その男、幽霊なり

オトバタケ

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再会――その後

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 天国への階段を全速力で昇りながら、触れてくれと言わんばかりに、プルプル震えている己の分身に手を伸ばす。
 後ろは雅臣以外挿れていないが、繋がった日の雅臣を思い返して弄る頻度の増えたソコを掌で包む。
 俺の動きに気付いた雅臣が、その掌の上に一回り大きい掌を重ねてきて、天国へ導くように扱き始めた。

「はっ……あ、あぁっ」

 解放されたい気持ちと、まだこの快感を味わっていたい気持ちで、噴火口を目指すマグマは昇っては押さえられ昇っては押さえられ、と進路を阻まれながらも確実に出口を目指して進んでくる。
 狂ってしまいそうなこの快楽は、決して一人では味わえない。だからって、相手が誰でもいいというわけではない。
 雅臣だから得られる快楽なんだ。体を繋ぎ、そのまま溶け合って一つになりたいと思える、永久に共にいたい愛する相手だから、こんなに気持ちがいいんだ。
 物理的な快感だけではない、心も満たされる至極のセックスにも遂に終わりが見え始める。

「やっ……クッ、イクッ」
「一緒に、天国へ」

 二段飛ばしの全速力で階段を昇るように、抽挿も扱く手の動きも早めた雅臣。
 快感でひくつく内壁が、天国を見たいと雅臣を締め付ける。
 全身の血が集まったように熱くなった中心が、堪らないといった風にブルリと震えると、内部で暴れ狂っていたマグマを噴射させた。

「はぁっ、あぁぁっ!」

 全身を駆け抜けていく強烈な痺れで、頭が真っ白になる。

「くっ……」

 艶やかな吐息を吐いた雅臣が、ガチガチに熟れた己を快感で痙攣する俺の最奥まで突き刺すと、熱いものを吐き出した。
 雅臣の生命の根本となる遺伝子を含むソレを吸収して、雅臣との距離がまた縮まったような気がした。

「拓也、愛しています」
「俺も……」
「俺も、何ですか?」
「あい……愛してるよ! だから、永久に共にいろよっ!」
「えぇ。生きている間は勿論、天に召されても永久に拓也の隣にいます」

 愛してる、とか言うのは恥ずかしくて堪らないが、どうしても伝えたくて、顔が火照ってくるのを感じながらも視線を逸らさずに告げた。
 ぶっきらぼうな言い方になってしまったが、それでも雅臣は嬉しそうに微笑み、永久に共にいることを約束してくれた。
 幸せ過ぎて、これは夢なんじゃないかと疑ってしまいそうだ。

「っ……はぁんっ……」

 ジュボッと淫猥な音を立てて俺の中から出ていく雅臣の生々しい感覚で、これは夢ではなく現実なんだと知らしめられる。

「無理はさせたくないのに、どうして貴方は……」
「な、何だよ。俺が何かしたって言うのか?」

 額に手を当てて盛大に溜め息をつく雅臣を、まだ快楽の余韻が残っていて力の入らない体をシーツに沈めたまま睨み付ける。
 俺が原因で溜め息をついたみたいなことを言っているが、そんな反応をされることをした覚えはない。
 俺と出会う前の記憶を取り戻した雅臣は、数多の女達と関係を持ったことも思い出している。
 詳しくは知らないし知りたくもないが、俺が初めての相手ではないことは最初に繋がった時に聞いた。
 セックスの後に女達がしていたのと全く違う態度をとっているのだろう俺を見て、ロマンチックさの欠片もないと呆れているのだろうか。

「見てください」

 雅臣が、激しい交わりでクシャクシャに皺の寄ったYシャツの裾を捲りあげる。
 細身なのにしっかりと筋肉の付いている腹筋の下には、今さっきまで俺の中に挿っていた雅臣自身が、力を取り戻して天を向きヌラヌラとてかっている。

「え……アンタ、イッたよな?」

 体の奥で感じた火傷しそうな熱は錯覚だったのか、と後ろに意識を集中させると、トロリと液体が動く感触がした。

「以前の僕の坊やには、こんな思春期の少年のような元気はなかったんです。でも、拓也と居ると盛りのついた犬のようになってしまう」
「お、俺は関係ないだろ。俺に会ったのがアンタの発情期とたまたま重なっただけじゃないのか?」

 赤黒い欲棒がじわじわと近付いてきて、放出と共に霧散した熱が再び急上昇していく。

「挿れるのは我慢しますから、もう一度一緒に天国へ行ってくれませんか?」

 色気をだだ漏れにしている雅臣に釘付けになっていたら、いつの間にか俺の分身も半分ほど力を取り戻していた。
 それを見て嬉しそうに頬を弛めた雅臣が、シャンパングラスを合わせるかのように二つの欲棒を擦り合わせる。
 裏筋同士が擦れあって駆け抜けた甘い痺れで、俺のモノも雅臣と同じ状態になっていく。

「だ、誰がっ……一緒に行くって、言った」

 熱を放出しなければ収まらない状態にまで成長してしまっているのに、雅臣の思惑通りの反応をしてしまっている体が悔しくて悪態をつく。

「お願いします。拓也と一緒にイキたい」
「アンタが勝手に盛って俺も道連れにしたんだからな」
「分かっています。責任を取って、ちゃんと天国へ連れていきますから」

 色事の最中だっていうのに、玩具を買って貰えると喜んでいる子供のような無邪気な笑みを浮かべた雅臣は、背後に手を伸ばしてローションの入ったボトルを掴んだ。
 大きな左手で二つの欲棒を擦り合わせながら、右手一本で器用にボトルの蓋を開けて、仲良くくっつく二人の分身の上から中身を垂らしていく。
 ローションの力を借りて軽やかに動くようになった掌で、二本を合わせて扱き始める雅臣。
 掌からの直接的な刺激と、雅臣自身と擦れあう刺激で、俺自身の先端から蜜が溢れ始める。
 ローションと俺の蜜の混ざった淫らな水音に煽られたように、雅臣の掌が扱くスピードも上がる。

「あ、あっ……」

 ビリビリと腰から脳天に駆け抜けていく甘い痺れで、腰が揺れだしてしまう。
 それを見てクスッと笑った雅臣の大人の余裕が憎らしくて、俺も雅臣の掌の上に手を重ねて力一杯扱き始める。
 ニイッと上がっていた雅臣の口角が段々と下がっていき、一直線になった唇から熱い吐息が漏れだした。
 雅臣が感じている姿が俺を興奮させ、体が溶けだしそうなほど熱くなってくる。

「拓也……」
「まさ、おみぃ……」

 荒い息を吐きながら互いの名を呼びあい、熱を高めていく。愛する相手が囁く自分の名前は、どんな魔法の呪文よりも効力があるのか、幸せで心が満たされて益々相手が好きになる。
 じっと見つめる青い瞳は欲情で濡れているが、それだけではなく、愛しくて堪らないという想いがビンビン伝わってくる優しい色も含んでいる。
 雄の性として溜まった廃液を放出するのではない。愛し合っている者同士が相手を気持ちよくしてやりたくてしている行為に、雅臣に出会う前に抱いていた汚ならしいというイメージが消えていく。

「はっ……イキ、そっ……」
「一緒に、イキましょう」

 これ以上は激しくできないという程の掌の動きで、耐えきれずに熱が噴き出す。
 一瞬遅れて雅臣自身からも熱が溢れ、混ざりあった二人分の体液が、二本の欲棒を包んで重なりあっている二人の掌を白く染めていく。
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