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1章 訣別
04-2. 帰郷
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「おかえり!」
王都から帰った私たちを出迎えてくれたのはフォートレル辺境伯家の兄弟だった。
フォートレル辺境伯家はオリオール家の初代当主であり、魔獣のスタンピードに結界を張って人を助けた聖女の兄が興した家だ。
長男のセザールはお兄様より二歳年上、弟のクロヴィスはお兄様と同い年だ。
セザールの方は隣の領地であり王国の東端に位置するマンティアルグ辺境伯家のフェリシテと婚約中だ。
同じ辺境に位置する二つの辺境伯家とオリオール伯爵家は交流が多く、子供たちは全員が生まれた時から付き合いのある幼馴染の関係だ。
フェリシテはセザールより一歳年下で、鮮やかな紅い髪と翡翠のような緑の瞳を持つ、華やかな雰囲気の美人だ。
だから黙っていればとてもモテる。
黙ってないけど。
自ら剣を振り魔法を放つフェリシテは、腕の立つ魔法剣士だ。辺境は嫋(たお)やかなだけではいられない。女でも自力で身を守れるのが普通なのだ。
ましてフェリシテは辺境伯の娘だから領民を守る義務もある。自ら剣を持つのは当たり前のことだった。
しかし辺境の常識は中央の非常識。
最初の頃、フェリシテの美貌に釣られて寄ってきた男子生徒はみんな直ぐに消えたらしい。
その頃のセザールは女性も逞しいのが当たり前だと思っていたのに、学園の女子生徒は男に支えられなければ生きていけない弱い生き物だとしって愕然としていた。
そして二人は思ったのだ。
辺境で生活できる伴侶を見つけたら、即確保しなくてはならないと。
結果、二人は婚約したのだと、全然甘くない顔でおしえてもらった。
婚約した後の二人は甘々だけど。
フォートレル家のもう一人、弟のクロヴィスは甘く蕩けている兄をしり目に、淡々と学園で学び卒業した。領地に帰ってからは、領主家の一人として忙しくしていて女っ気が無い。
「今日はマリエに贈り物があるんだ」
セザールが微笑んで私に告げる。隣には色素が薄く驚くほど美人の女性がいる。
「えっと……私、人の贈り物はちょっと」
一体、どこから持ってきたのだろう?
返してきてと思わず言いそうになった。
「人ではなく家庭教師だよ」
セザールが声を上げて笑う。
「マリエは学校を中退したから勉強が途中だろう? それで家庭教師になりそうな人を連れてきた。彼女は隣国の辺境伯の姪なんだ。とても頭が良くてね、僕と同い年とは思えないくらい聡明だ。きっと良い先生になると思うよ」
良かった。人身売買的な贈り物ではなくて、本当に良かった。
王都から帰った私たちを出迎えてくれたのはフォートレル辺境伯家の兄弟だった。
フォートレル辺境伯家はオリオール家の初代当主であり、魔獣のスタンピードに結界を張って人を助けた聖女の兄が興した家だ。
長男のセザールはお兄様より二歳年上、弟のクロヴィスはお兄様と同い年だ。
セザールの方は隣の領地であり王国の東端に位置するマンティアルグ辺境伯家のフェリシテと婚約中だ。
同じ辺境に位置する二つの辺境伯家とオリオール伯爵家は交流が多く、子供たちは全員が生まれた時から付き合いのある幼馴染の関係だ。
フェリシテはセザールより一歳年下で、鮮やかな紅い髪と翡翠のような緑の瞳を持つ、華やかな雰囲気の美人だ。
だから黙っていればとてもモテる。
黙ってないけど。
自ら剣を振り魔法を放つフェリシテは、腕の立つ魔法剣士だ。辺境は嫋(たお)やかなだけではいられない。女でも自力で身を守れるのが普通なのだ。
ましてフェリシテは辺境伯の娘だから領民を守る義務もある。自ら剣を持つのは当たり前のことだった。
しかし辺境の常識は中央の非常識。
最初の頃、フェリシテの美貌に釣られて寄ってきた男子生徒はみんな直ぐに消えたらしい。
その頃のセザールは女性も逞しいのが当たり前だと思っていたのに、学園の女子生徒は男に支えられなければ生きていけない弱い生き物だとしって愕然としていた。
そして二人は思ったのだ。
辺境で生活できる伴侶を見つけたら、即確保しなくてはならないと。
結果、二人は婚約したのだと、全然甘くない顔でおしえてもらった。
婚約した後の二人は甘々だけど。
フォートレル家のもう一人、弟のクロヴィスは甘く蕩けている兄をしり目に、淡々と学園で学び卒業した。領地に帰ってからは、領主家の一人として忙しくしていて女っ気が無い。
「今日はマリエに贈り物があるんだ」
セザールが微笑んで私に告げる。隣には色素が薄く驚くほど美人の女性がいる。
「えっと……私、人の贈り物はちょっと」
一体、どこから持ってきたのだろう?
返してきてと思わず言いそうになった。
「人ではなく家庭教師だよ」
セザールが声を上げて笑う。
「マリエは学校を中退したから勉強が途中だろう? それで家庭教師になりそうな人を連れてきた。彼女は隣国の辺境伯の姪なんだ。とても頭が良くてね、僕と同い年とは思えないくらい聡明だ。きっと良い先生になると思うよ」
良かった。人身売買的な贈り物ではなくて、本当に良かった。
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