后狩り

音羽夏生

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黒猫

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 思いもよらぬことに、ついまじまじとお顔を見上げると、皇帝は少々バツが悪そうに、くり抜いたメダルの一部を指先で擦った。

「ウルリカに種明かしをされたのは業腹だが……こうしてシェルに渡すために参加し、メダルを獲った。帝国一の漕ぎ手の船なら、安心して乗れるだろうと」
「陛下……」
「あの馬車も、バネを特注して揺れをより吸収するように改良したものだ。何度も試作させたから、乗り心地は悪くないと思うが。離宮までの皇帝専用車は大型だから、改造が間に合わず可哀相なことをした。……ミレニオから戻った時、強行軍でしばらく寝込んだのだろう」

 お言葉に、シェルは今更気がついた。
 后狩りの知らせを受け、馬車の長旅に青息吐息で帝都に戻った翌日、皇帝は軍港の視察に出立された。お戻りになるまでの一週間、シェルはゆっくり休養し、再会を喜ぶクリスティーナと兄妹水入らずのひとときを過ごしながら、后狩りに備えることができた。
 本来、軍港の視察は初夏の行事のため、今年は即位の関係で早まったのかと思っていたが、──おそらくシェルのためだ。皇帝が帝都を離れることを広く布告する行事は、軍港の視察と外遊のみだからである。
 胸元に光るペンダントが、自惚れの妄想ではないと告げている。一年前からこれほどの贈り物を準備され、馬車も歩幅もシェルに合わせて調えてくださる御方ならば。
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