后狩り

音羽夏生

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黒猫

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 馬車で移動すると聞かされ、全身に響くことを覚悟したが、厚みのあるクッションで寝椅子のように設えられた座席に横たわり、またかなりゆっくり進んでいるためか、さほど苦に感じない。ゆったりと身を預け、よく手入れされた庭園の眺めを楽しむ余裕すらある。
 心地よい夏の風に前髪を遊ばれながら、木陰の下を馬車は軽やかに庭園を進んだ。
 やがて木々の連なりが途切れ、開けた前方に日を受けてきらめく水面が見えてくる。目的地の湖に着いたのだ。
 半ば抱かれるように馬車を下り、促されるまま桟橋に進めば、これまたクッションの敷き詰められた小舟が係留されている。
 皇帝のお手には、いつのまにかピクニック用の手籠が握られている。シェルが持とうとすると、すっと遠ざけられた。湖畔の四阿で寛がれるのかと思ったが、今日は舟遊びを楽しむ趣向らしい。

「シェルが船を苦手としていることは知っている。だが、波も流れもない湖での遊覧なら、酔いはしないだろう。いつか俺の船に乗せてやりたいと、ずっと思っていた。──ペンダントは、乗船手形だ。裏の模様が合うもう一つの持ち主は、お前が望めばいつでも船を出すだろう」

 そう言いながら襟元から引き出されたものに、シェルは目を見張った。シェルの胸を飾るものと殆ど同じ──瑠璃の模様が帝冠の、お揃いのペンダントである。
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