トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

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19章 ※

6

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 恋人の名で呼ぶ相手はただ一人。
 ピラールの面影だけを胸に残し、連合国に追われることがなくなったら──この戦争が終わったら、遠い極東の国など忘れ、愛する人がいる国で穏やかに暮らしていく。
 この先テオバルドに望むことは、それだけだ。志貴から──日本から距離を置くほど、戦後彼の身は安全になる。
 口には出さない思いを伝えるように、再び唇を重ねた。
 それは、さきほどとは異なり、昼間墓地で交わした口づけと同じく静謐なものだった。永遠の眠りに就くテオバルドの両親の前で誓いを立てる誠実さで、志貴は男の唇を吸う。
 どうかこの愛しい男に、これ以上の災いが訪れないように。
 すべて終わった暁には、穏やかな明日が迎えてくれるように。
 かつて彼の両親も抱いたであろう祈りは、幾重にも重なって、彼を包む光になるだろうか。
 名残惜しげに、二人の唇が離れる。
 炯る目で熱く志貴を見つめ、テオバルドが囁いた。

「可愛がってくれ、あんたの恋人を」
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