先生、教えて。

オトバタケ

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 夫人に教えてもらった浴室に向かい、脱衣所にある洗濯機に尿まみれの服とタオルを入れて回しておく。
 施設で使っているものと同じメーカーのものだったのでスムーズに動かせたことに安堵の息を吐き、アンモニア臭を落とすためにシャワーを浴びる。
 生温い湯をシャーッと顔に掛けていると、先程直人に尿を掛けられた感覚が甦ってきた。
 同時に、直人の逞しいブツが脳裏に鮮明に浮かび上がってきてしまう。

 ムクムクと勃ち上がりはじめた前と、ジクジクと疼きはじめた後ろ。
 慌てていつもオカズにしている男優を思い浮かべて脳内の直人を追い出し、左手で前を扱きながら、右手の中指と薬指を口内に入れて唾液を絡ませて、疼く後ろに挿し込んでいく。
 グチュグチュと掻き回しながら指を進め、辿り着いた快楽のポイントを引っ掻きながら指を抜き挿しして前を扱いていくと、すぐに熱が迫り上がってきた。
 脳内では、いつもの男優が俺を突いている。
 このまま、このまま男優に突かれてイくんだ。

 男優のブツを思い浮かべて高みに昇り詰めようとしていると、一瞬直人のモノが頭を過った。
 駄目だ、と思った瞬間、達してしまった。
 お世話をする子に欲情して、その子をオカズにイくなんて、俺はなんてことをしているんだ……。
 生きることを続けたくなくなるような脱力感に、頭を抱えて踞ってしまう。
 だが、早く直人の元に戻ってお世話をしないといけないことを思い出し、冷水を浴びて浅ましい感情を流していく。

 無理矢理さっぱりさせた体を手早く拭き、浴室に向かう前にリビングから持ってきておいた鞄から服を取り出して着る。
 リビングに戻ると、長いソファーに仲良く並んで座っている国重親子が、あの結婚式のアルバムを眺めていた。

「先程は、すいませんでした」
「いいのよ、こちらこそナオくんがお粗相しちゃってごめんなさいね」
「先生、ぼくのこときらいになった?」

 自分のことが話題にされていると気付いた直人が、不安げに俺を見上げる。

「いや、大好きだよ」

 にかぁっと笑ってやると、ほっとしたように鳶色の瞳を細めて笑い返してきた。

「国重さんに確認したいことがあるんですが……」

 夫人に排泄と入浴はどこまで補助をしたらいいのかを聞くと、排泄はズボンを脱がせてやると自分で便器に座るので、排泄した後またズボンを穿かせてやるということだった。
 大も小も便器に座って排泄するようだが、小の時は前を、大の時は後ろをトイレットペーパーで拭いてやるのだという。
 更に水まで流してやっているようなので、拭くことと水を流すことから教えていくことにしよう。

 入浴は、服を脱がせ、一緒に入って髪と体を洗ってやり、風呂から出たら体を拭いて服を着せ、髪を乾かしてやるとのことだ。
 一緒に裸になって入るわけではなく、服を着たまま補助をしていると聞いて、もし卑しく勃ちあがってしまっても見られはしないと分かって安心した。
 トイレのように素早く服を脱ぐ必要もないし、四月も半ばに入り寒さも感じなくなってきたので、服を脱ぐこと、服を着ること、体を拭くこと、と簡単なことから順番に教えていこう。

 一番驚き不安になったのが、同じベッドで眠るということだった。
 幼児に母親が添い寝するのは当たり前の光景だが、足を怪我して睡眠時は動かないように吊るして眠る必要のある夫人は、直人の隣で眠ることが出来ない。
 そのため、代わりに俺に添い寝して欲しいと言ってきたのだ。

「この機会に、一人で眠る練習をしてみるか?」
「暗いのこわいからやだよ。先生といっしょに寝たい」
「キングサイズの大きなベッドだから、大きな男の子が二人で寝ても大丈夫よ」

 甘えたの直人と、どこまでも甘い夫人の言葉で、直人と同じベッドで眠ることが決定してしまった。
 取り急ぎ確認しておきたかった直人の補助の程度を聞き終わると、ついでだからと屋敷の間取りも教えてもらった。
 玄関を入って左側に今いるリビング、その奥にトイレ。リビングの向かいには書斎、その奥に浴室。
 玄関を入って右側にはダイニングキッチン。その向かいには夫人が寝室に使う部屋。
 玄関を入って正面にある階段を昇ると左側にトイレと浴室。その奥に直人が使っている主寝室。
 階段を昇って右側には、客室が二間。
 説明された屋敷の間取りを頭に入れ、今日みたいなことにならないようにトイレの位置はしっかりと覚えておく。

「そろそろナオくんのお風呂の時間ね」

 直人がアルバムを取り出したキャビネットに置かれている、骨董品店に売っていそうな時計を見て告げてきた夫人。
 時計の針は、九時を指している。
 直人は、夜は十時過ぎには眠り、朝は七時前に起きると依頼書には書いてあったはずだ。
 足を怪我している夫人は階段を昇るのは困難なので、今から朝まで直人と二人きりになる。
 最低の行為だったが熱は散らしたし、天使のような存在が目の前にいれば更なる最低な行為はしなくて済むはずだ。

「先生、いこうよ」

 いつもと違う俺との入浴と就寝に、お泊まりでもするような気分で楽しいのか、急かすように腕を掴んでくる直人。

「ナオくん、先生、おやすみなさい」

 自分にベッタリで常に隣にいた直人が、自分と離れる状況になっても駄々を捏ねずに期待に胸を弾ませている姿を見て、一瞬寂しそうに目を伏せた夫人だが、すぐに優しい母親の顔に戻って挨拶をしてきた。

「お母さま、おやすみなさい」
「では、先に休ませて貰います。何かあったら声を掛けてくださいね」

 夫人に告げ、直人に引っ張られながらリビングを出る。

「先生、アワアワと白いの、どっちがすき?」
「アワアワ? 白いの?」
「今日、お風呂に入れるの」
「んー、白いのかな」

 階段を昇りながら聞いてくる直人の言葉の意味が分からなかったが、入浴剤のことを言っているのだと分かった。
 泡だと入浴途中で消えてしまうことも考えられるので、湯に入っている間は確実に裸体を見ずに済む白くなるタイプの方を選ぶ。

「先生、白いのすき?」
「え……あぁ、好きだよ」
「ぼくも」

 甘い響きのバリトンで紡がられる白いのという言葉に、青臭いアレが脳裏を過ってしまいドキリとする。
 だが、三歳児程度の知能の直人はソレの存在すら知らないのだと、頭を振る。
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