ほのぼの学園百合小説 キタコミ!

水原渉

文字の大きさ
341 / 388

番外編 フォトコンテスト(4)

しおりを挟む
 その後、撮影した写真を奈都を除く3人で適当に分けて応募した。同じような写真をみんなで送ってもしょうがないし、受賞は一人1枚までなので、一人でたくさん送るのももったいない。奈都は結局、人の写真ばかり撮っていたので見送った。
「チサの写真がいっぱい撮れて満足した。また違う区で開催されたら誘ってね」
 そう言いながら、私とのツーショット写真を待ち受けにしていた。微妙に会の趣旨と異なるが、色々な楽しみ方があっていいと思うし、私たちもたくさん写真を撮ってもらって有り難かった。是非また次回も参加してくれたらと思う。
 そして、クリスマスとか修学旅行とか、高校生活でもトップクラスに入る大きな行事を楽しんで、フォトコンテストのこともすっかり忘れていた2月の終わり頃、私のアドレスに1通のメールが届いた。交通局からで、私の写真が入選したので、景品を送る宛先を教えて欲しいとのこと。
 入選したのは、私たちの中でも、選ばれるならこれだろうと思っていた護床工の写真だった。これだけは何パターンか送ったが、私が送ったのは人が入っていないやつだ。正確に言えば、私が送った写真はどれも人が入っていない。3人で同じ人が写っている写真を送るのも印象が良くないと考え、組み合わせを考えた結果、私は人が写っておらず、構図も違う写真を送った。
 メールには発表があるまで他言無用と書かれていた。さすがに仲間には言ってもいいだろうが、翌日念のため様子を見たら、涼夏も絢音も何も言って来なかった。落選したのか、あるいはこの人たちなら、当選していても発表まで黙っているかも知れない。
 言いたくてうずうずするが、どうせ今言ったところで、「そうなんだ。良かった」で終わってしまうので、結果発表があるまで温めておくことにした。
 まだかまだかと待ち続けた3月後半、自宅に一日乗車券が2枚届き、交通局のサイトを確認したら、受賞した21枚の写真と、撮影者や場所の情報が掲載されていた。ほとんどの人がハンドルネームを使用していて、私も動画チャンネルで使っている風乃にしておいた。今はサイト内のお知らせに掲載されているだけだが、やがてはポスターになって各駅に貼り出されるだろうから、本名だと恥ずかしい。
 ちなみに、私の護床工以外に、帰宅部で選ばれた写真はなかった。涼夏も絢音も隠していたわけではなかったようだ。最優秀賞の1枚以外、すべて人が入っていないので、人が入っている写真は求められていなかったのかも知れない。そこにチャンスを見出した私たちだったが、見当外れだったと言える。
 春休み、みんなで集まった機会に、いよいよ賞を獲ったと発表すると、涼夏がすっかり忘れていたと苦笑いして頭を抱えた。
「それ、ひと月も温めてたの?」
 呆れたように奈都が肩をすくめる。言いたかったのは確かだが、やはり他の受賞作が出揃ってからの方が盛り上がる。
 今回の応募は192枚。その内、入選は21作品なので、平均して一人10枚送っていたら、全員が当選した計算になる。もっとも、私たちは一人10枚も送っていないし、涼夏も絢音も落選しているから、実際には応募者はもっと多かったのだろう。
「学生のには引っ掛かりたかったけど、本当に人が入ってる写真は求められてなかった可能性がある。被写体自体には問題なかったはずだ」
 涼夏がそう断言したが、最優秀賞と比較すると、自分たちの写真は芸術点が低い。敢えて写り込んだ風に賑わいを表現してみたが、審査員にはただの写り込みにしか見えなかったかも知れない。
 今回受賞した21点の内訳は、最優秀賞が1人、優秀賞が2人、入賞が7人。そして、募集要項では5人だった区の特別賞が6人と、学生の応募者が選ばれる賞が5人。涼夏が言ったのはこれのことだ。
 ちなみに、掲載順に意味はないかも知れないが、私の写真は入賞7点の内、2番目の掲載でちょっと誇らしい。もちろん、応募したのが私だっただけで、絢音も涼夏も同じ日同じ時刻に、同じ場所から同じ写真を撮っている。みんなで撮り、みんなで選んだ写真だ。
「上位3枚以外は、我々の護床工と同じで、撮っただけ感あるな」
 涼夏がすべての写真をじっくり眺めながら言った。
「最初の分析通りだね。芸術作品より、フォトストックが求められてる」
「方向性は悪くなかった。実際、1枚受賞できた」
「私たちの帰宅部活動が、またこうして一つ、形に残ったのが嬉しい」
 いっそハンドルネームを、ユナ高帰宅部、略してユナキタとかにしても良かったかも知れない。リアルなハンドルネームにしてしまったせいで親に言うのも恥ずかしいし、本当にこの4人で楽しむだけになってしまった。元々そのつもりだったが、いざこうして受賞すると、ちょっと自慢したい気持ちがないでもない。
 受賞した作品の撮影場所を見ると、事前に調べていた農業ファームが2枚、大きな公園で3枚、私たちの護床工も含めて天城川が5枚と、同じ場所が多く並んでいる。過去の開催でも、1、2ヶ所の重複はあったが、ここまでひどくはなかった。いかに天城区が何もないかがわかる。護床工が選ばれるのも納得だが、もちろんあれを撮っていた人は他にもたくさんいただろう。実際、他の受賞作品には、私たちも撮っていた場所も少なくない。
「この鳥居とか、人を入れなければ私たちのが選ばれてた可能性もあるな」
 涼夏が見覚えのある鳥居の写真を拡大しながら言った。私たちもまったく同じ構図で撮っていたので、山道に女子高生を2人入れたのが凶と出たのだろう。人の写っていない写真を4人で分けて送っていたら、受賞作品も増えたかも知れない。
「でもまあ、実際に4人で行ったとは言え、複数人で送るのは微妙にルールの穴を突いてる感じもあるし、帰宅部で1枚だけ受賞したのは良かった気もするね」
 絢音が至極真っ当な意見を言って、私たちもそれに賛同した。その1枚が渾身の護床工だったのも良かったと思う。
 天城区での開催が終わってから半年。まだ次の開催は発表されていないが、半分以上の区が未開催で残っている。こうして結果を残したことでやる気も上がったし、タイミングが合えばまたみんなで参加したい。もらった乗車券もその時に使うことにしよう。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...