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第2章
その9 スカッと爽やかにいきたいね(改)
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9
エーリクに決闘宣言をしたおれと、ルームメイトのブラッド、モルガン君のまわりに、それまでおれを遠巻きにしていた生徒たちが集まって来た。
「よくやった」
「スカッとしたわ」
「田舎者だと思ってたけど見直した!」
「さすがムーンチャイルドに求婚しただけある、無謀なヤツ」
褒めてるのかどうなのか。
「どうやってムーンチャイルドに求婚したの」
女子は主に恋バナ。
「エーリク先輩は強いぞ。大丈夫なのか?」
男子は格上のエーリクに挑戦するおれを案じてくれるようだ。
あいつそんなに強かったっけ?
生まれついての後先考えない行動癖を、おれはちょっぴり後悔し始めていた。
「どうしよう。僕は、かえって迷惑かけてしまったかもしれません」
興奮から醒めてきたブラッドの顔色が良くない。
こいつは隠してるけどどう見ても貴族のいいとこのお坊ちゃまだ。
「軽はずみな行動は慎まないといけないのに、決闘を申し込むなんて。リトルホークが助けてくれなかったら大事になっていました」
「気にするな。それより、ありがとう。おれこそ誰よりも先に立ってムーンチャイルドを守らないといけないんだから」
「僕らは紳士同盟の仲間ですからね」
ブラッドは、ようやく笑顔を見せた。
※
「バカなの!? リトルホーク!」
学生食堂に姿を現すなり、開口一番、こう言い放ったのは、銀髪美少女。
ムーンチャイルドと《影の呪術師》ことレニウス・レギオンを保護し育てた守護精霊であるラト・ナ・ルアだ。
その直前、決闘状がわりの靴下をエーリクに投げつけ、明日の昼には決闘することになっていた、おれ、リトルホークである。
「まったくもう! せっかくの《呪術師》の思惑が台無しじゃないの」
正しいツンデレであるラト・ナ・ルアは呆れたようにおれを睨むのだが、いかんせん外見は十四、五歳の華奢な超絶美少女だ。
全然怖くない。
……怖くないったら。
「レニは留守にしているんだから。困らせないでやって」
「留守?」
「そうよ。あの子は忙しいの。言い訳なら後で、直接しなさいね」
ラト・ナ・ルアは、軽くウィンクをして。
おれの耳元に、顔を寄せた。
「でも、ムーンチャイルドの名誉を守ろうとした姿勢は褒めてあげないでもないわ」
「……」
いつも怒られているから、たまに褒められても、裏があるんじゃないかと疑ってしまう。
ラト・ナ・ルアは、顔を上げ、ブラッドを見た。
「ブラッド。モルガンくん、それに他の紳士同盟のみなさんも。これからも、あの子の力になってやってね」
そしてエーリクを注意していたミハイルさんと話をしてから、食堂に集まった生徒たちに向き直り。
にっこりと優雅に微笑んだ。
「みなさんは、色々な噂に心を煩わせることはありません。安心して、今後ともレニウス・レギオンを信じて学び舎で健やかに過ごしてくださいませ」
ラト・ナ・ルアが手をかざすと、彼女の身体や髪から銀色の細かい粒子があたりに散って、生徒たちの頭上から降り注いだ。
その場に居た全員の身体が、温もりに包まれ、心身共に癒やされていった。
幻のようにラト・ナ・ルアは消え去り、あとには、精霊の起こした奇跡に心酔し、感動する生徒達が残った。
「よっしゃ帰ろうぜ、おれたちの部屋に!」
熱い。モルガン君が熱い。
「そうだね! リトルホークくんがいれば楽しそうだ!」
※
夕食後、部屋で荷物を整理していたおれは学長室に呼び出された。
風呂は後回しだな。
そこには先客がいた。
エーリクだ。
なんとなく予想はしていた。
もしかしたらエーリクは、ガス抜き?
わかりやすい悪役を演じていたのかも。
その予測通りに、レニはご立腹だった。
「エーリク。適度に噂を流してくれるよう依頼はしたが。今夜は、やりすぎだ。ペナルティも考慮に入れねばならん」
「すみません」
素直に頭をさげるエーリク。
おかしい、食堂で会ったときとはまるで別人だ。
「レニの依頼だったのか!?」
呆れる、おれ。
「しかしブラッドやモルガンは本気で心配してる。教えてやってもいいか」
「彼らは知らないほうがいい。知らなければ探られても漏らすことはない」
「探られるって」
「ここは各国の垂涎の場だぞ。さまざまな技術、魔法。たとえば詳細な地図ひとつ取っても立派な戦略物資だ。理解してもらわなくては、リトルホーク」
「……わからないけど、わかったよ」
「そして、良い機会だ。このさいだから、実力を見せつけてもらおうか。うまく行けば、リトルホークの願う婚約式も夢ではない」
楽しげに笑った。
「ただし決闘は許可しない。学内は私闘を禁じている。学院規則にも載っているぞ。まだリトルホークには渡していなかったが。みな、将来有望な、貴重な人材だ」
肩をすくめた。
「だから、試験を兼ねてトーナメント戦をやることにしたよ」
「はぁ!?」
「聞こえなかったか? 試合にすれば遺恨も残らぬ。勝ち抜き戦だ。おまえとエーリクは最後に当たるように組んでおくから。そこまで勝ち上がってこいよ」
いたずらっぽく、笑う。
「自力で?」
「あたりまえだ。おまえは、私を守ってくれると誓っただろう?」
五年前、おれの故郷の村にカルナック(レニウス・レギオン)がやってきたときに出会って、結婚したときに誓ったことだ。
だけど……
正直、おれのほうが《呪術師》レニより、絶対的に弱いよな……
「しかも明日だと? 勝手に決めて、ばかものめ。却下だ。一週間、準備期間を設ける。腕の良い教師もつけるから鍛えてもらえ、リトルホーク!」
エーリクに決闘宣言をしたおれと、ルームメイトのブラッド、モルガン君のまわりに、それまでおれを遠巻きにしていた生徒たちが集まって来た。
「よくやった」
「スカッとしたわ」
「田舎者だと思ってたけど見直した!」
「さすがムーンチャイルドに求婚しただけある、無謀なヤツ」
褒めてるのかどうなのか。
「どうやってムーンチャイルドに求婚したの」
女子は主に恋バナ。
「エーリク先輩は強いぞ。大丈夫なのか?」
男子は格上のエーリクに挑戦するおれを案じてくれるようだ。
あいつそんなに強かったっけ?
生まれついての後先考えない行動癖を、おれはちょっぴり後悔し始めていた。
「どうしよう。僕は、かえって迷惑かけてしまったかもしれません」
興奮から醒めてきたブラッドの顔色が良くない。
こいつは隠してるけどどう見ても貴族のいいとこのお坊ちゃまだ。
「軽はずみな行動は慎まないといけないのに、決闘を申し込むなんて。リトルホークが助けてくれなかったら大事になっていました」
「気にするな。それより、ありがとう。おれこそ誰よりも先に立ってムーンチャイルドを守らないといけないんだから」
「僕らは紳士同盟の仲間ですからね」
ブラッドは、ようやく笑顔を見せた。
※
「バカなの!? リトルホーク!」
学生食堂に姿を現すなり、開口一番、こう言い放ったのは、銀髪美少女。
ムーンチャイルドと《影の呪術師》ことレニウス・レギオンを保護し育てた守護精霊であるラト・ナ・ルアだ。
その直前、決闘状がわりの靴下をエーリクに投げつけ、明日の昼には決闘することになっていた、おれ、リトルホークである。
「まったくもう! せっかくの《呪術師》の思惑が台無しじゃないの」
正しいツンデレであるラト・ナ・ルアは呆れたようにおれを睨むのだが、いかんせん外見は十四、五歳の華奢な超絶美少女だ。
全然怖くない。
……怖くないったら。
「レニは留守にしているんだから。困らせないでやって」
「留守?」
「そうよ。あの子は忙しいの。言い訳なら後で、直接しなさいね」
ラト・ナ・ルアは、軽くウィンクをして。
おれの耳元に、顔を寄せた。
「でも、ムーンチャイルドの名誉を守ろうとした姿勢は褒めてあげないでもないわ」
「……」
いつも怒られているから、たまに褒められても、裏があるんじゃないかと疑ってしまう。
ラト・ナ・ルアは、顔を上げ、ブラッドを見た。
「ブラッド。モルガンくん、それに他の紳士同盟のみなさんも。これからも、あの子の力になってやってね」
そしてエーリクを注意していたミハイルさんと話をしてから、食堂に集まった生徒たちに向き直り。
にっこりと優雅に微笑んだ。
「みなさんは、色々な噂に心を煩わせることはありません。安心して、今後ともレニウス・レギオンを信じて学び舎で健やかに過ごしてくださいませ」
ラト・ナ・ルアが手をかざすと、彼女の身体や髪から銀色の細かい粒子があたりに散って、生徒たちの頭上から降り注いだ。
その場に居た全員の身体が、温もりに包まれ、心身共に癒やされていった。
幻のようにラト・ナ・ルアは消え去り、あとには、精霊の起こした奇跡に心酔し、感動する生徒達が残った。
「よっしゃ帰ろうぜ、おれたちの部屋に!」
熱い。モルガン君が熱い。
「そうだね! リトルホークくんがいれば楽しそうだ!」
※
夕食後、部屋で荷物を整理していたおれは学長室に呼び出された。
風呂は後回しだな。
そこには先客がいた。
エーリクだ。
なんとなく予想はしていた。
もしかしたらエーリクは、ガス抜き?
わかりやすい悪役を演じていたのかも。
その予測通りに、レニはご立腹だった。
「エーリク。適度に噂を流してくれるよう依頼はしたが。今夜は、やりすぎだ。ペナルティも考慮に入れねばならん」
「すみません」
素直に頭をさげるエーリク。
おかしい、食堂で会ったときとはまるで別人だ。
「レニの依頼だったのか!?」
呆れる、おれ。
「しかしブラッドやモルガンは本気で心配してる。教えてやってもいいか」
「彼らは知らないほうがいい。知らなければ探られても漏らすことはない」
「探られるって」
「ここは各国の垂涎の場だぞ。さまざまな技術、魔法。たとえば詳細な地図ひとつ取っても立派な戦略物資だ。理解してもらわなくては、リトルホーク」
「……わからないけど、わかったよ」
「そして、良い機会だ。このさいだから、実力を見せつけてもらおうか。うまく行けば、リトルホークの願う婚約式も夢ではない」
楽しげに笑った。
「ただし決闘は許可しない。学内は私闘を禁じている。学院規則にも載っているぞ。まだリトルホークには渡していなかったが。みな、将来有望な、貴重な人材だ」
肩をすくめた。
「だから、試験を兼ねてトーナメント戦をやることにしたよ」
「はぁ!?」
「聞こえなかったか? 試合にすれば遺恨も残らぬ。勝ち抜き戦だ。おまえとエーリクは最後に当たるように組んでおくから。そこまで勝ち上がってこいよ」
いたずらっぽく、笑う。
「自力で?」
「あたりまえだ。おまえは、私を守ってくれると誓っただろう?」
五年前、おれの故郷の村にカルナック(レニウス・レギオン)がやってきたときに出会って、結婚したときに誓ったことだ。
だけど……
正直、おれのほうが《呪術師》レニより、絶対的に弱いよな……
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