転生少女は怠惰した生活の夢を見るか?

オウラ

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私とおまじないと立花くんと……

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 とうとう、ついにこの時間がやってきた。時計を見れば、私たちの演劇の開演5分前。あぁ、緊張して来たよ。
 舞台袖から、客席を覗き込めば思っていたよりも席が埋め尽くされて、ただでさえ暑い体育館が熱気でさらに、暑くなる。まさにサウナ状態。
 あぁ、こんなに多くの人間の目の前で、演技をするのかと考えるとなんだかお腹が痛くなって来た。

 うぅ、前世からプレッシャーには弱いんだよな。

 ぎゅっと、魔女の衣装である黒いローブを握って見たが緊張がほぐれることはない。
 あぁ、とうとう始まってしまう。この1週間、かつてないほどに頑張ったけれど、本当にあれでよかったのか。私、本当に頑張れたの?頑張ったと言えども、たった1週間。ほかの役者の子達と比べれば、圧倒的に練習不足。失敗したら、全部私のせい。やっぱりあの時、断っておくべきだったんだんじゃ。
 と今になって、後悔やらが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
 うぅ、本当に気分悪くなって来た……



「思ったよりも沢山人がいるね……」
「うわっ、………た、立花くんか、びっくりした」

 後ろからいきなり声をかけられたかと思えば、そこに立っていたのは、立花くん。いきなり背後に立たれたからびっくりしたじゃないか。

「あ、驚かせちゃった?ごめんね」
「いや、それは、気づかなかった、私にも原因があるし…」

 びっくりは、したはしたが、後ろの気配に気がつかなかった私が悪い。しかし、いつのまにか後ろ立っていたのだろうか。

「見かけたから、つい声をかけちゃった。ごめんね。……というか桃月さん、大丈夫?大分緊張しているみたいだけど」
「大丈夫じゃないよ。失敗しないか、胃がキリキリ痛んで仕方ない。うぅ、考えれば考えるほど、お腹が」
「そっか、まぁ、そうだよね。」

 ふふふ、とどこが楽しそうに笑う立花くん。全く笑い事じゃないのに!

「思えば、あの時も君は緊張してたね。」

 昔を懐かしむように微笑む立花くん
 はて、あの時とはいつのことだか。
 あ、もしかしてアニメイベントの時?確かにあの時も緊張していたけれど。でも、あれは、今の緊張とはまた別の種類の緊張だし、そもそもあの時は、緊張よりもまた別の感情が上回っていた。
 多分それは、立花君もわかっていることだろう。だとすると、それ以外に、立花君の前で緊張することなんてあったけ?

「そんなに緊張しているのなら、緊張を解くおまじないかけてあげようか?」

 はてさて、どうだったかと思案していれば、ひょいっと顔をのぞかせる立花君。び、びっくりした。にしても

「おまじない?」
「そう、おまじない。」

 そう言って、にこにこと、微笑む立花君。
 それにしても、おまじないか。なんだか、久しぶりに聞く単語。しかもそれが、立花君の口から聞くことになるとは、なんだそれ。可愛いな!!
 と思うのもつかの間、おもむろに私の手を握り、じっとこちらを見つめて来る立花くん。

 うん、なに?急に!!恥ずかしい。


「え、あっ、あの、立花くん!?」
「君は、何だって出来る。頑張れる。たった一週間だけど、君はやれるだけのことをやったんだ。だから大丈夫」

 な、なんだこの羞恥プレイ。は、恥ずかしい。かぁっと顔が熱くなるのがわかる。

「た、たちばなくん?」
「………はい、どう?」
「え?」
「緊張とれた?」
「え?あ……あ!!」

 そうだ、そうだった。

 確かに言われてみれば、緊張がとれている。
 成る程、緊張よりも強い感情を与える事によって、緊張を和らげるのか。ある意味合理的?

「行き成り何だと思ったけれど、そういうことか」
「あはは、ごめん、ごめん。でも効いたでしょ。緊張を解くまじない」

 若干色づく頬、どうやら立花君も恥ずかしかったみたい。

「な、なかなか、羞恥ポイントをえぐってくるおまじないだね」
「あははは、確かに。いや、これね、昔、教えて貰った奴なんだけどさ。いざ、実践すると、なかなか恥ずかしいね。」

 昔、ねぇ。ふーん、なるほど、ねぇ。
 おまじないっていうのは、基本的女の子が好きな話題だ。つまり、立花には、こんなおまじないを教えてくれる仲の良い女の子がいたわけだ(お母さんって説もあるけど)
 っく、いいねぇ。甘酸っぱいよ。一体誰なんだろう。あれかな?この前話していたこの子ことかな?





「………まぁ、緊張もほぐれたことだし、頑張ろう、桃月さん。君の幼馴染みも来ていることだしね。」
「え?」

 ほら、と言って立花君が指さす先にいたのは翔馬。しかも最前列のど真ん中に、ビデオカメラを設置して座っているではないか。
 普通、その席は在校生しか座らないというのに、何という暴挙。
 さも当然だと言わんばかりに座る姿に、思わず頭を抱えたくなる。

「あの、馬鹿」
「あははは、愛されてるね。桃月さん」
「いや、あれは過保護なだけ………」

 はぁ、もう少し空気を読めよ。そこは在校生の座る席だぞ。気がつけよ!と念を送るが伝わらない。
 せめて、周りに座ってる誰かが、声をかけてくれ!と願うが、何故かキャピキャピした女子が翔馬の周りを埋め尽くしている。
 成る程、顔かー、顔なのか。流石、乙女ゲームのメインヒーロー、伊達にイケメンではない。

 っけ!これだからイケメンは!!





「……まぁ、何度も言うようだけど、頑張ろうね。桃月さん。そして、精一杯、この学園祭を楽しもう。」
「え、あぁ、うん?」

 なんだか、その立花君の言い回しに一瞬違和感を覚えた。
 が、気がつけば舞台は暗転。鳴り響くブザーと共に開演の幕が上がるのであった。
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