后狩り

音羽夏生

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戴冠 ※

23

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 シェルは何も言えず、ただ皇帝を見つめた。
 お慕いしているからこそ、お側にはいられない──それは最早ただの言い訳だった。
 復讐の駒としての価値を失った黒猫など、いずれ関心も薄れ無用になると思っていた。侍従としての年月、後宮での日々に賜った厚情を踏み躙る忘恩の徒と蔑まれることを覚悟した。
 しかし参列を辞退することもできる状況で、皇帝はミレニオに現れた。
 二つで一つのメダルの片割れを、手ずからシェルの首に戻すために。
 そんなことをさせてしまうほど深く、傷つけていた。
 誰からも遠巻きにされ孤独の中にいた子供に、手を差し伸べてくれた。諦念という暗闇で窒息しかけていた出仕の日々に、新しい空気を吸わせてくれた。
 初めて恋をした、唯一無二の大切な御方を。

「余には、愛らしいがなかなか懐かず、頑固な黒猫がいる。その上、メダルに箝口布を巻いて求愛を封じ逃げるなど、小癪なのだ。もう七年も振り回されるばかりでな。──他に心を許すなど無縁と思い生きてきたというのに、我ながら無様なことだが」

 長い出仕の日々に磨かれた自制心が、こぼれ落ちそうな感情を顔から消し去っていると信じたい。
 押し黙るばかりのシェルの様子に、何かを得たように皇帝は態度を和らげた。
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