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心の場所
5ー2
しおりを挟むひかると俺の間で他に変わったことといえば、キスをたくさんするようになったことだ。
「んっ、はっ」
最初は触れる程度だったそれが次第に互いの舌を絡めるキスに変わる。息継ぎがうまくできなくて、少し苦しい。
キスなんて、必要ないと思っていた。身体を重ねた時にお互い気持ちが高まると唇を合わせたことはあるがそれだけだった。
ひかるとのキスは気持ちがいい。ひんやりとしたひかるの唇が重なり、優しくほぐしていくようなキス。
俺の頭をひかるの手が押さえていて逃げられない。ひかるの舌が複雑に絡み、熱が生まれる。俺も積極的に自分の舌を差し入れた。
「ひ、かる… んっ」
「お前、キスそんなに好きだった?」
キスの合間にひかるが聞く。
「最近、好きになったんだよ…」
ひかるがあの日、寝ている俺にしたキスの感触を忘れられなかった。あの時は触れるだけのキスだったが、それだけでも俺は感情が溢れそうになった。何だかおかしかった。
ひかるのキスは感情がこもりすぎていた。触れた唇が少し震えていた。セックスよりもただの触れるだけのキスでひかるは緊張しているようだった。
確かめたかった。もう一度ひかるとキスをして胸が震えるのを。
ある日キスをせがんだら、ひかるは最初驚きながらも丁寧に俺の唇に触れた。次第に深くなるキスにお互い夢中になった。
ひかるの動きが不自然に止まった。
「ひかる?」
「誰に?」
「え?」
「誰にキスしてもらって好きになったの?他のセフレ?」
眉を寄せて苦しげな表情をしたひかると目が合った。
ひかるは勘違いしているようだった。俺がキスを好きになったきっかけは他の誰かなんじゃないかと思っているようだ。
お前だよ、ひかる。お前が俺にキスの気持ちよさを教えたんだよ。でも、口には出さない。それを言うにはまだ自分の気持ちを整理できていないから。
ひかるの発言で気になることを俺は口に出した。
「お前、なんか勘違いしてるよ。そもそも、他のセフレってなんだよ。俺は今、お前としかそういうことしてないよ」
二人の間に沈黙が落ちる。
「ほんと?」
「うん」
ひかるは明らかに安心した表情を見せた。もしかしたら、ひかるは嫉妬したのだろうか。俺が他の誰かに抱かれるのは嫌なのだろうか。
なんだろう、この気持ち。言葉にできない。でも、目の前にいるこの男が無性に可愛いと思ってしまった。自分よりも背の高い男に可愛いなんてどうかと思うが、可愛いのだ。
自然と腕が伸びた。ひかるの髪に触れる。少し硬い髪を俺は撫でた。今、そうしたいと思ったから。
「なんだよ」
ひかるは不機嫌そうに言う。その言い方が妙に子供っぽくてつい笑ってしまう。
「ひかる」
ひかるが顔を上げ、そのタイミングで俺はひかるの唇にキスした。
目の前の男は完全な不意打ちに固まり、次の瞬間耳まで赤く染まった。その様子が可愛くて、また俺は笑った。
「ねえ、続きしよ」
俺はひかるの首に腕を巻きつけ、今度は深く唇を合わせた。静かな部屋にお互いの唇を吸う音が響く。それに気持ちが高まり、よりキスは深くなる。
身体を重ねて、つながるのとは別にキスには特別な力があった。唇の柔らかさ、温度、触れ方一つからひかるの気持ちが伝わってくる。
息ができないほど、苦しい。一番困るのはそれがちっとも嫌ではないことだ。
「ベッド、行きたい」
キスの合間で何とか伝えた。
「俺も」
隣のベッドがある部屋に向かうまでの間もお互いにキスを繰り返した。すぐそこなのになかなかベッドまでたどり着けなくて、お互い顔を見合わせて笑った。
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