ルピナスは恋を知る

葉月庵

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224話

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私達は、レオさんとオズさんに一言入れてから別室に移動してきた。

「はぁ……、あまり気は進まないが、事を済ませてしまおうか。ハル、骨折はどれ程の血があれば治せるんだい?」

「えっと……、多分コップ一杯もあれば大丈夫だと思います。」

「そうか。じゃあ、俺はコップを一つもらってこよう。少し待っていてくれるかい?」

アルトさんはそう言ってコップを取りに行ってくれたので、私はガルムさんと一緒に待つことになった。私がキョロキョロと周りを見ていると、ガルムさんはそこにある椅子に腰掛け、私を膝の上にのせて後ろから抱きしめてきた。

「ガルムさん……?」

「……ハル、これは持てるか?」

そう言ってガルムさんが取り出したのは、短剣だった。私はガルムさんの手からその短剣を受け取ると、ズシリと重みが手にかかる。

「持てました。ですが、これは……?」

「これは、俺が討伐の依頼時に装備する短剣だ。そんじょそこらの剣よりも斬れ味が優れているものだ。コレを使えば綺麗に切れるから、痛みを最小限にできるはずだ。」

「そんな良いものに私の血なんかつけられませんよ……!」

「いや、ダメだ。これ以外は認めない。それに、血ですぐダメになってしまうような、そんなやわな剣じゃない。」

「……分かりました。」

ただでさえ、我儘を聞いてもらっているのに、これ以上はいけないため渋々従うことにした。その時、コップと布巾を手にアルトさんが戻ってきた。

「ん?それは……、ガルムの剣か?確かに、その剣が今ある中では最善だろうな。ほら、ガルム。ハルのためにコップを持ってくれ。」

「あぁ、分かった。」

ガルムさんは、私が剣を持っていない方の手の下にコップを持ってくる。それを見届けた私は短剣を自分の手に構えると、ギュッと私を抱きしめているガルムさんの腕に力が入る。

ん?どうしたんだろう……?

後ろを振り向いてガルムさんの方を見ると、耳がペショッと垂れていた。今度はアルトさんに視線を移すと、耳には変化はなかったが尻尾がゆらりゆらりと不安げに揺れていた。

ふふっ、お二人ともそんなに不安がることないのに。

「お二人とも、私は大丈夫ですよ。手を刺して感じる痛みなんて、何ともないですから。」

「俺達としては、痛みに慣れることはしてほしくないんだがな……。」

「そう、ですね……。で、では、刺しますね。」

私はそう言ってサクッと自分の手に刃を突き立てた。手に刺したガルムさんの剣は、言っていた通り切れ味が良くアッサリと手の平を貫通した。ただ、予想外なことに綺麗に切れすぎて血があまり出ることはなかった。

うーん……。これじゃあ時間がかかって、お二人の心労が大変なことになってしまう……。そうだ!これなら絶対にすぐ終わる!

私は一度剣を抜き、刃を手首に向け一気に振り落とした。

せーのっ……!

「「っ……!?」」

「っと……。」

危ない、危ない。危うく落としてしまうところだった。地面についたものをオズさんに飲ませるわけにいかないからね。

私は振り下ろした剣を持った方の手首で切り落とした手を受け取る。そして、ガルムさんの持つコップへと乗せる。

よし、後は魔法で血を抽出するだけ……。圧縮するようにすれば、確か血液の塊になったはず。

私はテルさんに監禁された時の記憶を辿った。あの時は、魔法なんて知らなかったからよく分からなかったが、今なら分かる。あれは魔法で圧縮させていた。

私はコップに乗せた切り落とした手に魔法を使おうと意識を集中させる。

「ハル……何を、したんだ……?」

「……?えっと、血があまり出なかったので、それなら手首を切り落とせばいいかなと……。」

「それを許すと思ったのかい……?」

「えっ……?」

あれ……?お二人とも、怒っている……?な、なんで……?痛いのはすぐ終わらせた方が良いと思ったのに。もしかして、手がないから?な、なら……!

「み、見ててください。……ほ、ほら……!手は元通りですよ……!」

私は切り落とした手に向かって魔法を使い血液にしてから、欠損した手首に意識を集中させ、手を元に戻して見せた。これもテルさんに監禁されていた時に知ったのだ。欠損した部分を治すには切断面どうしをくっつけるか、今したようにするかの二択だと。だが、そうして治して見せてもお二人の顔は陰ったままだった。
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