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出会い編
②
しおりを挟む次の日の朝、目を開けてしばらくぼーっとしてると控えめにドアの隙間から子供がこちらの様子を伺っているのが見えた。
(寝れなかったのか?)
のっそり起き上がるとピャっと逃げられてしまった。
(……。警戒されてんな)
リビングに向かうと子供は床に座り込んでいた。
「おはよ。…寝れたか?」
「うん…」
ゆっくり少し離れたトコでしゃがみ尋ねる。
近づいたからか身体がビクッと揺れた。
「…なあ。お前はココにいたいか?それとも元のトコに戻りたいか?」
「え」
1瞬のち、意味を理解したのかカタカタ震えだした。
「ぁ、ぅ…ゃだ。やだ、やだ、やだ…ぁ~……ぅぐぅ…ッ」
遂に泣き出してしまった。
どうしていいかわからないのでわたわたしながらちょっと近づく。
すると子供が近寄ってきた。
ギュッと抱きつかれる。…服に。
「…わりぃ。なんて言ったらいいか…言葉が見つかんねぇんだが…あ~…その、俺はお前が嫌なら元のトコに返したりしねえ。」
そっと抱きしめてやると若干震えが収まった。
「………………。お前はココにいたいか?」
「トラさん叩かない。母さん叩く。ココがいい。」
「…。」
少しだけ抱締める力を強め、決意をかためる。
脳裏にとある映像が流れた。
(─…コイツは俺が守ろう。コイツに1切罪はない。今度こそ俺が…俺が守る。)
「…わかった。1緒に暮らそうな。」
「…いいの?」
「おう。」
「っ!僕、ここで暮らす……。ありがと…!」
「おう。…ってお前、まず呼び名決めなきゃな。何が良い?」
「???なんでも良いよ~」
さっきと打って変わってにこにこしながら子供は言う。
「……ハク…っつーのは安直だしペットぽくなるよな…。あ行から考えてくか…あーあ、あい…ん~…あ……。!!飛鳥馬ってのはどーだ?」
「あす…ま?カッコイイ!!」
「おう、お前の新しい名前だ。気に入ったか?」
「うん!カッコイイ!アスマ!!」
「…………。なんか意味わかってなさそーだな」
■
朝飯を食べた後、服を買ってやらねばならないので、○オンに連れていき、服を10着程取り急ぎ買った。イ○ンに着いた時、飛鳥馬は目をキラッキラさせて俺と繋いだ手の力をつよめてきた。
買い物のあとはコネのある病院で飛鳥馬の健康診断…という名の虐待の証拠集めを敢行した。
「……。虎治くん。彼…飛鳥馬君だっけ。過去に4回以上骨折している。痣もひどいし完全に虐待だろ。」
「やっぱりそうですか。」
「……。虎治君。そういうことだからきっとトラウマも多い。それに…アルビノだから身体も弱めだ。…本当に君が保護するのかい?」
知り合いの石原という初老の医師が厳しい目で俺を見る。
少し、深呼吸し彼の目をちゃんとまっすぐ見て言う。
「はい。幸い今日から20日休み取れました。病院も近いし、課題も研修もちゃんとやります。」
はあ、と石原先生はため息を付いた。
「君ね…子どもを育てるのはそう簡単じゃないんだよ…特に…まあいい。君が忙しいときは私が面倒を見るから。諸連絡だけは怠るなよ。」
はい。と診断書を目元に手をやりながら渡してきた。
「ありがとうございます」
石原先生は俺が小さい時にお世話になった先生だ。俺の今暮らしている家からそう遠くない所で整形外科をやっている。
最前線は退いているため、俺よりかは少し時間があるようだ。研修でこの先2年あまり自由のない俺にとってこの申し出はありがたいことこの上ないことだった。
石原先生に丁寧にお礼を言ったあと、俺等は診断書と写真という証拠を携えて「支援措置申出書」という虐待等の事情を抱え、逃げ出してきた人間を加害者の追求から逃げる手助けをする書類を提出しにいった。
──ここからが俺等の物語の始まりだった。
*******************
<オマケ>
「あ。先生、飛鳥馬って何歳くらいですか?」
「…歯を見る感じ10歳位…かな?」
「…は?」
「とらさん…終わった」
とたとた、と飛鳥馬が俺の近くに寄ってくる。
…どう見ても180ある俺の腰の高さより少し高いくらいしか身長がない。
「…。お前、何歳?」
「ん?10歳!」
「…………。ホントかよ。」
※飛鳥馬はテキトーに言ってます。
(ほんとは13)
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