ルピナスは恋を知る

葉月庵

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293話

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「へぇー。つまり、恋をしたってことね。うん、良いことだ。アルトが幸せそうで、私も安心したよ。」

そう言ってドレットさんは、コトリと一口飲んだカップを置いた。

やっぱり、こうして私とのなり初めを聞くのは小っ恥ずかしいな……。

私はその恥ずかしさを隠すようにドライフルーツへと手を伸ばす。寝る前に食べ物を食べる罪悪感からか、少し小さめのものを選んだ。

「まぁな。ハルのおかげで今も楽しく生きられている。それより、兄さんこそ良い人はいないのか?」

「良い人、ね……。そういう人がいたら良かったんだけど……。」

「ん?てっきりハーレムの一人や二人、いるものだと思ったんだが、違うのか?」

そうガルムさんに問われたドレットさんは、あははと笑ってから口を開いた。私もその話には興味を引かれたため、先程手に取ったイチゴを口に運びながら耳を傾ける。

「ハーレムは以前は親に言われた通りの人選だったからね。両親から離れるにあたり、別れたのさ。それは相手方にも納得してもらったよ。」

「今は作ろうとしないのか?そろそろ時間的にも余裕が出てきたんじゃないか?」

「私も作ろうとしたさ。ただそれが、地位のために私と繋がりを持とうとする人ばかりでね。なんだかな……って感じなんだ。」

そっか……。地位のある人ならではの悩みもあるんだな……。

「ふむ……、俺もそれについては似たような口だから、何も言えんな……。ガルムはどうなんだ?ハルに出会う前の色恋の話は。確か、王女に気に入られていただろう?」

「俺か?まぁ、話してもいいが……。」

すると、チラリと私の顔をうかがってきた。おそらく、私と出会う前の話をして嫌な思いをするかもしれないと、気を遣ってくれたのだろう。

「私も聞いてみたいです……!もちろん、ガルムさんが良ければ、ですが……。」

「フッ、分かった。でも、大した内容はないからな?あまり期待はしないで聞いてくれ。」

ガルムさんはそこでお茶を一口飲んでから、口を開く。私も何が聞けるのかとなんだか楽しみになってきていた。

「まず始めに言っておくが、俺はハルと出会うまで恋人など一度もいた事はなかった。」

「そうなんですか……?ガルムさん、モテるから、てっきりいたのかと思いました。」

「いや、狼獣人は生涯を共にするときめた決めた人としか恋仲にはならないことが多いからな。例に漏れず俺もそうだった、というわけだ。」

そういうものなんだ……。度々狼獣人は一途であるとは話に聞いていたけれど……。でも、それをどこかで喜んでいる自分がいる。

「さて、王女についてだが……。俺も何故かは知らないが、いつの間にか好かれていた。正直眼中になかったから、適当にあしらっていたのだが、ハルに出会って自分の中の気持ちに気づいてからは早々にケリをつけた。ハルに勘違いされては困ると思ってな。」

「た、確かに……。以前はてっきりガルムさんと王女様は相思相愛なのだと思っていました……。」

「ふむ……、ガルムも色々あったってことは分かったよ。ありがとう。さて、どうしたものかな……。」

「まぁ、地道に探すしかないんじゃないか……?」

「そうだよね……。私も運命的な出会いをしてみたいものだよ。」
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