転生少女は怠惰した生活の夢を見るか?

オウラ

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見えざる檻

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 今日で、夏休みが明けて、1週間。文化祭の準備も中々順調に進み、本来ならここから更に充実した、楽しい日々……になるはずだが、残念、私にとっては全くの逆。死へのカウントダウンが始まったからだ。

 あー、悲しきかな。今日から翔馬の通う学校が始まる。つまり、奴の学校に、転入生としてヒロインが転校してきて、乙女ゲームがスタートするのだ。

確か、ゲームのシナリオはこうだった。
急な事故によって、両親を亡くしてしまったヒロイン。天涯孤独、1人になってしまったと思っていた彼女だが、ある日1人の老人が目の前に現れる。なんでもその老人は、ヒロインの母の父親、いわゆる自分の祖父だと言うのだ。両親から、とうの昔に祖父母はいないと聞かせれていたヒロインは、そんな突然の出来事に驚き、そして自分はまだ1人ではないと言う事実に喜びを感じる。
 しかし、話はそれだけでは終わらない。実はこの老人、国内有数の名家の当主。大のつく大金持ちであったのだ。
18年前に、父親と恋に落ちた母親。家と自分の顔に泥を塗ったと言う事で、とうの昔に勘当したのだが、それでも老人にとっては大切な娘であった。

「あいつが残した唯一の忘れ形見。それにお前は私の孫だ。願うのならば、手を貸してやる」

 はたして、本当に祖父なのか、家族なのかわからない。だが、それでも、ヒロインはその手をとり、老人と暮らす事を決意した。再び家族と暮らすという夢を抱きながら。

 祖父との関係性、馴染めない転校先の学校、親族たちの視線、名家という重荷。そんな苦悩に悩まされながらも、持ち前の明るい性格と、前向きな考えで、生きていくヒロインの恋愛ストーリー…………的な感じだった。

因みに、攻略候補は、翔馬を初め、学校の生徒会長、事実上の又従兄弟、担任の先生、没落仕掛けの名家の子供、お手伝いさん(男)、隠しキャラ……と様々。どの話も良かったけど、やっぱり人気なのはメインヒーローたる翔馬のルート。人気投票でも、巷の評価でも、断トツに人気だった。故に、ヒロインも翔馬と結ばれる事を望んでいるんだろうなぁ。………夏休み中にあった彼女が乙女ゲームのヒロインだとすると、だ。事実なら、どう考えても私の未来はお先真っ暗。翔馬とヒロインがゲームのシナリオ通り見事結ばれ、そして私は刑務所行きという展開を迎える。しかも、この前、立花くんと話してた時、自分の愛がなかなか重いかもしれないと言うことを自覚してしまったから、なおのことそうなる未来が近いような気がするよ。はぁ、体がだるい、何もかもが面倒だ。憂鬱………憂鬱である。





「どうした?奏、いつになく憂鬱そうな顔をしているな。」
「いや、これからの事を考えると、憂鬱で……………ねぇ、翔馬、お前、明るい性格の人って好き?」
「はぁ?なんだいきなり。」

いきなりで悪いとは思うが、重要な事なんだ。

「取り敢えず、答えてくれよー。明るくて、優しくて、前向きで、何事にもひたむきな、美少女は好きか!」

むしろ、そんな子嫌いなわけないか!好きだろ?好きになっちゃうんだろ!そして、私を刑務所に送っちゃうんだろ!?

「はぁ!?何言ってるんだ。そんな人間いるわけないだろ。」

いや、だからいるんだよ。これが!なんてたってヒロインだから。

「じゃあ、いたら、いたら翔馬はその子の事を好きになっちゃう?なっちゃうのか?えぇ!!」
「は?お前、ふざけてるのか?奏………いや、それでもこれは、とうとう、俺の気持ちに……いやいや、こいつに限って、そんなことはないだろうし、でも、なんでいきなりこんな事を聞いて…………」

  何やらブツブツと呟き始める翔馬。……何を考えているのか、知らないが取り敢えず答えてくれると嬉しいんですが。

「……兎も角な、奏。俺は、そんな完璧な奴より、ちょっとダメなところがある奴の方が好感が持てる。ダメダメのやつが好きだ。ダメなところがある奴なら、ダメなところをさらにダメにして、そして、俺が居ないと生きていけない。俺なしじゃダメだっていう風することが出来るだろ?」
「…………」
「そうだな。いつかそんな風にして、誰にも見えないように、閉じ込めておくのも良いかもしれない」

 な、何言っちゃってんの?お、幼馴染が、私の幼馴染が、犯罪的思考に目覚めかけている。なんて奴だ。昔は純粋で、とっても可愛かったのに、いつの間にそんな性格になってしまったんだ。

「えっと、翔馬。いや、翔馬さん。犯罪はダメですよ。流石にちょっと、それは、ダメですよ。幼馴染が捕まるなんてシャレになりませんよ」

 もしかしたら、私が捕まるよりも先に翔馬が捕まる未来があるかもしれない。

「大丈夫さ。だって、お前は俺に捕まって欲しくないんだろ?」
「う、うん?」

 いや、何が大丈夫なんだ。

「まぁ、俺のそばでおとなしくしてるなら、俺だってそこまで酷い真似はしないさ。やらないように気をつけるさ。なぁ?」

 そう言ってなぜか私の頭をポンポンっと叩き撫でる翔馬。わけがわからない。
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