3 / 6
今日もいつもの日常3/3
しおりを挟む
『おはようございます。』
『あぁ、おはよう。今日はえらく元気がいいなぁ。』
会社の前で部長に会った。
もちろんいつも挨拶はする。
社会人として当然だ。
でもいつもより少しテンションが高かったのかもしれない。
部長がいつもより元気がいいというのだから、そうなのだろう。
いつもきれいに整頓された自分の机の前で今日の仕事の段取りを始める。
福士は会社の経理の仕事をしている。
営業とかには向いていない。
人としゃべることはとにかく苦手である。
今の仕事は自分に向いている。
ただひたすら領収書と電卓と帳簿ににらめっこだ。
無機質なものと向き合っていると何だか心が落ち着く。
というより何かに集中しているこの時間が心地よい。
目の前に片付けなくてはいけない仕事が山積みになればなるほど自分の心は充実していく。
『あれー?何だか今日はとっても機嫌がよさそうですね。』
隣の席の女子社員が声をかけてきた。
彼女の名前は小林翔子。
高校を卒業してすぐにこの会社に入社してきた。
5年目になるので、もう23歳になるのかな。
とにかくよくしゃべる子だ。
福士は無口なのでしゃべりかけても
『うん。』
とか
『そうだね。』
とか相槌を打つくらいなのだが、それでも話をやめずしゃべりかけてくる。
いつもは翔子がしゃべりかけてくることで、仕事の手が止まってしまうことがあるのでなるべく目を合わさないようにしていた。
でも今日はなぜか顔を上げて
『そんなことないと思うんだけどな。』
と答えてしまった。
珍しく目が合い、いつもと違う返事に戸惑った表情を一瞬したものの、すぐに翔子はここぞとばかりにしゃべりかけてきた。
『あれー。やっぱりそうですよ。何だか今日は機嫌よさそうです。何かあったんですかー?』
『・・・。な・な・なにもないよ・・・。』
すぐに口ごもってしまい、下を向いた。
誰かのことを考えたり、昔の思い出を思い出したり、久しくそんなことはなかった。
学生服を着ている自分を思い出しとことなどここ数年なかった。
(たしか、家の押し入れに高校の卒業アルバムがあったな・・・。家に帰って今日は卒業アルバムを見よう。)
家に帰るのが楽しみになった。
いつも家に帰るのが楽しみではない。
かといって、会社の同僚と飲みに行くのも好きではない。
会社の愚痴を聞かされるからだ。
彼女もいないし、何かに夢中になる趣味も特にはない。
43歳になるこの年までずっとこんな同じような生活をしてきた。
『小林さんって、同窓会とかってある?』
『えっ。ありますよ。同窓会っていうか、仲のいい友達とかとは何人かでよく集まって女子会しています。ちゃんとした同窓会っていつ以来かな??えーっと、たしか・・・』
(しまった。話が長くなりそうだ・・・。部長がちらっとこっちを見ている。)
『あ、そうなんだ。そうだ、トイレ行ってきます。』
『同窓会でもあるんですか?』
祥子がそう言って話を続けようとしていたので、急いで立ち上がってトイレに駆け込んだ。
(ふっー。たぶんあの調子だと30分くらいはしゃべり続けられたな・・・)
トイレがしたかったわけではないので、用を足したふりをして一息をついた後周りを見渡してゆっくりと席に着いた。
祥子は給湯室に向かったのだろうか隣の席にはいなかった。
(同窓会っていつから行っていないのかな?そんな機会でもなければ二度と彼女と会うこともないだろうしな。でも同窓会があってもそもそも彼女が来るかどうかもわからないしな・・・)
今日バスで会った女子高生がたまたま昔好きだった同級生の女の子に似ていたかもというだけでこうだ。
しかも25年前の思い出なのでそもそも彼女と似ていたのかさえも記憶が曖昧だ。
(今度、吉田くんたちに会ったら聞いてみよう。)
『あぁ、おはよう。今日はえらく元気がいいなぁ。』
会社の前で部長に会った。
もちろんいつも挨拶はする。
社会人として当然だ。
でもいつもより少しテンションが高かったのかもしれない。
部長がいつもより元気がいいというのだから、そうなのだろう。
いつもきれいに整頓された自分の机の前で今日の仕事の段取りを始める。
福士は会社の経理の仕事をしている。
営業とかには向いていない。
人としゃべることはとにかく苦手である。
今の仕事は自分に向いている。
ただひたすら領収書と電卓と帳簿ににらめっこだ。
無機質なものと向き合っていると何だか心が落ち着く。
というより何かに集中しているこの時間が心地よい。
目の前に片付けなくてはいけない仕事が山積みになればなるほど自分の心は充実していく。
『あれー?何だか今日はとっても機嫌がよさそうですね。』
隣の席の女子社員が声をかけてきた。
彼女の名前は小林翔子。
高校を卒業してすぐにこの会社に入社してきた。
5年目になるので、もう23歳になるのかな。
とにかくよくしゃべる子だ。
福士は無口なのでしゃべりかけても
『うん。』
とか
『そうだね。』
とか相槌を打つくらいなのだが、それでも話をやめずしゃべりかけてくる。
いつもは翔子がしゃべりかけてくることで、仕事の手が止まってしまうことがあるのでなるべく目を合わさないようにしていた。
でも今日はなぜか顔を上げて
『そんなことないと思うんだけどな。』
と答えてしまった。
珍しく目が合い、いつもと違う返事に戸惑った表情を一瞬したものの、すぐに翔子はここぞとばかりにしゃべりかけてきた。
『あれー。やっぱりそうですよ。何だか今日は機嫌よさそうです。何かあったんですかー?』
『・・・。な・な・なにもないよ・・・。』
すぐに口ごもってしまい、下を向いた。
誰かのことを考えたり、昔の思い出を思い出したり、久しくそんなことはなかった。
学生服を着ている自分を思い出しとことなどここ数年なかった。
(たしか、家の押し入れに高校の卒業アルバムがあったな・・・。家に帰って今日は卒業アルバムを見よう。)
家に帰るのが楽しみになった。
いつも家に帰るのが楽しみではない。
かといって、会社の同僚と飲みに行くのも好きではない。
会社の愚痴を聞かされるからだ。
彼女もいないし、何かに夢中になる趣味も特にはない。
43歳になるこの年までずっとこんな同じような生活をしてきた。
『小林さんって、同窓会とかってある?』
『えっ。ありますよ。同窓会っていうか、仲のいい友達とかとは何人かでよく集まって女子会しています。ちゃんとした同窓会っていつ以来かな??えーっと、たしか・・・』
(しまった。話が長くなりそうだ・・・。部長がちらっとこっちを見ている。)
『あ、そうなんだ。そうだ、トイレ行ってきます。』
『同窓会でもあるんですか?』
祥子がそう言って話を続けようとしていたので、急いで立ち上がってトイレに駆け込んだ。
(ふっー。たぶんあの調子だと30分くらいはしゃべり続けられたな・・・)
トイレがしたかったわけではないので、用を足したふりをして一息をついた後周りを見渡してゆっくりと席に着いた。
祥子は給湯室に向かったのだろうか隣の席にはいなかった。
(同窓会っていつから行っていないのかな?そんな機会でもなければ二度と彼女と会うこともないだろうしな。でも同窓会があってもそもそも彼女が来るかどうかもわからないしな・・・)
今日バスで会った女子高生がたまたま昔好きだった同級生の女の子に似ていたかもというだけでこうだ。
しかも25年前の思い出なのでそもそも彼女と似ていたのかさえも記憶が曖昧だ。
(今度、吉田くんたちに会ったら聞いてみよう。)
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる