44 / 64
第1章
その43 ルーナリシア公女殿下はお年頃
しおりを挟む
43
どうも。
リトルホークだ。
現在のおれの状況について手短に説明しよう。
反省室として閉じ込められていた檻が消滅して、床に投げ出された、おれ。
その直前まで抱きしめていたはずの可愛い嫁ルナ(ムーンチャイルド)は、学院長《呪術師》に取り戻されてしまった。
そして《呪術師》は、囁いた。
『手遅れだ』
と。
『もう少し早くおまえが来ていれば、我々も危険な賭はしなかったかもしれない』
いったい何をするつもりだ。
勢い込んでおれは問いかけようとした。
しかしそのとき、大食堂の入り口あたりで騒ぎが持ち上がり、お付きの侍女らしき者たちの静止を振り切って、走ってきた人物がいた。
十六、七歳と思われる、高貴な美しい少女だった。
波打つ黄金の髪と、群青色の中に金色が混じる不思議な瞳。
精霊たちとはまた違う意味で人間離れした、このうえなく美しい容貌には、高慢ともとれる、庶民ではありえない気品と、野性の獣にも似たしなやかさと力強さが同居しているのだった。
リネン色の肌は、エルレーン公国の貴族には珍しく、健康的に日焼けしている。
丈の長いドレスのスカート部分にはたっぷりとひだが寄せられていて、最高級品だろう純白の絹地が贅沢に使われている。
急いで走ってくるためにドレスの裾を持ち上げているので、形の良いふくらはぎまでがのぞいている。純白の繻子の靴に縫い取られている宝石が、キラキラ輝いていた。
相当な権力と財力を誇る家庭、たぶん大貴族の子女であることは疑う余地もなかった。
「《呪術師》さま! もう、みなさまお揃いですの?」
「これは、ルーナ姫」
驚いたことには、《呪術師》が、彼女を出迎えるために、腕に抱えていたムーンチャイルドを床に降ろして、自らは頭を垂れたのだ。
「まあ《呪術師》さま! そのような他人行儀は、およしになって」
こぼれんばかりの華やかな笑みを浮かべて、黄金の姫君が……それ以外に表現のしようがなかった……足取りも軽く、駆け寄ってきた。
「わたくしの、漆黒の魔法使いさま! このルーナリシアに、ご用をお申し付けくださいませんの? あなたさまのためならば、なんでもいたしますのに」
うっとりと《呪術師》を見上げる。
まるで恋する乙女の表情だ。
彼女の名前である、月晶石とは、地球でいえばダイヤモンド。真月の女神イル・リリヤの美しさと神聖さになぞらえられる宝石である。
王侯貴族の子女にしか、名付けに用いることを許されていない。
ちなみに誰が許すかというと、王様とか国教である『聖堂』最高司祭だ。このエルレーン公国では『聖堂』の権威は及んでいないから、大公だけが許可するってことで。
あれ?
……じゃあ、少なくとも大公にお目通りが叶うほどの名家?
もしくは、大公家?
「そのような大事は、軽々しく口にのぼらせてはなりませんよ、ルーナ姫」
優しい微笑みを浮かべて、《呪術師》は、彼女を姫と呼び、唇に人差し指を立てて、注意を促すしぐさをした。
「なんでもするなどと、今後は決して用いてはいけない。この私に対する以外には」
「もちろんですわ。あなたさまですから、申し上げましたの」
「可愛らしいことをおっしゃいますね」
「まあ。わたくしの魔法使いさま。なんでもお見通しですのね」
なんだこれ。
甘ったるい雰囲気が周囲にダダ漏れ?
ハートマークが飛び交いそうだ。
あの、凍り付くように冷たい表情をしていた《呪術師》が、優しげに笑っている!?
黄金の髪をした高貴なお姫さまと?
「リトルホーク!しゃんと立ちなさいよ。せっかく学院長がムーンチャイルドの懇願を聞き入れて放免してくれたんだから。ほらっ!」
信じがたい光景に固まっていたおれの背中をどやしつけたのは、他でもない、精霊の姉、ラト・ナ・ルアだった。
「あの、ラト姉? おれ目がどうかしてる? あの《呪術師》と、お姫さまが、なんかイチャイチャしてるみたいに見えるんだけど」
おれの混乱した問いかけに、ラト・ナ・ルアは、わざとらしく大きなため息をついて、答えた。
「バカなのリトルホーク。そこらの酔っ払い親父みたいなイヤらしい喩えしかできないの。もちろん《呪術師(ブルッホ)》とルーナ姫は親しい仲だわ。あたしはそんなに……まあ気にくわないけど」
腕組みをして顔をしかめる。
精霊とも思えない、ものすごく人間くさい表情だ。
「わたしとラト・ナ・ルアは《呪術師》を幼い頃から育てて可愛がってきたのですから。複雑な心境なのは、否めません」
こう言ったのは、ラトの兄、精霊レフィス・トールだ。
「でも、その。あのお姫さまと親しいのは《呪術師》なんだよな?」
大きな声では言えない。
今この場にいる《呪術師》は、第一世代の精霊のトップであるグラウケーが代役をつとめている『影武者』なのだ。
グラウケー本人は、どう思って、ルーナ姫と親しげに振る舞っているんだろう?
「ムーンチャイルド。だいじょうぶか?」
しばらく姫とたわいのない会話をした後、《呪術師》は、傍らで、ぼんやりとしていたムーンチャイルドを気遣った。
「あっ、うん、だいじょうぶ」
かぶりを振る、ムーンチャイルド。
「どうしたの、わたしの月の子。可愛い妹。何かあったの?」
ルーナ姫は心配そうにムーンチャイルドのそばに寄り、腕に抱きしめた。
「困った叔父さまのことなら、わたくしが、きつく言い聞かせておきましたわ。もうじき貴族法廷でも裁かれます。心配はいらないのよ」
ルーナ姫は、ムーンチャイルドが、先日、館に迎えたいなどと無理難題を申しつけてきたカンバーランド卿のことで気持ちがふさいでいると思っているらしい。
何度も、大丈夫よ、と励ましている。
ムーンチャイルドは、おれの『反省室』だった檻が消えたとき一緒に床に落ちたから。《呪術師》がすぐに抱き止めたとはいえ、ショックだったろうな。
ああ、すぐにも側に行ってやりたい!
「バカね。また煩悩が漏れてるわよ。自重して。少しおとなしくしていなさい」
動こうとしたのをラト姉に右肩をつかまれ制止された。
「今はそれがムーンチャイルドのためでもありますよ」
レフィス兄が、さりげなくおれの左肩を押さえた。
「大丈夫か」
「怪我はありませんか?」
まずモル君が、そしてブラッドが、やってきてくれた。
「ああ、あなたたちは寄宿舎で今日からリトルホークの同室になるのだったわね」
ラト・ナ・ルアは、にっこりと笑った。
思いっきり営業スマイルだ。
「は、ははははい! モルです。いやモルガン・エスト・クロフォードです!」
モル君は精霊の美少女に接するのに慣れていないな。
身体がこわばってるし顔が真っ赤だ。
対するブラッドは、落ち着いている。
「ぼくは、その……」
言いかけたのをやんわりととどめ、ラト姉は更に最上級の営業スマイル。
「いいのよ。もちろんあなたのことは知っているわ。ブラッドくん。あたしたちがこの都に来てまもなく訪問した先の家にいたこと、よく覚えているから。ムーンチャイルドの、都での最初のお友達」
やさしい手で、ブラッドの頬を撫でた。
美少年の表情が、恍惚とする。
あれ? やばくないか? 恋に落ちた?
精霊(セレナン)たちは、どんだけ、人間たちを虜にしようというのか。
「ムーンチャイルド。ルーナ姫にも、あれを」
「はい。用意はできてるよ」
《呪術師》の指示で、精霊の水を満たしたグラスを、ルーナ姫に差し出す。
それは、ほかの生徒達に与えられたものとは明らかに違っていた。
濃い銀色のもやに包まれた『特別な精霊の水』が、いっぱいに満たされている。
姫は、にっこり笑って。
当然のように、ためらいも見せずに杯に口をつけた。
「急に飲み干してはだめだよ」
「はい。わかってるわ。ありがとうムーンチャイルド」
姫はムーンチャイルドに優しい。
尖った剣先のように険しさのある美貌もあいまって、最初は姫を、高慢なところもあるのかと思ったが、全くそうではないとわかった。
「おい、あれ。いつも《呪術師(ブルッホ)》《呪術師》さまが飲んでるのと同じやつだ。おれたちにさっき配られたのとは、込められた魔力のレベルが違うぞ」
モルガンの表情が引き締まった。
「それはそうだよ、モル。だってルーナは特別だもの」
ブラッドが、モルガンを軽くいなした。
彼女は特別?
ブラッド、いまルーナって。「姫」って尊称をつけなかったな?
「リトルホーク。我が妹ムーンチャイルドに求婚した、命知らずのおまえには、伝えておこう」
ムーンチャイルドとルーナ姫をともなってやってきた《呪術師》。
なんか悪い予感がする。
姫からは見えない角度で、くすり、と、笑って。おもむろに、おれに告げた。
「こちらはエルレーン大公の息女。公女ルーナリシア殿下にして、公太子フィリクス殿下の正当なる妹君。ルーナ姫、これは、ムーンチャイルドに求婚している無謀な若者。北方ガルガンド氏族長スノッリの養子、リトルホークだ」
紹介された姫さまは、屈託のない笑みを浮かべた。
意外と親しみやすい笑顔だ。
「初めまして。ルーナリシアですわ。どうぞルーナとお呼びになってくださいまし。学院のみなさまにもそう申し上げておりますのに、なぜか誰も呼び捨てにしてくださらないのですけど」
そりゃあ、そうだろうよ!
心の中でおれは盛大なるツッコミを入れた。
うすうす、そうかなって思ってた。
本当に、このエルレーン公国の公女さまだって!
いくら本人がそう言ったからって正直に呼び捨てしたら、お付きの人たちが黙ってないに決まってるだろ!
しかし、それに続く《呪術師》の宣言は、まさに驚くべきものだった。
「そして、ルーナ姫は。この私、レニウス・バルケス・レギオンの、大公閣下もお認めになられた婚約者だ」
……はい~!?
どうも。
リトルホークだ。
現在のおれの状況について手短に説明しよう。
反省室として閉じ込められていた檻が消滅して、床に投げ出された、おれ。
その直前まで抱きしめていたはずの可愛い嫁ルナ(ムーンチャイルド)は、学院長《呪術師》に取り戻されてしまった。
そして《呪術師》は、囁いた。
『手遅れだ』
と。
『もう少し早くおまえが来ていれば、我々も危険な賭はしなかったかもしれない』
いったい何をするつもりだ。
勢い込んでおれは問いかけようとした。
しかしそのとき、大食堂の入り口あたりで騒ぎが持ち上がり、お付きの侍女らしき者たちの静止を振り切って、走ってきた人物がいた。
十六、七歳と思われる、高貴な美しい少女だった。
波打つ黄金の髪と、群青色の中に金色が混じる不思議な瞳。
精霊たちとはまた違う意味で人間離れした、このうえなく美しい容貌には、高慢ともとれる、庶民ではありえない気品と、野性の獣にも似たしなやかさと力強さが同居しているのだった。
リネン色の肌は、エルレーン公国の貴族には珍しく、健康的に日焼けしている。
丈の長いドレスのスカート部分にはたっぷりとひだが寄せられていて、最高級品だろう純白の絹地が贅沢に使われている。
急いで走ってくるためにドレスの裾を持ち上げているので、形の良いふくらはぎまでがのぞいている。純白の繻子の靴に縫い取られている宝石が、キラキラ輝いていた。
相当な権力と財力を誇る家庭、たぶん大貴族の子女であることは疑う余地もなかった。
「《呪術師》さま! もう、みなさまお揃いですの?」
「これは、ルーナ姫」
驚いたことには、《呪術師》が、彼女を出迎えるために、腕に抱えていたムーンチャイルドを床に降ろして、自らは頭を垂れたのだ。
「まあ《呪術師》さま! そのような他人行儀は、およしになって」
こぼれんばかりの華やかな笑みを浮かべて、黄金の姫君が……それ以外に表現のしようがなかった……足取りも軽く、駆け寄ってきた。
「わたくしの、漆黒の魔法使いさま! このルーナリシアに、ご用をお申し付けくださいませんの? あなたさまのためならば、なんでもいたしますのに」
うっとりと《呪術師》を見上げる。
まるで恋する乙女の表情だ。
彼女の名前である、月晶石とは、地球でいえばダイヤモンド。真月の女神イル・リリヤの美しさと神聖さになぞらえられる宝石である。
王侯貴族の子女にしか、名付けに用いることを許されていない。
ちなみに誰が許すかというと、王様とか国教である『聖堂』最高司祭だ。このエルレーン公国では『聖堂』の権威は及んでいないから、大公だけが許可するってことで。
あれ?
……じゃあ、少なくとも大公にお目通りが叶うほどの名家?
もしくは、大公家?
「そのような大事は、軽々しく口にのぼらせてはなりませんよ、ルーナ姫」
優しい微笑みを浮かべて、《呪術師》は、彼女を姫と呼び、唇に人差し指を立てて、注意を促すしぐさをした。
「なんでもするなどと、今後は決して用いてはいけない。この私に対する以外には」
「もちろんですわ。あなたさまですから、申し上げましたの」
「可愛らしいことをおっしゃいますね」
「まあ。わたくしの魔法使いさま。なんでもお見通しですのね」
なんだこれ。
甘ったるい雰囲気が周囲にダダ漏れ?
ハートマークが飛び交いそうだ。
あの、凍り付くように冷たい表情をしていた《呪術師》が、優しげに笑っている!?
黄金の髪をした高貴なお姫さまと?
「リトルホーク!しゃんと立ちなさいよ。せっかく学院長がムーンチャイルドの懇願を聞き入れて放免してくれたんだから。ほらっ!」
信じがたい光景に固まっていたおれの背中をどやしつけたのは、他でもない、精霊の姉、ラト・ナ・ルアだった。
「あの、ラト姉? おれ目がどうかしてる? あの《呪術師》と、お姫さまが、なんかイチャイチャしてるみたいに見えるんだけど」
おれの混乱した問いかけに、ラト・ナ・ルアは、わざとらしく大きなため息をついて、答えた。
「バカなのリトルホーク。そこらの酔っ払い親父みたいなイヤらしい喩えしかできないの。もちろん《呪術師(ブルッホ)》とルーナ姫は親しい仲だわ。あたしはそんなに……まあ気にくわないけど」
腕組みをして顔をしかめる。
精霊とも思えない、ものすごく人間くさい表情だ。
「わたしとラト・ナ・ルアは《呪術師》を幼い頃から育てて可愛がってきたのですから。複雑な心境なのは、否めません」
こう言ったのは、ラトの兄、精霊レフィス・トールだ。
「でも、その。あのお姫さまと親しいのは《呪術師》なんだよな?」
大きな声では言えない。
今この場にいる《呪術師》は、第一世代の精霊のトップであるグラウケーが代役をつとめている『影武者』なのだ。
グラウケー本人は、どう思って、ルーナ姫と親しげに振る舞っているんだろう?
「ムーンチャイルド。だいじょうぶか?」
しばらく姫とたわいのない会話をした後、《呪術師》は、傍らで、ぼんやりとしていたムーンチャイルドを気遣った。
「あっ、うん、だいじょうぶ」
かぶりを振る、ムーンチャイルド。
「どうしたの、わたしの月の子。可愛い妹。何かあったの?」
ルーナ姫は心配そうにムーンチャイルドのそばに寄り、腕に抱きしめた。
「困った叔父さまのことなら、わたくしが、きつく言い聞かせておきましたわ。もうじき貴族法廷でも裁かれます。心配はいらないのよ」
ルーナ姫は、ムーンチャイルドが、先日、館に迎えたいなどと無理難題を申しつけてきたカンバーランド卿のことで気持ちがふさいでいると思っているらしい。
何度も、大丈夫よ、と励ましている。
ムーンチャイルドは、おれの『反省室』だった檻が消えたとき一緒に床に落ちたから。《呪術師》がすぐに抱き止めたとはいえ、ショックだったろうな。
ああ、すぐにも側に行ってやりたい!
「バカね。また煩悩が漏れてるわよ。自重して。少しおとなしくしていなさい」
動こうとしたのをラト姉に右肩をつかまれ制止された。
「今はそれがムーンチャイルドのためでもありますよ」
レフィス兄が、さりげなくおれの左肩を押さえた。
「大丈夫か」
「怪我はありませんか?」
まずモル君が、そしてブラッドが、やってきてくれた。
「ああ、あなたたちは寄宿舎で今日からリトルホークの同室になるのだったわね」
ラト・ナ・ルアは、にっこりと笑った。
思いっきり営業スマイルだ。
「は、ははははい! モルです。いやモルガン・エスト・クロフォードです!」
モル君は精霊の美少女に接するのに慣れていないな。
身体がこわばってるし顔が真っ赤だ。
対するブラッドは、落ち着いている。
「ぼくは、その……」
言いかけたのをやんわりととどめ、ラト姉は更に最上級の営業スマイル。
「いいのよ。もちろんあなたのことは知っているわ。ブラッドくん。あたしたちがこの都に来てまもなく訪問した先の家にいたこと、よく覚えているから。ムーンチャイルドの、都での最初のお友達」
やさしい手で、ブラッドの頬を撫でた。
美少年の表情が、恍惚とする。
あれ? やばくないか? 恋に落ちた?
精霊(セレナン)たちは、どんだけ、人間たちを虜にしようというのか。
「ムーンチャイルド。ルーナ姫にも、あれを」
「はい。用意はできてるよ」
《呪術師》の指示で、精霊の水を満たしたグラスを、ルーナ姫に差し出す。
それは、ほかの生徒達に与えられたものとは明らかに違っていた。
濃い銀色のもやに包まれた『特別な精霊の水』が、いっぱいに満たされている。
姫は、にっこり笑って。
当然のように、ためらいも見せずに杯に口をつけた。
「急に飲み干してはだめだよ」
「はい。わかってるわ。ありがとうムーンチャイルド」
姫はムーンチャイルドに優しい。
尖った剣先のように険しさのある美貌もあいまって、最初は姫を、高慢なところもあるのかと思ったが、全くそうではないとわかった。
「おい、あれ。いつも《呪術師(ブルッホ)》《呪術師》さまが飲んでるのと同じやつだ。おれたちにさっき配られたのとは、込められた魔力のレベルが違うぞ」
モルガンの表情が引き締まった。
「それはそうだよ、モル。だってルーナは特別だもの」
ブラッドが、モルガンを軽くいなした。
彼女は特別?
ブラッド、いまルーナって。「姫」って尊称をつけなかったな?
「リトルホーク。我が妹ムーンチャイルドに求婚した、命知らずのおまえには、伝えておこう」
ムーンチャイルドとルーナ姫をともなってやってきた《呪術師》。
なんか悪い予感がする。
姫からは見えない角度で、くすり、と、笑って。おもむろに、おれに告げた。
「こちらはエルレーン大公の息女。公女ルーナリシア殿下にして、公太子フィリクス殿下の正当なる妹君。ルーナ姫、これは、ムーンチャイルドに求婚している無謀な若者。北方ガルガンド氏族長スノッリの養子、リトルホークだ」
紹介された姫さまは、屈託のない笑みを浮かべた。
意外と親しみやすい笑顔だ。
「初めまして。ルーナリシアですわ。どうぞルーナとお呼びになってくださいまし。学院のみなさまにもそう申し上げておりますのに、なぜか誰も呼び捨てにしてくださらないのですけど」
そりゃあ、そうだろうよ!
心の中でおれは盛大なるツッコミを入れた。
うすうす、そうかなって思ってた。
本当に、このエルレーン公国の公女さまだって!
いくら本人がそう言ったからって正直に呼び捨てしたら、お付きの人たちが黙ってないに決まってるだろ!
しかし、それに続く《呪術師》の宣言は、まさに驚くべきものだった。
「そして、ルーナ姫は。この私、レニウス・バルケス・レギオンの、大公閣下もお認めになられた婚約者だ」
……はい~!?
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる