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「お母さま、お月さま見てきての」
「あらそう、綺麗だった?」
「うんっ!」
扉の開く音に気付いたのか玄関にやってきた夫人に、直人は楽しそうに報告している。
母親が現れれば、俺なんか目に入っていないかのようにくっつきにいくじゃないか。
直人は最初は母親と結婚したがっていたが、無理だと分かって俺とすると言い出したんだ。
赤ん坊の頃に親からされたキスや、幼稚園児同士の大人の真似っこのキスは、キスの数には入れないだろ。
直人のしたキスは、それと同じものなんだ。
そうだと分かっているし、そうでなければならないと思っているのに、心臓が握り潰されたように痛いのは何故だ?
「すいません奥様、先に自分の入浴を済ませたいのでナオくんと待っていてもらってもいいですか?」
「えぇ構わないわよ。ゆっくり汗を流してきてね」
国重親子と同じ空間にいるのが苦しくて、ここから逃げだしたくて入浴したいと夫人に告げる。
少し固くなってしまった声を不信がることなく、了承してくれた夫人。
軽く会釈して一気に階段を昇り、二階の直人の寝室に向かう。
寝室に入って鞄から寝間着を取り出し、ぐちゃぐちゃの心を落ち着かせるために熱めのシャワーを浴びる。
無心になれ、と命じるのに、脳内では直人の顔がスローモーションで近付いてくる映像がエンドレスで繰り返されている。
何故か味わったことがあると感じる、甘くて切なくて涙が出るくらい幸せな感触を思い出したくて、そっと唇に指を這わせてみる。
触れているのは自分の指なのに、口付けをされているような錯覚に陥り、心臓がドクンと大きく跳ねて、甘く痺れている下腹部に血液を送っていく。
この後は直人の入浴補助をしないといけない。寝る前には排泄補助も必要だろう。
直人の裸体を前に暴れだそうとする穢れた血と戦うことは、目に見えている。
少しでも体が先生としての俺の言うことを聞くように、今のうちに熱を散らしておこう。
唇に這わせている指に、深い口付けでも交わしているかのように舌を絡める。
その指を、ご馳走を目の前にした時のように止めどなく唾液が溢れている口内に挿れる。
官能を刺激するように口内を掻き回して、しとどに濡れたそれを、早く咥えるモノが欲しいと啼いている後ろに収めていく。
満足そうに締め付けてくる後ろを掻き混ぜながら、こっちにも構えと涎を垂らしている前を扱いていく。
直人との口付けを思い出して反応してしまった体を、直人の無垢な魂を護るために必要な行為なのだと言い訳をしながら鎮めていった。
快楽の余韻に浸らないように、出したものを直ぐに洗い流して体を清めていく。
この後この浴室を使う直人に穢れが移らないように、丹念に風呂掃除をして一階に戻る。
「お待たせしました」
「ゆっくり温まれた?」
「はい。次はナオくんの番な」
「うん。ぼく、一人で全部やる」
「あぁ、頑張ろうな」
直人のやる気がみなぎる顔を見て、頑張るのは俺と結婚するため、結婚してキスをしたいから、という方程式が浮かんできてしまい慌てて打ち消す。
朝よりも着替えの上手くなった直人を、その逞しい大人の男の体を欲して騒ぐ穢れた血を無視し、先生として指導して褒めていく。
熱を散らせたことなど覚えていないように再び熱を持つ体は他人の物だ、と脳に思わせるように訴え続け、直人の入浴補助を済ませていく。
脳は行っていることをテレビの向こうの世界のように客観的に見ていて、体だけは現実と捉えている、そんなアンバランスな状態で直人のお世話を進めていった。
「先生、おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
今日もベッドに入ると、先に横たわっていた直人が俺を腕の中に引き寄せてきた。
ドクンドクンと体を振動させるくらいの心臓の動きを他人事のように感じながら直人の温もりに包まれていると、直人と二階に上がってから無理矢理引き離した心と体の疲れが限界に達したのか、意識を失うように眠りに落ちていった。
「あらそう、綺麗だった?」
「うんっ!」
扉の開く音に気付いたのか玄関にやってきた夫人に、直人は楽しそうに報告している。
母親が現れれば、俺なんか目に入っていないかのようにくっつきにいくじゃないか。
直人は最初は母親と結婚したがっていたが、無理だと分かって俺とすると言い出したんだ。
赤ん坊の頃に親からされたキスや、幼稚園児同士の大人の真似っこのキスは、キスの数には入れないだろ。
直人のしたキスは、それと同じものなんだ。
そうだと分かっているし、そうでなければならないと思っているのに、心臓が握り潰されたように痛いのは何故だ?
「すいません奥様、先に自分の入浴を済ませたいのでナオくんと待っていてもらってもいいですか?」
「えぇ構わないわよ。ゆっくり汗を流してきてね」
国重親子と同じ空間にいるのが苦しくて、ここから逃げだしたくて入浴したいと夫人に告げる。
少し固くなってしまった声を不信がることなく、了承してくれた夫人。
軽く会釈して一気に階段を昇り、二階の直人の寝室に向かう。
寝室に入って鞄から寝間着を取り出し、ぐちゃぐちゃの心を落ち着かせるために熱めのシャワーを浴びる。
無心になれ、と命じるのに、脳内では直人の顔がスローモーションで近付いてくる映像がエンドレスで繰り返されている。
何故か味わったことがあると感じる、甘くて切なくて涙が出るくらい幸せな感触を思い出したくて、そっと唇に指を這わせてみる。
触れているのは自分の指なのに、口付けをされているような錯覚に陥り、心臓がドクンと大きく跳ねて、甘く痺れている下腹部に血液を送っていく。
この後は直人の入浴補助をしないといけない。寝る前には排泄補助も必要だろう。
直人の裸体を前に暴れだそうとする穢れた血と戦うことは、目に見えている。
少しでも体が先生としての俺の言うことを聞くように、今のうちに熱を散らしておこう。
唇に這わせている指に、深い口付けでも交わしているかのように舌を絡める。
その指を、ご馳走を目の前にした時のように止めどなく唾液が溢れている口内に挿れる。
官能を刺激するように口内を掻き回して、しとどに濡れたそれを、早く咥えるモノが欲しいと啼いている後ろに収めていく。
満足そうに締め付けてくる後ろを掻き混ぜながら、こっちにも構えと涎を垂らしている前を扱いていく。
直人との口付けを思い出して反応してしまった体を、直人の無垢な魂を護るために必要な行為なのだと言い訳をしながら鎮めていった。
快楽の余韻に浸らないように、出したものを直ぐに洗い流して体を清めていく。
この後この浴室を使う直人に穢れが移らないように、丹念に風呂掃除をして一階に戻る。
「お待たせしました」
「ゆっくり温まれた?」
「はい。次はナオくんの番な」
「うん。ぼく、一人で全部やる」
「あぁ、頑張ろうな」
直人のやる気がみなぎる顔を見て、頑張るのは俺と結婚するため、結婚してキスをしたいから、という方程式が浮かんできてしまい慌てて打ち消す。
朝よりも着替えの上手くなった直人を、その逞しい大人の男の体を欲して騒ぐ穢れた血を無視し、先生として指導して褒めていく。
熱を散らせたことなど覚えていないように再び熱を持つ体は他人の物だ、と脳に思わせるように訴え続け、直人の入浴補助を済ませていく。
脳は行っていることをテレビの向こうの世界のように客観的に見ていて、体だけは現実と捉えている、そんなアンバランスな状態で直人のお世話を進めていった。
「先生、おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
今日もベッドに入ると、先に横たわっていた直人が俺を腕の中に引き寄せてきた。
ドクンドクンと体を振動させるくらいの心臓の動きを他人事のように感じながら直人の温もりに包まれていると、直人と二階に上がってから無理矢理引き離した心と体の疲れが限界に達したのか、意識を失うように眠りに落ちていった。
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