后狩り

音羽夏生

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偽妃 ※

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「ミレニオ王家の──母の血を引く、皇后に相応しい者はただ一人、クリスティーナです。神々の契約婚と皇家の婚姻を同等に見てはならないと、ウルリカ様もおわかりでしょう」

 かつて極北の蛮族だった頃、皇家の祖先は征服した地の王族男子をすべて去勢し、手酷く犯し、完膚無きまでに尊厳を奪ってから鎖に繋ぎ奴隷に堕としていた。見目良い者は、男娼として売られたという。
 神々の契約婚の神話は、こうした古の蛮習を下敷きに形成されたものである。現在と未来を生きる新帝の婚姻の根拠とすべきではない。

「あえてシェル様を皇后に迎え、神話の主神をなぞることで、陛下の権威を強化する意図もあるように思われますが。──Gが待ちかねておられるでしょうから、そろそろ手紙を届けてまいります」

 優雅に一礼してウルリカは退出し、シェルは一人残された。
 ウルリカの過去にざわめく胸の内と、向き合う必要があった。

(自ら選んだ地獄……)

 耳にした時、強く印象に残った言葉。
 思えばあの時から、ウルリカは天誓の名の下に、自らを使い後宮に囚われた状況を打破することを示唆していた。
 男の身で皇后となる地獄と、ご叡慮に背く地獄──同じ地獄なら、自ら選んだ地獄の方が、その結果に納得も諦めもつくものだと。
 ウルリカは確固たる覚悟を持って地獄に身を置き、自らの道を曲げない。妨げる者は容赦なく排除する強さがある。
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