后狩り

音羽夏生

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初夜 ※

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 侍従として勤めた五年間、シェルに対する皇太子の態度は定まらなかった。基本的に朗らかで、時に兄のようにあたたかく、師のように真摯でありながら、突如壁を作られ、冷たい眼差しを投げられ、残酷で惨めな仕打ちを受けることもしばしばあった。
 再会してからの皇帝の声の温度、言葉の柔らかさに、勘違いをしてはいけない。寵姫を可愛がるような手つきも、睦言にも聞こえる囁きも、何らかの計画の一部と考えた方がいい。
 シェルは皇帝にとって、侍童の頃から知る馴染みである前に、仇敵の息子。
 即位して一年。自身の足場を固めつつある今、先帝の喪が明ける半年後に戴冠式を控え、本格的に目障りな者を排除しようと考えるのは自然なことだ。適当な罪を着せて処断するのが一番手っ取り早いが、シェルの体に流れるミレニオ王家の血が、それを阻んでいるのだろう。

(どんなことがあろうとも、耐えて、後宮を出ることをお許しいただかなければ)

 悲壮な決意を胸に、膝の上で拳を握る。
 この一週間、外界から完全に遮断され、外の様子がまるでわからない。娘ではなく息子を狩られた家は、今どうなっているのか。クリスティーナは傷ついていないか。
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