37 / 50
エスト公国にて
35
しおりを挟む
あー、土砂降りにならないといいなぁと、アネルに引っ張られながら思っていたが、残念、見事、あの後大雨が降ってきて、全身びしょ濡れ状態。衣服がベッタリと肌について気持ち悪い。
季節的にはまだ暖かい方だが、それでも雨が降れば気温が多少なりとも下がり……少し肌寒くなる。
せめて、何処かで雨宿りしたいんだけど、ズンズンと目の前を突き進むアネルのその気は無さそうで、一行に止まる気配はない。まぁ、ここまで濡れてしまったなら、今更何処かで雨宿りなんかしても意味ないか。多少寒くても、なんとかならだろうし、それに彼の心情を考えれば……このままの方がいいかもれしない。
自分を捨てた母親にあったのだ。心境が、複雑じゃない訳がない。怒り、悲しみは勿論だが、もしかしたら、心の奥では…………他の感情もあるのかもしれない。
「…………ルーナ、ねぇ、ばかルーナ」
誰もいない道の真ん中、歩くのをやめ、急に此方を向くアネル。泣いているのかどうかは、雨のせいでわからないが……声は少し震えている。
「…………何?アネル」
「寒いんだ、とっても。心も、身体も……」
「うん」
「さっきの事、お前に忘れろって言ったけど……そもそも俺が忘れる事が出来ない。忘れたいのに、無理なんだ。可笑しいだろ?嫌いなのに………大っ嫌いなはずなのに…………」
それでも、忘れる事が出来ないのは、きっとそれは、何があろうとも彼女がアネルの母親だからだろう。………多分、なんだかんだ言って、アネルはお母さんが好きなのだ。
あの事件が起きるまで、アネルの家族は、絵に描いたような幸せな一家だった。優しく綺麗な母親、働き者の父親、そして彼らに愛される息子。今でこそ……だが、一時はとても大切で、大好きで、かけがえのない存在だったのだ。殺したいほど憎んでも、嫌いでも、好きだったという事には変わりない。
「……ねぇ、ルーナ。僕は、僕は、どうしたらいいの?」
いつもは強がっている姿からは想像が出来ないほど、弱々しい姿。触れれば壊れてしまいそう。こんな姿を見るのは、2回
「この気持ちを、永遠に捨てられないの?僕は、ずっと苦しめられるの?」
ぐいっと胸を掴み、苦しそうにするアネルが痛々しい。
「……アネル、多分、私にはどうにもできない。だから、きっと、君はずっと苦しめられるかもしれない」
「……………」
「でもさ」
そっと、アネルの顔に手を伸ばし優しく触れる。
小さい頃も、こんな事があったけ、あの頃よりも幾分に伸び、成長しているはずなのに……
「でもさ、約束しただろ?私は、君の帰る場所になるって。どんな事があっても、ちゃんと君が戻ってくるのを待っている。……嫌かもしれないが、辛い事があったら、こうしてちゃんと甘えていいから、側にいるから。気持ちをわかってあげることはできないかもしれないけれど、側にいるから。いくらでも、肩は貸すから。ね?」
雨で冷え切った手に、じんわりとアネルの体温が感じる。
「お前、本当に馬鹿だよね。そんなん言葉で、僕の気持ちがどうにかなると思ってんの?」
「あぁ、気に障ったならごめん。」
自分は良かれと思っても、相手にとっては気に触ることってあるよね。こればかりは仕方ないだろう。
「別に……触ってない。触ってないから……慰めてよ」
瞬間、ぽすんと、肩に重みと、首元に濡れた髪の毛の感覚を感じる。よしよしと撫でてやれば、すすり泣く声が聞こえてきた。
……少し重たいが、しばらくはこのままのかな。
「……あぁ、やっぱりお前は、毒だよ。ルーナ」
ボソリと、何か言ったような気がしたが、何を言ったのかまでは聞こえてこなかった。
季節的にはまだ暖かい方だが、それでも雨が降れば気温が多少なりとも下がり……少し肌寒くなる。
せめて、何処かで雨宿りしたいんだけど、ズンズンと目の前を突き進むアネルのその気は無さそうで、一行に止まる気配はない。まぁ、ここまで濡れてしまったなら、今更何処かで雨宿りなんかしても意味ないか。多少寒くても、なんとかならだろうし、それに彼の心情を考えれば……このままの方がいいかもれしない。
自分を捨てた母親にあったのだ。心境が、複雑じゃない訳がない。怒り、悲しみは勿論だが、もしかしたら、心の奥では…………他の感情もあるのかもしれない。
「…………ルーナ、ねぇ、ばかルーナ」
誰もいない道の真ん中、歩くのをやめ、急に此方を向くアネル。泣いているのかどうかは、雨のせいでわからないが……声は少し震えている。
「…………何?アネル」
「寒いんだ、とっても。心も、身体も……」
「うん」
「さっきの事、お前に忘れろって言ったけど……そもそも俺が忘れる事が出来ない。忘れたいのに、無理なんだ。可笑しいだろ?嫌いなのに………大っ嫌いなはずなのに…………」
それでも、忘れる事が出来ないのは、きっとそれは、何があろうとも彼女がアネルの母親だからだろう。………多分、なんだかんだ言って、アネルはお母さんが好きなのだ。
あの事件が起きるまで、アネルの家族は、絵に描いたような幸せな一家だった。優しく綺麗な母親、働き者の父親、そして彼らに愛される息子。今でこそ……だが、一時はとても大切で、大好きで、かけがえのない存在だったのだ。殺したいほど憎んでも、嫌いでも、好きだったという事には変わりない。
「……ねぇ、ルーナ。僕は、僕は、どうしたらいいの?」
いつもは強がっている姿からは想像が出来ないほど、弱々しい姿。触れれば壊れてしまいそう。こんな姿を見るのは、2回
「この気持ちを、永遠に捨てられないの?僕は、ずっと苦しめられるの?」
ぐいっと胸を掴み、苦しそうにするアネルが痛々しい。
「……アネル、多分、私にはどうにもできない。だから、きっと、君はずっと苦しめられるかもしれない」
「……………」
「でもさ」
そっと、アネルの顔に手を伸ばし優しく触れる。
小さい頃も、こんな事があったけ、あの頃よりも幾分に伸び、成長しているはずなのに……
「でもさ、約束しただろ?私は、君の帰る場所になるって。どんな事があっても、ちゃんと君が戻ってくるのを待っている。……嫌かもしれないが、辛い事があったら、こうしてちゃんと甘えていいから、側にいるから。気持ちをわかってあげることはできないかもしれないけれど、側にいるから。いくらでも、肩は貸すから。ね?」
雨で冷え切った手に、じんわりとアネルの体温が感じる。
「お前、本当に馬鹿だよね。そんなん言葉で、僕の気持ちがどうにかなると思ってんの?」
「あぁ、気に障ったならごめん。」
自分は良かれと思っても、相手にとっては気に触ることってあるよね。こればかりは仕方ないだろう。
「別に……触ってない。触ってないから……慰めてよ」
瞬間、ぽすんと、肩に重みと、首元に濡れた髪の毛の感覚を感じる。よしよしと撫でてやれば、すすり泣く声が聞こえてきた。
……少し重たいが、しばらくはこのままのかな。
「……あぁ、やっぱりお前は、毒だよ。ルーナ」
ボソリと、何か言ったような気がしたが、何を言ったのかまでは聞こえてこなかった。
0
あなたにおすすめの小説
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる