リトルホークと黒の魔法使いカルナックの冒険

紺野たくみ

文字の大きさ
8 / 64
第1章

その8 涙の再会!?

しおりを挟む
          8

《誘拐人身売買組織の証拠はあがっている。ラウール・アントニオ・ティス・ラゼル。魔道具及び武器を捨て、すみやかに投降しなさい! 抵抗すれば、撃つ!》

「海外ドラマかよ!」
 その声が響いたとき、おれは思わずつぶやいた。
 なんだこれ。クリミナル・マイ○ド? ロー&オー○ー?

 次の瞬間。
 酒場の扉は大きく音をたてて壊れ、そこに開いた穴から、大勢の人間が飛び込んできたのだった。
 ふと、前世で見たことのある海外ドラマを思い出した。
 なぜかドアは、蹴破られるのだ。

《確保!》
《クリア!》

 飛び込んできたのは、紺色の揃いの制服に身を包んだ十数人の、いかにも正義感の塊のような青年たちと、ローブをまとった幾人かの人影。
 剣戟の音。
 放たれる、魔法。

 大がかりな立ち回り、逮捕劇が繰り広げられている。

 あ、おれと戦おうとしてた中年イケメンが《確保》された。
 ご隠居さんも捕まったようだ。

「天下のラゼル商会会頭の、このわしを! 公務員や魔術師ふぜいが、どうにかできるというつもりか!」
 白髪頭から湯気が出るくらい興奮して息巻いている。

「ラウールご隠居。あなたの身柄は国家には引き渡しませんのでご安心を」
 涼やかな声が響いて、周囲の喧噪を、一瞬のうちにかき消した。
 だれだ。
 この、心を揺さぶられるような、声は?

「呪術師(ブルッホ)め!」
 憎々しげに放った、ご隠居の言葉は、「くくっ」という、楽しんでいるかのような冷笑で返された。

「いかにも、私は魔導師協会の長『影の呪術師(ブルッホ・デ・ソンブラ)』です。ラゼル商会の先代には敬意を表したい。息子さんから、捜索願が出ていますよ。老人ボケで、奇異な行動に出るので周囲が困っている。我が館にお帰りいただき、心穏やかにお過ごし頂けるようにしたいと」
 ご隠居さんを揶揄しながら、聞きようによってはこのうえなく丁寧で上品な物の言いようである。

 おれは声の主の姿を目で追った。
 そして、目を奪われる。

 床まで届く長い黒髪を、緩い三つ編みにした、背の高い姿。
 少しばかり薄暗い酒場の中で、そこだけ月光に照らされてでもいるような、まぶしさを感じたのは、その白い肌色のせいか。

 美しい。まるで神々の手になる彫像のような、整った横顔。
 人間とは、思えなかった。
 それが、こちらを向いて。
 闇を見透かす水精石色に、淡い光を帯びた、涼しいまなざしと、まともに目が合った。

「やっと会えた」
 思わず、声に出た。
 とたんに目の前がかすんだ。
 やべえ。
 おれ、泣いてる……?

「おーい! おれだよ! おれ!」

 状況もかえりみずに、その黒髪の人物に駆け寄った。
 だが、手が届くより前に、すぐに取り押さえられてしまった。

「……誰だ? おまえ」
 凍り付くような冷たい声と視線に、射貫かれて。

「この酒場の内部で動ける状態にある人間は組織の人員と見なす。被害者は全員、意識不明で重体だからな」

 …え!?

「そ、そうです! そいつも組織の仲間です!」
 何を思ったか、急に、例の四十がらみのオッサンがわめき立てた。

「おいこら! どさくさまぎれに善良な一般人を巻き添えにしようとするなオッサン! おまえが、ご隠居さんの命令でやったって言ってただろ!」

「うるさい! おまえが元凶に違いねえんだよ! 貧乏人のくせに、奢ってやるというのに飲み食いしねえなんて怪しいと思っていたら案の定だ」
 言い争いを始めたおれとオッサン。
 すると、間に入って争いを止めたのは、長い黒髪の美女、とも、美青年とも思える、背の高い人物だった。

「見苦しいぞ。仲間割れなら、牢に入ってからいくらでもするといい。全員、拘束して連行しろ」

 こんなに、知らない人間を見るような冷たい態度をとるなんて。
 もしかして、おれの勘違いだろうか。
 現場の魔法使いたちを指揮している、『影の呪術師(ブルッホ・デ・ソンブラ)』は。
 おれが探していた《……》では、ないんだろうか?

 別れてから4年。
 あまりに恋しいと思い続けていたから。
 別人と、見間違えたのか……?

「…んな、わけがあるかー!」

 屈強な、たぶん軍人か警官の青年に連行されながら、おれは叫んだ。

「いくら4年間も離れていたって、間違えるもんか! おまえは、おれの……!」


          暗転。


 どうやらおれは、警官に殴られたらしい。
 それきり、意識がとぎれてしまった。

 何度も言うようだが、おれ、リトルホークは、運が悪い。
 今回は、間が悪かったというべきか。

 大量誘拐・人身売買組織の一員に間違われるなんて、冗談じゃない!

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...