ヒロインは他に任せて

オウラ

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 首元ギリギリに聖剣を当てられたドゥムは、あまりの恐怖に腰を抜かしてその場に座り込んでしまった。一体、俺様キャラはどこに行ったのやらと疑いたくなる醜態だ。



「こ、この俺様にこんな事をしてタダで済むと思っているのか!?」

 いや、そうでもなかった。上から目線なのは相変わらずだった。なんだ、こいつ完全に不利な状況だというのに、態度がなってない。もしかして、自分が人質であるという事をわかってないのだろうか。ここは分からせた方がいいのではと思い、軽く剣をカチリと動かせば、面白いくらいにドゥムの顔は真っ青になる。んー、なんだかこの光景、はたから見ると、私が悪役みたいだ。




「ド、ドゥム様!!?大丈夫ですか!?」
「っく、卑怯です!ドゥム様を人質にするなんて、それでもあなた人間ですか!?」

 いや、悪役みたいではなく、あの双子にとっては、悪役なんだろう。立場によって正義と悪が変わるなんて、哲学的だなぁ。と、現実逃避をして見たり。いや、ちょっと待て哲学ってそもそもなんだ。

 ボケーとそんな事を考えながら、目の前のドゥムを見つめる。さてと、この後どうするか。
 上手くドゥムを人質にする事が出来たはいいが、ここからが問題。
 このまま殺すのは国際問題的にダメだし(いや、国際問題うんぬんじゃなくて、人としてアウト!倫理的にもアウト!だ)かと言ってこのまま何もしなければ、せっかくの人質が取り替えされてしまう。事実、双子は一刻も早くこの馬鹿皇子を救い出そうと私の隙を伺っている。んー、本当にどうするべきか。それに、本当にそろそろ魔法が解けて、私は動けなくなりそうだし。というか、既に、右腹と、左足がやばいしな。

 私一人が考えても埒があかない。ここは、もう殿下に指示を仰いだ方が良いかなと、殿下の方を見れば、何故か溜息をつかれ、仕方ないなという感じの顔をされた。(え、なんか酷くないですか?確かに一人では何もできませんが、そんな顔をしないで下さいよ!!)
 と、取り敢えず、反応からするに、ここは殿下に任せておいて大丈夫なのかな?そういうことでいいのかな?






「少し手荒な真似をしてすまなかったね。……だが、それはおあいこという事で、いいだろ。君達もなかなかの事をしてくれたのだから。」

 うん、どうやら任せていいようだ。
 一歩、一歩此方へと近づいてくる殿下。その姿はなんとも頼もしい。が、よくよく考えたらこの人ネイブール帝国と協力関係の裏切り者だった。全然頼もしくなかった。任せた相手を間違えたかもしれない。いや、いや、ここは信じよう。一応現時点では他のメンバーに殿下がネイブールと裏でつながっている事はバレていないのだ。下手なまねはしないだろう。うん、ここは信じよう。



「さて、いくつか質問をするから、正直に答えてくれよ。答え次第で、君達の今後の措置を考えてあげるよ。まず、そうだな、何故君たちが、しかも帝国の皇子である君がここにいるんだい? 」

 当然何故いるのか知っているはずなのに、なんにも知らないふりをして、ドゥムや双子に尋ねる殿下。あぁ、なんというか笑顔が怖い。


「そんなもの考えればわかるだろう。お前達の邪魔をしにきたそれだけだ!!」

 瞬間、隙を突かれたのか、そこにおとなしく腰を抜かしていたドゥムがいきなり立ち上がろうとする。やばい、逃がしてたまるものか!!と剣を構えたが、何故かパシリと急に聖剣を握っていた手に電流が走った。

「っい!!」

 ただでさえ、痛覚を麻痺させる魔法が溶けかかって、身体の限界に近かったというのに、これが決定打となった。気がつけば手から聖剣がこぼれ落ち、膝から崩れ落ちる。 

 ヤバイと思った時にはもう遅い。ドンっと思い切り、ドゥムに腹を蹴られ、そのまま思い切り踏まれ、動きを封じられた。

「………ぐっ!」

 最悪だ。完全に形勢逆転された。先ほどまでとは、真逆の図の完成。

 それにしても、可笑しい。今ドゥムは呪文を唱えるどころか、魔法を使った気配すらなかったのになんで!?なんで電流がいきなり発生したんだ。……もしかして、と思い心あたりのある方へ顔を向けようとしたが、それはドゥムに阻止されかなわなかった。




「よくもこの俺様をコケにしたな!!この女め!!………ん、待てよ。お前、どうかで見たことがある顔をしているな。………あぁ、そうかお前は昨日この俺様をコケにした女か!?っく。そうか、お前だったのか。一度でさえも重い罪だというのに、2度もこの俺様を侮辱しやがって。」


 聖剣を奪い取られ、首元ギリギリにその刃先を当てられる。


「どうだ、悔しいだろ。先程までとは全く違う状況。この俺様に恐怖するだろ。たが、簡単には殺してはやらぬ。この俺様をあそこまでコケにしたのだ。タダでは殺しねやらぬ。」

 そのままグサッと思い切り右肩に聖剣を突き落とされる。


「………っ!!!!」

「ふ、なかなかいい顔だ。死への恐怖、そして俺に対する恐れ。最高だな。あぁ、俺様の好みの顔だ。……そうだな、一気に殺すよりゆっくりとじわじわと殺した方が面白いな。それに今ここでお前を殺すと彼奴も煩いしな…………女、今回は見逃してやる。だが、俺様は必ずお前を殺してやる。絶望させ、俺と会うたびに、死への恐怖を味あわせてやる。。」


 だらだらと肩から流れる血。いつの間にか、魔法も解けて痛覚が完全に戻ってたせいもあってか、意識が朦朧としてきた。




「今日はこの辺にしておいてやる。次会った時には、お前に待っているのは死だ。そこにいるリュミエールの奴らもだ、いいな覚えておけ。……ロイト、ゴーチェ、いくぞ!!」
「はい!!ドゥム様!!」
「それにしても流石でしたね~。かっこよすぎますー」

 気がつけば、どこかに消えていく彼等。一体どこに行くのか、意識が薄れて行く私には分からない。


 あぁ、それにしてもやばい、死ぬ…………かも。


 ふと、誰かが、此方に駆け寄ってくる足音が聞こえてくる
 ぎゅっと、誰かが、私を抱きしめる感覚がする。

「ばか………ナ!!…………なよ!!ねぇ、…………ないでよ。約束……じゃん。」

 そんな声が、聞こえてきたような気がした。約束……あぁ、そう言えば、アネルとの約束ってなんだったけ?あの時アネルは何を………言おうとしてたんだろう………薄れゆく意識のなか、ふとそんな事が頭を過ぎった。
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