ルピナスは恋を知る

葉月庵

文字の大きさ
223 / 318

223話

しおりを挟む
救護室に入ると何やら話し声が聞こえてくる。会話の内容までは分からなかったが、段々近づいていくにつれて、声の主がレオさんとオズさんであることに気がつく。

「じゃあ、僕はオズさんの分の昼食を持ってきますね。」

「いや、いいですよ。これくらい、本当に何でもないですから。しかも、こうなってしまったのは避けられなかった私の未熟さゆえですから。」

「邪魔するぞ。」

私はいつ入るのか、ガルムさんとアルトさんにタイミングを任せていると、ガルムさんが先に入っていった。

「あれ、ガルム?それにアルトさんやハル君、カズラさん達まで……!一体どうしたんだい?」

「何、ハルがオズに直接、昼食を渡したいそうでな。ここにいるとギルから教えてもらってきたんだ。」

「おっと……、レオさんではなく私に用でしたか。昼食でしたか?では、ありがたくいただきましょう。」

「は、はい……!どうぞ……!お口に合えばいいのですが……。」

「なんと……!ハルさんの手作りでしたか……!これは、大切に食べないといけませんね。」

良かった……。オズさんも受け取ってくれた……。

「良かったら、私のもどうぞ。」

「ライの奥さんですね?わざわざありがとうございます。」

オズさんは手当を受けたであろう左をかばうように、カズラさんのものも受け取った。

地面をも砕くレオさんの矢を、剣を挟んだとはいえ、直撃したのだから怪我をしたのは分かるけど、どのくらいなのだろう……?

「あの、怪我の具合はどうなんですか?」

「あぁ、心配なさらないで大丈夫ですよ。ただの骨折ですから。きちんとケアをして、しばらく安静にすれば治りますよ。」

「骨折って、全然大丈夫じゃないじゃないですか……!ということは、今日の試合は……。」

「団長には出ない方がいいと言われてしまいました。ですが、ガルムさんやアルトさんと戦う機会なんてそうないですから、無理にでも出るつもりです。」

そんな……。あっ!だったら、私の血を飲んでもらえばいいんじゃないかな!この体質のことがバレてしまうかもだけど……でも、オズさんのことを治したい……!人の役に立ちたい……!

「ハル、何か変なことを考えていないかい?」

「えっ……?そ、そんなことは……ない、です、よ……?」

「バレバレだぞ?言っておくが、ダメだからな?」

「そ、そんな……!が、ガルムさん……!」

私は一縷の望みにすがってガルムさんの顔を見上げる。

「うっ……。そ、そんな顔しても、アルトの言う通りダメなものはダメだ。」

やっぱり……。だったら、レオさんは……!

「こうなってしまった元凶を作った者としては、どうも言えないかな……。ごめんね。」

この場にいるカズラさんとライさんにはこの体質のことは知らないから、頼り様がないし……。

「カズラ、なんだか事情がありそうだし、俺たちは先に戻ろうか。」

「そうかな……?まぁ、ライが言うならそうなのかもね。じゃあ、ガルムさん達、お先に戻りますね。」

「あぁ、なんだかすまないな。」

そう言ってカズラさん達は気を利かせて先に戻ってくれた。これなら、込み入ったことも話せそうだ。

「お願いです、ガルムさん、アルトさん。私も皆さんのお役に立ちたいんです……!」

「そうは言ってもな……。」

うぅ……、やっぱり渋るよね……。

「では、どうしたら許してくれますか……?」

「……そうきたか。ガルム、どうする?」

「ふむ……。あまり許したくはないが……。じゃあ、今度一日、デートに付き合ってくれる引き換えにどうだ?」

「まぁ、それならいいか……。」

やった……!でも、一日デートに付き合うだけでいいのかな……?

「ただし、無理をしないこと。いいかい?」

「はい……!」

こうしてガルムさんとアルトさんからの許しを得てオズさんを治療できることになった。ただ、目の前で血を出すのはオズさんにこの体質のことを誤魔化せないため、ガルムさんとアルトさんの3人しかいない部屋で血を用意することになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

三日天下の聖女です!

あんど もあ
ファンタジー
平凡なアルファパレス好き女子高生の私は、いきなり異世界に聖女として召喚されてしまった。でも、明後日に瘴気を浄化する神事をやってくれたら元の場所・時間に戻してくれると言うのでちょっと安心。なら三日間、立派な聖女になりましょう! ……でも、私が邪魔な人がいるようで……。

【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ
BL
 この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。 14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。  それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。  ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。  使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。  ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。  本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。  コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

処理中です...