月の在る場所

seaco

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第12話

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俺を「好きだ」と言った遼は……


それからも至って普通で……


何なら「好きだ」と聞こえただけで、実は全く別の事を言ったんじゃないかって思えるくらい……



いつも通り。



まぁ……普通にしてくれる方が良いんだけど……



正直なところ……

遼に好きだと言って貰えた事は、ほんとに嬉しい。
ちょっと前までの俺だったら……「俺も好きになっても良いの?」とか何とか言って………もしかしたら、その場でOKしたかも知れない。


だけど………


即答出来ないのには理由がある…。


遼みたいな男前に告白されるなんて、俺ってどんだけラッキーなんだよって思うし…遼と付き合ったらきっと優しくて俺だけを見てくれるんだろうな、とかも思うんだけど………


だけど……どうしても……



どうしても、どうしても………





幸多が居る。




揺らいでるのはそこだ…。



幸多が気になって……遼に踏み切れない。


遼の事はすごく好きだ。
ほんとに、バイトで毎日会ってたけど楽しいって思えたし、今だってそう思う。



だけど………



やっぱり……幸多が出て来ちゃって…どうしようもない。


遼の告白を受けるだけ受けて…そんな事思ってる俺って、何かすげぇ嫌な奴みたいな気もして来る…。


俺って……このタイミングで何でモテてんの……?




「月の事、困らせたい訳じゃない」


バイトに向かう遼の自転車の後ろ。
面白かったレンタルDVDの話が終わって、行き成り遼がそう言った。


「ほんとは、俺の事好きになって欲しいし、付き合うって言って欲しい」

……はっきり言われると……顔がすっごい熱くなる。

「お前がゲイだろうが何だろうが、俺は別に構わねぇんだ。それでも俺は月を好きだって思うから」

……もう、どんな顔して聞いてたら良いのか分かんない。

「でも……直ぐに返事をくれないのは…………アイツのせいだろ?」
「………え…」

アイツ、と言ったら……アイツしか居ない。


「アイツが好き?」


何も言えない…。
俺だってまだ考えが纏まんなくてグチャグチャで……幸多の事、好きかどうかもはっきり分かんなくて……遼だって大事だし……


「月が悩んでるうちは、俺も引かない」

「…遼…」

「俺の事だって好きだろ?」

「……………うん」

俺は遼が好きだ。
ほんとに。

幸多と会って無かったら……きっと即OKしてる。

でも……幸多と会って無かったら、きっと俺はゲイだなんて遼にバレる事も無くて……遼が俺に告白するなんて事も無かったのかもな……


「月」

「…ん?」


「好きだ」


…………ズルいよ…
今、言うなよ……


自転車を漕ぐ遼の背中に頭を付けて……少しだけ泣いた。




~~~~~~~~

『起きてるか?』

幸多からメッセージが来たのは朝8時。
いつもなら思いっ切り寝てる時間だけど、今日は7時から起きてる。

だって今日は水曜日。
お守りを買いに行くって約束した日だし。

『起きてる』と送った返事も直ぐに既読になって、俺の返事待ってたのかも…とか思ってしまってちょっと嬉しいような気分になる。


清々しい。
朝から気持ち良く晴れてて、何かテンション上がっちゃってマンションの前まで出て、幸多の到着を待つ。


少しすると、幸多はやって来た。

「ちゃんと起きたんだ」
「もちろんっ」

自慢気に言いつつ、車に乗り込む。
車内はほんのりサッパリ系の香りがしてて、オシャレな幸多にはピッタリだな、とか思う。

幸多は今日も完璧に男前。

「何だよ」
「えっ、何が?」
「見惚れてたな」
「わ~、自意識過剰~~」

あはは、と笑ってるけど、本当は見惚れてた。
だって、運転席にこんな男前居たら普通見るでしょ。

平日だから高速道路は空いてて、ストレスなくスイスイ走る。
幸多はきっと運転は上手い方で、長距離だけどすごく快適。

俺が免許持ってないから、代わってあげられないのがちょっと申し訳ないけど…。

「休憩しなくて平気?」
「んー?楽勝」

へぇ~…そうなんだ。
きっと幸多は、高速も走り慣れてるんだろうな…。


「1個聞いて良い?」
「え、うん」

…とは言ったものの、だいたい何聞かれるか想像がついてる…。


「アイツと何かあった?」


やっぱり。
アイツと言うのは遼の事で、何かと言うのはきっと……


「…………まぁ……うん、…ちょっと……」


そう言った直後……見えて来たサービスエリア入り口の看板に、幸多が無言でウィンカーを出す。

休憩無くても楽勝とか言ってた傍からサービスエリアに入ったから……幸多の気持ちの変化がすごく気になってしまった…。

一番端に車を停めて……少し、沈黙。
何も言わない幸多が気になって、そっちを見ようとした瞬間…、

「何かあったって聞いたら…ちょっと……お前乗せてるし、運転に支障出たら困るから……」

とか言うから……何か一気にドキドキして来る。
俺と遼になんかあったって聞いて、動揺してるって事でしょ?

そういうの…………俺の心拍数も一緒に上がるから、止めろよな…。


「…何…あったの?」


……真面目な顔で幸多が聞いて来る。


「…うん、」
「…うん、じゃねぇよ」
「あはは……そうだね…」
「早く言えよ」
「……うん……あの…」

これを言ったら、何か変わる?
俺と幸多の……


「……好きだって……俺の事…」


一瞬、ハッとした様な顔を俺に向けた幸多は、直ぐに困ったように少し俯いた。


「…キス、」

キス、と言うワードに、俯いてた顔をバッと上げる。

「したの…?」
「………」
「された?」
「………ん、」

幸多の顔が見れない。
どんな顔してるんだろう……


「…アイツとヤんないでって言ったけど、」

ちょっと不機嫌そうな声。

「ヤってないし…」
「キスもだ、バカ」

あ……
そう、…だよな…。

また少し沈黙。


「そんで…?」
「…何?」
「…好きなの?…アイツの事」


……直球で聞かれて……どうしたら良いのか分からなくなる。
だって、俺だって頭ん中グチャグチャなんだよ…。

だけど……

1つ分かってる事は………

俺は、遼が好きだって事。
それは…出会った時からずっと変わらない。

すごく好きで……だから、今も悩んでる。
遼を失うのはイヤなんだ…。


「俺は…遼の事は好きだよ」


思ったより、長い沈黙が来た。




「…そ、か」


ボソリ、と幸多が呟く。


「遼みたいな人が恋人だったらなぁ、って考えなかった訳じゃない」

「じゃあ……良かったじゃん」


良かったじゃん、って簡単に言うけど………俺は俺なりに今まで遼との距離を加減して来た。
近付こうと思えば近付けたのかも知れないけど……気持ち悪がられて去って行かれるかもって考えると、どうしても近付けない範囲があって……

遼とはずっと……友達で居たい、っていう結論に辿り着いた。


好きだ、って言われたのに、手放しで喜べないのは……


お前が……行き成り、俺の前に現れたからだよ、バカ。


「良かったじゃん、なんて言うなよ…」

「だって好きなんだろ?アイツの事」

「好きだけど……だけど……」


纏まんない。

俺は、遼が好きなの?

それとも………幸多…?


「どうしたら良いか分からない…」

「何だよ、それ」

幸多が…少し不機嫌になった。
俺が、何とも捉えどころのない事ばっか言うから…。


「幸多…」

「……何だよ」


少し、ぶっきらぼうな幸多の声。


「俺も……試したい」

「え?」


そうだ…。

幸多だけ、ズルいよ。

試したくなったとか言って、勝手に俺にキスしてさ……


「言ってみて」

「…え、何を」


色々言われた。

お前ってありだ、とか、落とすかも、とか、お前の事は欲しい、とか…色々。


だけど……

一番、簡潔で……大事な事を言われて無い。


「遼は言ってくれた。……幸多にも試しに言って貰いたい」

「……何て、」


しらばっくれんなよ、分かるだろ、そんなの…。



「好きだって」


不思議と……サラッと言えた。

緊張はしてるけど………何故か落ち着いてた。


むしろ焦ってるのは幸多の方で……途端に照れた様に顔を背けて、業とらしく咳払いとかしてる。


幸多が「好きだ」って言ってくれたら……


その時、俺は…どう思うんだろう。


「…ここで?」

幸多がちょっと困ってるのが、らしくなくて可笑しくなる。


「あー……俺、自分から言った事ねぇわ」
「ん?」
「好きだ、とか」
「……え、」
「言われた事しかねぇ」

すっごいドヤ顔じゃん…

「…やな奴ぅ~」

あからさまに嫌そうな顔をしてやった。

「ははっ、悪いな、モテんだわ、俺」
「わ……マジでいつか撃沈したら良いのに」
「いや、もう今がさ……撃沈しそうじゃん」
「え?」

ちょっと…ドキッとした。
急にフッと真面目な顔するから…。

「お前がアイツの事選んだらさぁ……俺、撃沈じゃん」

「え…」

「お前次第じゃん。確率半分だぜ?」

「あの、」



「良かったじゃんって言ったの撤回するわ。……俺さぁ………アイツにお前やりたくねぇ」



それってさぁ……

もう、俺の事が好きって言ってるの?



「今言わねぇとお前がアイツに取られんだったら、俺多分すっげぇ後悔すると思うから、」


なに…?

何、なに……



「あの罰ゲームの時から、お前ってやっぱり俺の中で特別だったんだと思う」

「こ…幸多…?」


「落とすとか言って……落ちてんの、俺だしな」

「え…?」


異常に緊張して来たっ。
幸多から目が離せない…。



「那生、」

「…は、…はい…」



「好きだ」



心臓、止まるってば………


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