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第1章
その8 涙の再会!?
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8
《誘拐人身売買組織の証拠はあがっている。ラウール・アントニオ・ティス・ラゼル。魔道具及び武器を捨て、すみやかに投降しなさい! 抵抗すれば、撃つ!》
「海外ドラマかよ!」
その声が響いたとき、おれは思わずつぶやいた。
なんだこれ。クリミナル・マイ○ド? ロー&オー○ー?
次の瞬間。
酒場の扉は大きく音をたてて壊れ、そこに開いた穴から、大勢の人間が飛び込んできたのだった。
ふと、前世で見たことのある海外ドラマを思い出した。
なぜかドアは、蹴破られるのだ。
《確保!》
《クリア!》
飛び込んできたのは、紺色の揃いの制服に身を包んだ十数人の、いかにも正義感の塊のような青年たちと、ローブをまとった幾人かの人影。
剣戟の音。
放たれる、魔法。
大がかりな立ち回り、逮捕劇が繰り広げられている。
あ、おれと戦おうとしてた中年イケメンが《確保》された。
ご隠居さんも捕まったようだ。
「天下のラゼル商会会頭の、このわしを! 公務員や魔術師ふぜいが、どうにかできるというつもりか!」
白髪頭から湯気が出るくらい興奮して息巻いている。
「ラウールご隠居。あなたの身柄は国家には引き渡しませんのでご安心を」
涼やかな声が響いて、周囲の喧噪を、一瞬のうちにかき消した。
だれだ。
この、心を揺さぶられるような、声は?
「呪術師(ブルッホ)め!」
憎々しげに放った、ご隠居の言葉は、「くくっ」という、楽しんでいるかのような冷笑で返された。
「いかにも、私は魔導師協会の長『影の呪術師(ブルッホ・デ・ソンブラ)』です。ラゼル商会の先代には敬意を表したい。息子さんから、捜索願が出ていますよ。老人ボケで、奇異な行動に出るので周囲が困っている。我が館にお帰りいただき、心穏やかにお過ごし頂けるようにしたいと」
ご隠居さんを揶揄しながら、聞きようによってはこのうえなく丁寧で上品な物の言いようである。
おれは声の主の姿を目で追った。
そして、目を奪われる。
床まで届く長い黒髪を、緩い三つ編みにした、背の高い姿。
少しばかり薄暗い酒場の中で、そこだけ月光に照らされてでもいるような、まぶしさを感じたのは、その白い肌色のせいか。
美しい。まるで神々の手になる彫像のような、整った横顔。
人間とは、思えなかった。
それが、こちらを向いて。
闇を見透かす水精石色に、淡い光を帯びた、涼しいまなざしと、まともに目が合った。
「やっと会えた」
思わず、声に出た。
とたんに目の前がかすんだ。
やべえ。
おれ、泣いてる……?
「おーい! おれだよ! おれ!」
状況もかえりみずに、その黒髪の人物に駆け寄った。
だが、手が届くより前に、すぐに取り押さえられてしまった。
「……誰だ? おまえ」
凍り付くような冷たい声と視線に、射貫かれて。
「この酒場の内部で動ける状態にある人間は組織の人員と見なす。被害者は全員、意識不明で重体だからな」
…え!?
「そ、そうです! そいつも組織の仲間です!」
何を思ったか、急に、例の四十がらみのオッサンがわめき立てた。
「おいこら! どさくさまぎれに善良な一般人を巻き添えにしようとするなオッサン! おまえが、ご隠居さんの命令でやったって言ってただろ!」
「うるさい! おまえが元凶に違いねえんだよ! 貧乏人のくせに、奢ってやるというのに飲み食いしねえなんて怪しいと思っていたら案の定だ」
言い争いを始めたおれとオッサン。
すると、間に入って争いを止めたのは、長い黒髪の美女、とも、美青年とも思える、背の高い人物だった。
「見苦しいぞ。仲間割れなら、牢に入ってからいくらでもするといい。全員、拘束して連行しろ」
こんなに、知らない人間を見るような冷たい態度をとるなんて。
もしかして、おれの勘違いだろうか。
現場の魔法使いたちを指揮している、『影の呪術師(ブルッホ・デ・ソンブラ)』は。
おれが探していた《……》では、ないんだろうか?
別れてから4年。
あまりに恋しいと思い続けていたから。
別人と、見間違えたのか……?
「…んな、わけがあるかー!」
屈強な、たぶん軍人か警官の青年に連行されながら、おれは叫んだ。
「いくら4年間も離れていたって、間違えるもんか! おまえは、おれの……!」
暗転。
どうやらおれは、警官に殴られたらしい。
それきり、意識がとぎれてしまった。
何度も言うようだが、おれ、リトルホークは、運が悪い。
今回は、間が悪かったというべきか。
大量誘拐・人身売買組織の一員に間違われるなんて、冗談じゃない!
《誘拐人身売買組織の証拠はあがっている。ラウール・アントニオ・ティス・ラゼル。魔道具及び武器を捨て、すみやかに投降しなさい! 抵抗すれば、撃つ!》
「海外ドラマかよ!」
その声が響いたとき、おれは思わずつぶやいた。
なんだこれ。クリミナル・マイ○ド? ロー&オー○ー?
次の瞬間。
酒場の扉は大きく音をたてて壊れ、そこに開いた穴から、大勢の人間が飛び込んできたのだった。
ふと、前世で見たことのある海外ドラマを思い出した。
なぜかドアは、蹴破られるのだ。
《確保!》
《クリア!》
飛び込んできたのは、紺色の揃いの制服に身を包んだ十数人の、いかにも正義感の塊のような青年たちと、ローブをまとった幾人かの人影。
剣戟の音。
放たれる、魔法。
大がかりな立ち回り、逮捕劇が繰り広げられている。
あ、おれと戦おうとしてた中年イケメンが《確保》された。
ご隠居さんも捕まったようだ。
「天下のラゼル商会会頭の、このわしを! 公務員や魔術師ふぜいが、どうにかできるというつもりか!」
白髪頭から湯気が出るくらい興奮して息巻いている。
「ラウールご隠居。あなたの身柄は国家には引き渡しませんのでご安心を」
涼やかな声が響いて、周囲の喧噪を、一瞬のうちにかき消した。
だれだ。
この、心を揺さぶられるような、声は?
「呪術師(ブルッホ)め!」
憎々しげに放った、ご隠居の言葉は、「くくっ」という、楽しんでいるかのような冷笑で返された。
「いかにも、私は魔導師協会の長『影の呪術師(ブルッホ・デ・ソンブラ)』です。ラゼル商会の先代には敬意を表したい。息子さんから、捜索願が出ていますよ。老人ボケで、奇異な行動に出るので周囲が困っている。我が館にお帰りいただき、心穏やかにお過ごし頂けるようにしたいと」
ご隠居さんを揶揄しながら、聞きようによってはこのうえなく丁寧で上品な物の言いようである。
おれは声の主の姿を目で追った。
そして、目を奪われる。
床まで届く長い黒髪を、緩い三つ編みにした、背の高い姿。
少しばかり薄暗い酒場の中で、そこだけ月光に照らされてでもいるような、まぶしさを感じたのは、その白い肌色のせいか。
美しい。まるで神々の手になる彫像のような、整った横顔。
人間とは、思えなかった。
それが、こちらを向いて。
闇を見透かす水精石色に、淡い光を帯びた、涼しいまなざしと、まともに目が合った。
「やっと会えた」
思わず、声に出た。
とたんに目の前がかすんだ。
やべえ。
おれ、泣いてる……?
「おーい! おれだよ! おれ!」
状況もかえりみずに、その黒髪の人物に駆け寄った。
だが、手が届くより前に、すぐに取り押さえられてしまった。
「……誰だ? おまえ」
凍り付くような冷たい声と視線に、射貫かれて。
「この酒場の内部で動ける状態にある人間は組織の人員と見なす。被害者は全員、意識不明で重体だからな」
…え!?
「そ、そうです! そいつも組織の仲間です!」
何を思ったか、急に、例の四十がらみのオッサンがわめき立てた。
「おいこら! どさくさまぎれに善良な一般人を巻き添えにしようとするなオッサン! おまえが、ご隠居さんの命令でやったって言ってただろ!」
「うるさい! おまえが元凶に違いねえんだよ! 貧乏人のくせに、奢ってやるというのに飲み食いしねえなんて怪しいと思っていたら案の定だ」
言い争いを始めたおれとオッサン。
すると、間に入って争いを止めたのは、長い黒髪の美女、とも、美青年とも思える、背の高い人物だった。
「見苦しいぞ。仲間割れなら、牢に入ってからいくらでもするといい。全員、拘束して連行しろ」
こんなに、知らない人間を見るような冷たい態度をとるなんて。
もしかして、おれの勘違いだろうか。
現場の魔法使いたちを指揮している、『影の呪術師(ブルッホ・デ・ソンブラ)』は。
おれが探していた《……》では、ないんだろうか?
別れてから4年。
あまりに恋しいと思い続けていたから。
別人と、見間違えたのか……?
「…んな、わけがあるかー!」
屈強な、たぶん軍人か警官の青年に連行されながら、おれは叫んだ。
「いくら4年間も離れていたって、間違えるもんか! おまえは、おれの……!」
暗転。
どうやらおれは、警官に殴られたらしい。
それきり、意識がとぎれてしまった。
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