おやじが女子高生に恋をした

masaaky

文字の大きさ
2 / 6

今日もいつもの日常2/3

しおりを挟む
シャワーを浴び終わった後朝食を取る。
といっても六つ切の食パンをトースターで焼くだけだ。
塗るのはいつものマーガリン。
これも20年変わらない。
実家で両親と同居していた時にはトースト以外にもハムエッグが並ぶ時もあったが、一人暮らししてからはトースト以外が朝の食卓に並ぶことはない。
トーストを食べている時もTVをただ眺めながら黙々と食べる。
当然一人なので会話もない。
いつもの朝がいつもと同じ時間の流れで進んでいく。
ただ今日いつもと違ったのは家の前の道路が工事中だったこと。
それだけである。

いつもと同じ時刻、7時30分に家を出た。
ここまでは何も変わらない。
いつもと違っていたのはアパートを出たすぐ前の道、バス停へ向かういつも通る道が封鎖されていたこと。

(何だろう?事故かな?パトカーが何台か停まっている。仕方ない。回り道していくか。)

事故には興味がなかった。
もともと知り合いも少ないし近所付き合いもないので、事故した人も、万一誰かが巻き込まれていたとしても知り合いではないだろうと思っていたからだ。
いつもの道ならバス停まで歩いて5分。

(今日は回り道をしなくてはいけないので、10分くらいはかかるかな?)

時間には正確なタイプなので、バスが到着する5分前にはいつもバス停で待っていた。
回り道をしてもいつもの時刻のバスには乗り込めるはずだった。
たとえ乗り過ごしたとしても次のバスは15分後にやってくる。
その15分後のバスに乗り遅れたとしても会社に遅刻することはない。
そんなギリギリに出勤するような性格は持ち合わせていない。
福士は会社でも目立った存在ではなかった。
特に仕事ができるタイプでもなかったし、上司におべんちゃらを言えるタイプでもなかった。
なので、極力失点を抑えるため遅刻は決してしない。
他人の悪口や会社の愚痴を言うようなことも決してしなかった。
自分みたいなタイプが他人に嫌われてしまえばどうなるかは自分でよく分かっていたつもりだからだ。

いつものようにバス停に向かって歩いていくと、発車していくバスの姿が。

(あれ?乗り遅れてしまった・・・。姿が見えているのに何で止まってくれないんだ・・・。いつもの運転手と違うのかな?)

乗り遅れても焦ったりしない。
慌てて駆け込み乗車をするという行動を過去にも今にも取ったことがない。
今日もそうだった。

(いつもより1本乗り遅れてしまった。まぁ、15分もすれば次のバスが来る。それでも決して遅刻することはないし、仕方ない。)

そんな風に考え、バス停の一番前で待つことにした。
バス停の一番前は福士の指定席だ。

(今朝は冷えるな。マフラーをしてきてよかった。)

そんなことを考えながら、ポケットに入れてあった厚手の手袋を取り出し両手にはめた。
先週駅前のユニクロで3枚セットのパンツと靴下と一緒に購入したものだ。
似合う似合わないとかではなく、暖かそうとだなと思ったのと何よりセールで50%オフだったからだ。

(買っててよかった。暖かいや。)

マフラーをもう一度巻き直しているときにバスは到着した。

いつものバスより乗車客が多い。
高校生がたくさん乗っている。

(この時間になると学生が多くなるんだよな。駅まで座れないな、仕方ない。)

いつものバスの時間ならゆっくり座って駅まで読書を楽しめる。
でも今日は座れないので本を読むのは無理かな。
そんなことを思いながら車両の奥へと進んでいった。

車両の後部座先では高校生と思われる4,5人くらいのグループが楽しそうに大声で話している。

『昨日のTV見た??すごくない??あの芸人最高月収1,000万円やってー。おれも芸人になろうかな?』
『無理だろ。お前面白くないもん。』
『えっ。めっちゃ面白いしー。』

取り留めもない話ばかり永遠と続いている。

(座席を占領して大声ではしゃいでいるなんて、迷惑な話だな。学校に着いてからすればいいのに。)

そう思っていると、一人の若いサラリーマン風の男が学生に向かってこう言った。

『少しうるさいぞ。ほかのお客さんも乗っているんだからもう少し静かにしてくれよ。』

学生たちはその男の方をじろっとにらみつけて

『わぁ。怒られた。静かにしろって。』

笑いながら男を挑発するように言い放った。

『バスの中ってしゃべっちゃダメなとこなんや。』

『そうなん??』

隣にいる他の学生を巻き込むように挑発を続ける。

(やばい。喧嘩になるんじゃないの?面倒くさいな・・・)

福士には関係ないが、トラブルが嫌いだ。

(いらんこと言わなくて、黙ってやりすごせばトラブルなんか怒らないのに・・・)

そう思っていると、一人の女子高生が学生グループに向かって

『ちょっとやめなさいよ。制服着てるのにどこの学校か分かっちゃってるよ。喧嘩ばっかりしないで。』
と学生たちを制止した。

たぶん制服からすると同じ学校の生徒だろ。
学生たちもおとなしくなったのを見ると、知り合いなのかもしれないな。
とにかくよかった。
この場は収まりそうだ。

(この子、可愛いのに気が強い子だな。)

福士は巻き込まれたらイヤなので、バスの手すりを握りしめながら少し目を伏せた。
そこからは何事もなかったように時間が過ぎ、その学生たちが通う高校の前のバス停に着いた。

『次は明星高校前、明星高校前です。』

先ほど注意していた女の子と、車内で騒いでいた学生たちはそこで下車した。

(やれやれ。収まったか。)

福士は少しほっとして少し曇ったバスの窓から外を見た。

女の子は先ほどの剣幕と違い、にこやかな笑顔で男子学生たちに話しかけていた。

(初恋の同級生の女の子に似てるな。ちょうどあんな感じで髪の毛をくくっていたな。)

その同級生の女の子は福士が卒業するまで好きだった子だ。
でも結局卒業するまでその想いは伝えることができなかった。
その勇気もなかったし、学校中で人気者だった彼女に自分が告白するなんて想像もできなかった。

(彼女、今頃どうしているのだろ?幸せな結婚をして平和に暮らしているんだろうな。)

福士には彼女の幸せそうな姿しか想像できなかった。

(子どもも2人くらいはいそうだな。)
(旦那さんは、背が高くて格好良くてお洒落で・・・)

何回想像してみてもその旦那は自分ではなかった。

(さっきの子はひょっとして彼女の子どもかな)

想像はどんどん膨らんでいった。
自分の未来には明るい未来が想像できないが、他人の明るい未来は容易に想像できた。

(次に生まれ変わったらそんな人生にならないかな・・・)

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

処理中です...