ルピナスは恋を知る

葉月庵

文字の大きさ
217 / 318

217話 ウィル視点

しおりを挟む
「ウィル、アイツには気をつけろ。何故かまでは分からんが、実力を隠している。」

「任せてくださいっす。できる限り探りを入れてくるっすから。」

そうガルムさんに宣言しちゃったっすから、何とかしないとっすね。

俺は会場の決められた立ち位置に立ち、相手と相対する。

相手は……、片手剣っすか。対してこっちは双剣。さぁ、どう出てくるっすか……?

「始め!」

ローランさんの声が響き、試合が始まる。相手の動きを見ようと身構えるも、中々相手も動かない。

仕方ない……。気は進まないっすけど、こっちから仕掛けるとするっすか。

一先ず直球に真っすぐ距離を詰め、剣を重ね、体重を乗せて打ち込む。 

「フッ……!」

ガンッ!と音を立てて剣で受け止められる。ガルムさん相手なら、確実にやられるくらいの隙を見せてやる。

わざわざ隙を見せたんすから、何かしてきて欲しいんすけど……。来たっ……!

剣を振り払われ、距離を取らされる。そして、追撃するように剣を何回か撃ち込まれるが、それら全てをいなしていく。

ん……?何か、軽い……?

まぁ、確かに同じ片手剣使いのガルムさんと比べてはいけないとは思うが、それにしても、どこか軽い気がする。少し、カマをかけてみるっすか。

俺は鍔迫りをしながら問いかける。

「ライさん、少し手を抜いているんじゃないっすか?剣が軽いっすよ?」

「まさか。あのガルムさんと同じパーティーの方なんですから、手なんか抜きませんよ。」

ふーん、あくまで白を切るつもりっすか。なら、こっちから暴くまでっす。

もう一度距離を取ってから、一気に腰を落とし、姿勢を低くする。

これなら、どうっすか……!

今度は先程よりも素早く動き、一度足元を狙ってから相手の背後に回る。そしてそこから連撃を繰り出していく。それを一つ一つ剣で受け流したり、身のこなしでかわしていく。

その身のこなし……。へぇー、そういうことっすか……。

「ライさん。あんた、アサシン、殺し屋出身っすね?」

その瞬間、相手の目が鋭く光る。

っ……!殺気……!

ガンッ……!

急に背後から殺気を感じ、急いで背中側に剣を回すと、間一髪の所で剣の峰で一撃を防ぐ。

「その反応、図星っすね?」

「ちっ……!」

ザンッと横一文字に振り払われ、一旦距離を取らされる。

本当の実力が分からない以上、手を抜いてくれているうちに早めにやったほうが良いっすね……。これを使うのは躊躇われるっすけど、そんなこと言っている場合じゃ無さそうっすね。

俺は新たに2本剣を取り出し、4本まとめて相手に目掛けてブーメランのように投げつける。放った剣はそれぞれ90度近くの角度をつけて首元へと飛んでいく。

4方向からの同時斬撃。これは流石にガルムさんでも対応を苦戦する唯一の技。さぁ、どう対応するっすか!

俺はライさんに接近し、剣が首に当たる直前に4本束ねて勢いそのままに振り切る。

ザンッ……!!

「そこまでじゃ。」

「なっ……!?」

俺の瞬間で出せる最高火力の斬撃は首を捕らえる直前で何か見えない力で止められていた。

パッと距離をとり、周囲を見るとさっきまでハル君やアルトさんの近くで観戦していたアッシュさんがローランさんの隣にいた。

「と、父さん……!?」

「これをいなせんとは、ローランもまだまだじゃな。」

なるほど……、今のはアッシュさんの魔法か。相変わらず、魔法に関しては無法者っすね……。

「勝負は決した。ウィルの勝利じゃな。おめでとう。ますます腕をあげたのぅ。」

「いやー、アレを防がれちゃ、少し凹むっす……。」

「フォッフォッ、まだまだ上を目指せるってことじゃ。良いことじゃよ。」

うっ……、まぁ、自分でもこれはまだ工夫ができると思ってたとこっすけど……。研鑽を積むしかないっすね……。

会場から離れる時、自然とライさんと同じ方向になる。やはり、アサシンってことがバレたせいか視線が鋭い。

「安心してくださいっす。あの事はガルムさんやアルトさん以外には話さないっすから。」

「……お願いしますよ。」

「でも、これだけは言っとくっす。手を抜いていたことと言い、何を企んでいるのかは知らないっすけど、ガルムさん達の幸せを壊すようなことをするのなら、あんたの幸せも壊す。」

「……。」

それだけ言って俺は自分の中の黒い部分をしまい込んでガルムさん達の元へと向かう。

あんな感情のまま、純粋なハル君とは話せないっすから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

三日天下の聖女です!

あんど もあ
ファンタジー
平凡なアルファパレス好き女子高生の私は、いきなり異世界に聖女として召喚されてしまった。でも、明後日に瘴気を浄化する神事をやってくれたら元の場所・時間に戻してくれると言うのでちょっと安心。なら三日間、立派な聖女になりましょう! ……でも、私が邪魔な人がいるようで……。

【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ
BL
 この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。 14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。  それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。  ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。  使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。  ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。  本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。  コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

処理中です...