら緑に花びらが浮かんだり色鮮やかに踊ってる所にお邪魔して物語の表現をしながら──……


──グオォォオオ

 突然後ろから現れたモンスターに生徒達は驚き散る。
 予定通りに勇者に選ばれた──カッチャンとメイチャンがモンスターと対峙する。

──剣を2回振る振付でモンスターは倒れ、彼らは勇者になりフィナーレを迎える、筈だった。
 
「くっ、なんだコレは……ッ!」
「何かがおかしい、お前らマジで避難しろっ!」

 あれ、二人ともどうしたんだろ、モンスターの長い爪が彼らの振り付け用の剣を折って、咄嗟に自分の愛用の剣で攻撃を防ぐ!
 周りに居る俺らもお客さんもこんな演出だっけ、ってなってる。
 メイチャンが「避難しろ!」って言葉と、モチくんも『何が起こってるの?!』って混乱してるようで俺達クラスメイト達は顔を見合わせて両側の舞台袖に避難することになった。

 マルにはワーチャンがついてるから安心して──……

「わっ、?!」
「ヌヌくん大丈夫っ?! ほら、立って……よし、真っ直ぐ走って、」

 近くで逃げようとしてたヌヌくんが転んで俺は少し戻って彼を起こす。立てて走れるようにして先に逃げるようにいう。後ろではカッチャンとメイチャンが、モンスターを止めて、お客さん側も先生達から避難するように先導されてるのをみて、俺も逃げようとした時──

「ケース、早く逃げろっ!」
「え、」

 迫りくるモンスターの爪に、あっ、と思った時には目を瞑って衝撃に耐える──けど、何もなくて目を開けるとメイチャンが俺の前に。

「護ってやるって言っただろ」
「メイチャン……って、怪我してる《回復》っ、へ、平気?!」
「ああ、まだ戦える。ありがとな」

 頭から血を出して、それでも俺に笑いかけるような声で……バカっ、そのまま剣を押してモンスターを押し退ける。
 俺は言われた通り逃げようとして気づく、あのモンスター……俺を、“俺だけ”を追いかけてないか……? って。


 試しに【ステージ上】を踊りながら左右に移動するとモンスターはやっぱり俺を……なら、

「カッチャン、少しで良いから、モンスターを止めて!」
「ああ、我に任せよ……」


「ククク……見ろ、貴様の足元で影が嗤っているぞ。太陽がもたらす偽りの平穏は今、この手によって終焉を迎える。蠢け、冥府の鎖。絡め取れ、無知なる迷い子の鼓動。慈悲なき闇が、貴様の自由という概念を喰らい尽くす……。【影鎖縛獄えいさばくごく】……! 跪け。《影縛りの狂宴シャドウ・カーニバル》」

 カッチャンはいつもと同じ様に身振り手振り大きく動かしながら少し難しいなんか言い方中二病しながら床から黒い鎖を出してモンスターに絡ませた。
 モンスターの手足、胴体、頭全てを拘束し──


 俺は距離を取りつつも弓を構えた──《神の一撃》
 多分強い敵なんだと思った。だから今撃てる中で一番強い《技》

──グオオオッ!!


「プキュ!」
「うお、プキュギ?! ケースを護れって? 分かってるッ!」
「プ~プ~♪」
「力が漲る……!」

 モンスターはカッチャンの《技》で動けない筈なのに爪が伸びてコッチに向かってくる。それがスローモーションで見え、横の方でメイチャンの所にプキュギが来てなんか(補助魔法)してて淡く光るメイチャンが俺の前に来て剣で爪を止める。
 メイチャンのギリ横を《矢》が通り抜けて──

 モンスターの脳天を《神の一撃》が通り抜けた。
 巨体が床に崩れ、炭? の様にボロボロと崩れて消えていく……

 
「我らの男神が、凶悪な魔物を打ち倒したぞ!!」
「「ワーッ!!」」

 
──演出か?
──凝ってたな……
──驚いた……
──すげー迫力だったなっ!


 クラス全員また何事も無かったように踊り、そしてフィナーレへ!
 踊り終えて、舞台袖に戻ったあと、改めてメイチャンの怪我を診て、マルにも手伝ってもらいながら《治療》をしてキレイに完治。良かった。

「もう、めっちゃ心配した。頭から血が出てて……」
「悪い。でもお前を助けれるなら……」あの時だって、
「うん?」
「いや、何でもない」
 
 メイチャンの何か言った声は聴こえなかったけど、その時マルも目を伏せたから何かあったのかな、と思ったけど、自分には心当たりがなくて首を傾げた。
 とにかく、これからまたそんな事があったら──って思ったけど……


 モチくんが《幻影魔法》で出したモンスターは日を改めて何度か検証したけど、やっぱりあの舞台で暴れたモノとは別物で、モチくんも先生達も何だったのか、って迷宮入りに。




 結局、あれは何だったのか。
 観客はなんだかんだ演出の一部だと思ったらしくて今回の優勝は俺達のクラスだった。

「練習から本番までトラブルもあったけどお疲れ様!」
「お疲れ様~!」
「ほんとアレ何だったんだろうね」
「カメイメくんとカカッハくんカッコよかったね!」
「うんうん、ケースくんも《最後の一撃》凄かったよね」

 ワイワイガヤガヤ【教室の中】もダンスの話で盛り上がってた。

「ケースくん、あの時はありがとう」
「うん?」
「僕が転んじゃって……」
「ううん、むしろヌヌくんも大きな怪我がなくて良かったよ!」

 ヌヌくんが転んだときはあのまま逃げる訳にはいかないって、咄嗟に体が動いたんだよね。
 彼も擦り傷はあったみたいだけど、ちゃんと怪我も治したらしいから良かった。

 


「この前の【島】でメイチャンが助けてくれたときがあったじゃん」
「ああ、そういえば」
「だからかな。その時と同じで今回もメイチャン達が側に居たから頑張れた。ありがとう」
「ふ、ケースは頑張ってくれたよ。俺こそありがとな」

【浴槽の中】で寄り添う。
 メメちゃんちの【島】で地面が盛り上がってそこからバランスを崩して下に落ちた時に、メイチャンが助けてくれた。マルの《補助魔法》も助かったけどね。
 
 いつからか、ずっと前から事あるごとにメイチャンは俺に『絶対に護るから』って言う。本当に護ってもらうことが多いけど、あれ……いつからだっけ……?
 誰か──に──れて、──て、あれ? なんか鮮明に思い出せないな。

 んー……今は良いか。
 彼に頭を撫でながらのんびり~ふあっ……──

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