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終幕後02 伯爵夫人ブリトニーの流儀
08. 義姉と実兄の力関係 1
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「お義姉さま、お久しぶり」
実家に立ち寄ったブリトニーは二か月ぶりに義姉であるセリーンに会う。
「今、紅玉を流行らせているみたいね」
「ええ、そうなの。全員が翠玉ばかりなんてつまらないもの。流行を押さえつつも好きな石を身にまとえるようにしたいと思わない?」
「同感ね。流行の石だけなんて本当に嫌。石に罪はないとはいえ、好きでもなければ似合うものでもないのに、身に着けないといけない風潮なんて滅んでしまえば良いのに。義務の装いなんて本当につまらないわ」
ブリトニーや妹のティナ同様、義姉もまた身分相応の装いのために、好きでもない宝飾品を身に着けることに苦痛を感じる性質だ。
セリーンは翠玉の前に流行っていた青玉が好きだ。
しかし流行が去って身に着けづらい雰囲気になったことを、流行が変わって二年経った今でも腹を立てたままだ。
「流行以外は駄目という風潮を打破するために、お義姉さまにも協力していただきたいの」
「それは是非、話を聞かせていただきたいわ」
ブリトニーは微笑みながら提案し、セリーンが乗る。
「流行ではない石を身に着けることを提案したいの。まずは普段使いの宝飾から」
そう言って一つの箱を差し出した。
セリーンが開ければ、紅玉と青玉を使った耳飾りが出てくる。ブリトニーを思わせる紅い石とティナを思わせる薄紅、そしてセリーンの好む矢車草の青い石の三石を使っている。石だけではなく、形も二人のものとは違い、青玉を大きく目立たせたものになっている。
「私やティナとお揃いよりも、お好きな石が主役の方が良いと思って」
「ブリトニーの言う通りよ。私はこちらの方が好きだわ」
義妹二人の耳飾りを知っているセリーンは即答する。
早速身につけさせてもらうわねと断りを入れた後、嬉しそうに耳に飾った。
「石や雰囲気もだけれど、これなら流行が紅玉に変わっても使えるところが良いわ」
「ええ、きっとお義姉さまはそう言うと思ったの」
「流石だわ。すっかり一流の商人になったわね、ブリトニー。欲しくても手に入らないものを用意できるなんて。流行の終わった青玉を扱った新しい宝飾品なんて皆無だし、この意匠なら長く使えそうね。とても嬉しいわ」
同じ物ばかり身に着けていては、それしかもっていないのかと侮られるというのは王都の話であり、地方では普段使いのお気に入りを大切に使う貴族も多いのだ。貴族とはいえ地方に住む者は割と倹約生活を送っていることも多い。
「こうやって他の石を合わせることで、青玉も使えるのね……。次の指輪はほどほどの大きさの石と小さめの石を使ったものにしようかしら。色の濃い翠玉と青玉を押さえておいてくれると嬉しいわ」
「判ったわ。他に欲しい石があれば、できるだけ希望のものを探しておくけれど」
「そうね……だったらブリトニー好みの紅をお願いするわ。次の流行を自分の手で作り出したいのでしょう」
「ありがとうお義姉さま!」
セリーンのさり気ない心遣いに、感謝を口にした。
血の繋がりはないとはいえ、セリーンはブリトニーやティナと仲が良い。
自分の好きな紅玉を次の流行の主役にしたいブリトニーの気持ちを汲んで、注文を入れたのだった。
セリーンの夫でありブリトニーの兄であるドミニクは、少し渋い顔をするかもしれないが、町の税収に貢献している実妹を邪険にはしないだろう。
実家に立ち寄ったブリトニーは二か月ぶりに義姉であるセリーンに会う。
「今、紅玉を流行らせているみたいね」
「ええ、そうなの。全員が翠玉ばかりなんてつまらないもの。流行を押さえつつも好きな石を身にまとえるようにしたいと思わない?」
「同感ね。流行の石だけなんて本当に嫌。石に罪はないとはいえ、好きでもなければ似合うものでもないのに、身に着けないといけない風潮なんて滅んでしまえば良いのに。義務の装いなんて本当につまらないわ」
ブリトニーや妹のティナ同様、義姉もまた身分相応の装いのために、好きでもない宝飾品を身に着けることに苦痛を感じる性質だ。
セリーンは翠玉の前に流行っていた青玉が好きだ。
しかし流行が去って身に着けづらい雰囲気になったことを、流行が変わって二年経った今でも腹を立てたままだ。
「流行以外は駄目という風潮を打破するために、お義姉さまにも協力していただきたいの」
「それは是非、話を聞かせていただきたいわ」
ブリトニーは微笑みながら提案し、セリーンが乗る。
「流行ではない石を身に着けることを提案したいの。まずは普段使いの宝飾から」
そう言って一つの箱を差し出した。
セリーンが開ければ、紅玉と青玉を使った耳飾りが出てくる。ブリトニーを思わせる紅い石とティナを思わせる薄紅、そしてセリーンの好む矢車草の青い石の三石を使っている。石だけではなく、形も二人のものとは違い、青玉を大きく目立たせたものになっている。
「私やティナとお揃いよりも、お好きな石が主役の方が良いと思って」
「ブリトニーの言う通りよ。私はこちらの方が好きだわ」
義妹二人の耳飾りを知っているセリーンは即答する。
早速身につけさせてもらうわねと断りを入れた後、嬉しそうに耳に飾った。
「石や雰囲気もだけれど、これなら流行が紅玉に変わっても使えるところが良いわ」
「ええ、きっとお義姉さまはそう言うと思ったの」
「流石だわ。すっかり一流の商人になったわね、ブリトニー。欲しくても手に入らないものを用意できるなんて。流行の終わった青玉を扱った新しい宝飾品なんて皆無だし、この意匠なら長く使えそうね。とても嬉しいわ」
同じ物ばかり身に着けていては、それしかもっていないのかと侮られるというのは王都の話であり、地方では普段使いのお気に入りを大切に使う貴族も多いのだ。貴族とはいえ地方に住む者は割と倹約生活を送っていることも多い。
「こうやって他の石を合わせることで、青玉も使えるのね……。次の指輪はほどほどの大きさの石と小さめの石を使ったものにしようかしら。色の濃い翠玉と青玉を押さえておいてくれると嬉しいわ」
「判ったわ。他に欲しい石があれば、できるだけ希望のものを探しておくけれど」
「そうね……だったらブリトニー好みの紅をお願いするわ。次の流行を自分の手で作り出したいのでしょう」
「ありがとうお義姉さま!」
セリーンのさり気ない心遣いに、感謝を口にした。
血の繋がりはないとはいえ、セリーンはブリトニーやティナと仲が良い。
自分の好きな紅玉を次の流行の主役にしたいブリトニーの気持ちを汲んで、注文を入れたのだった。
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