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1章 訣別
13-1. カミラの行く末
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カミラ視点です
______________________________
――どうして?
どうして、私がこんな目に遭わなくてはいけないの!
目を覚ましたのは、どことも知れぬ場所だった。
平民の家、というのは身窄らしさから一目で判った。
私がいる場所ではないのは誰の目からも明らかで、でも居るべき場所も、行き先もわからず、どうしたら良いのか目覚めた場所から動けず途方にくれた。
――私は。
王太子殿下が国王陛下の使者となって南の辺境に向かったのは半月以上前。オリオール伯爵家との婚約を結び直すための訪問だった。
でもけんもほろろに追い返され、そして……。
いくつもの火柱が上がって森が燃え、魔獣が暴走したのだ。
騒動の最中でジョルジュとはぐれ、私は……。
気づいたら粗末な村人の家らしい小屋の中で寝ていた。今いる場所だ。
溜息しか出ない。
元々、自分が希望した旅ではなかったのに、こんな目に遭ったのだから。
あの時――国王陛下からイレネー様とのやり直しを提案されても、今更という気持ちしかなかった。婚約が破棄された後、私に瑕疵はつかなかった。むしろ辺境の野蛮人との婚約がなくなって良かったと、周囲から祝福されてたくらいだ。新たな結婚相手として、何人かの殿方を紹介されたけど、これといって良いと思った方はいなかった。
だってお父様と同じような人たち――殊の外、男尊女卑が酷く、女は劣った存在だと公言してはばからない、尊大で嫌な人たちばかりだった。送られてきた釣り書きはバルト辺境伯家と所縁ある家門の出身者ばかりだったのだから、当然の結果だ。
お父様はいつも、良い家と縁づく以外に私の価値はない、と言い続けていた。南の辺境の価値が相対的に下がっていたあの頃、だから私が婚約破棄されても、何も言わなかった。周囲からも縁がなくなって良かったと言われこそすれ、後ろ指をさされなかったのも、お父様の勘気に触れなかった理由だろう。
とはいえ私はイレネー様に心を残していたし、切り捨てるように突き放されて、少なからず傷ついた。
――だからもう二度とお会いしたくなかった。
だって会ってしまえば、あのときの気持ちを思い出してしまうから。
身を引き裂かれそうなほどのつらい気持ち。
今となってはもう感傷でしかない。
既に過去のことであり、もう情は残っていないから。だけどあの時の感情だけが私の中に残っているのだ。
――お断りしたかったわ。
でもできなかった。王命だから。
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――どうして?
どうして、私がこんな目に遭わなくてはいけないの!
目を覚ましたのは、どことも知れぬ場所だった。
平民の家、というのは身窄らしさから一目で判った。
私がいる場所ではないのは誰の目からも明らかで、でも居るべき場所も、行き先もわからず、どうしたら良いのか目覚めた場所から動けず途方にくれた。
――私は。
王太子殿下が国王陛下の使者となって南の辺境に向かったのは半月以上前。オリオール伯爵家との婚約を結び直すための訪問だった。
でもけんもほろろに追い返され、そして……。
いくつもの火柱が上がって森が燃え、魔獣が暴走したのだ。
騒動の最中でジョルジュとはぐれ、私は……。
気づいたら粗末な村人の家らしい小屋の中で寝ていた。今いる場所だ。
溜息しか出ない。
元々、自分が希望した旅ではなかったのに、こんな目に遭ったのだから。
あの時――国王陛下からイレネー様とのやり直しを提案されても、今更という気持ちしかなかった。婚約が破棄された後、私に瑕疵はつかなかった。むしろ辺境の野蛮人との婚約がなくなって良かったと、周囲から祝福されてたくらいだ。新たな結婚相手として、何人かの殿方を紹介されたけど、これといって良いと思った方はいなかった。
だってお父様と同じような人たち――殊の外、男尊女卑が酷く、女は劣った存在だと公言してはばからない、尊大で嫌な人たちばかりだった。送られてきた釣り書きはバルト辺境伯家と所縁ある家門の出身者ばかりだったのだから、当然の結果だ。
お父様はいつも、良い家と縁づく以外に私の価値はない、と言い続けていた。南の辺境の価値が相対的に下がっていたあの頃、だから私が婚約破棄されても、何も言わなかった。周囲からも縁がなくなって良かったと言われこそすれ、後ろ指をさされなかったのも、お父様の勘気に触れなかった理由だろう。
とはいえ私はイレネー様に心を残していたし、切り捨てるように突き放されて、少なからず傷ついた。
――だからもう二度とお会いしたくなかった。
だって会ってしまえば、あのときの気持ちを思い出してしまうから。
身を引き裂かれそうなほどのつらい気持ち。
今となってはもう感傷でしかない。
既に過去のことであり、もう情は残っていないから。だけどあの時の感情だけが私の中に残っているのだ。
――お断りしたかったわ。
でもできなかった。王命だから。
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