死霊使いと精霊姫

五月七日 外

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ルベール国

ルベール国②

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「えっ!今日も支払いできないんですか?」
「申し訳ございません!係りの者が忙しくてまだ確認ができていませんのでお支払いができないんです」
 ルベール国の中央に位置する役所内にてそんなやりとりをここ三日連続でやっている。三日前に井戸の修理を終えたましろたち(せつなは何もしてないが)だったのだが未だに報酬を貰えずにいた。
「支払いがまだなのは、わかりました……でも、仕事が0個はおかしいでしょ!」
「申し訳ございません!私共も原因はよくわからないんですがここ最近生霊の数自体が減ってきてまして……死霊が出たという報告も無いですし……それで他の死霊殺しの方々も日雇いの仕事をしてるので新しい仕事が来てもすぐに他の人が契約をしてしまうという状況でして……」
「……朝一で来るしかないのかなぁ、ありがとうございました」

「どうだった?」
 ましろが役所から出ると入り口の前にせつなが待ち構えていた。
「今日もダメだった……俺は街中を散歩するつもりだけど、せつなはどうする?」
「わたしも暇だから散歩する」
「じゃあ、昨日の店から食べ歩きの旅再スタートだな」
「当然でしょ。あそこの団子を食べないと先には進めない」
 ましろたちは昨日も仕事が無かったので食べ歩きをしていたのだが、せつなが団子にハマってしまい至るところの団子屋さんを巡ることになったのだが昨日は休店日だったので入れなかった団子屋さんがあったのだった。

「今日もお休みかよ!」
 ましろたちは早速目当ての団子屋さんに向かったのだが店の前には「本日休店」の看板が建てられていた。
「ここの店主はわたしに殺されたいのかしら?」
「お、落ち着けよ!……たまたま今日は急用が入ったんだよ。また明日にでも来よう?」
「まあいいわ、ましろがそこまで言うなら今日のところは見逃してあげる」
「とりあえず、こっちに行ってみようぜ!まだこっちは行ったことないしさ」

「この国って井戸多すぎない?」
 せつなが二、三件巡ったところでそう聞いてきた。
「まあこの国は水の名産地だからなぁ、多く取るために井戸も多いんだろ」
「ふ~ん、それにしても井戸が多い……あれは?」
 せつなが突然立ち止まってそう聞いてきた。
「あれは噴水だよ。元々は井戸だったんだろうけど使わなくたったから噴水にしたんじゃないかな……」 
 ましろはせつなに噴水の説明をしてあげたのだが……
「噴水くらい知ってる。そんなことじゃなくてあの噴水変じゃない?」
「え?俺には普通の噴水にしか見えないけど……」
「わたしの気のせいかしら?まあいいわ、次の店に行きましょう」
「そうだな」
 今日もましろたちは働かずに一日を終えてしまいそうだ。


「おはようございます!えっと、お支払いはまだなんですが仕事の依頼が入ってますよ!」
 ましろは朝一に役所に向かうと、だいぶ顔馴染みになった係員のお姉さんがこっちに向かって歩いてきた。
「本当ですか!助かります……それで仕事って何なんですか?」
「それが……別の井戸修理なんですけど……」
 お姉さんがとても言いずらそうに教えてくれた。
「それもあれですよね……」
「はい……確認が終わらないとお支払いが出来ません……」
「う~ん……無いよりはマシなんで、受けますよ井戸修理」
「すいません、お願いします」
 お姉さんが申し訳なさそうに何度も頭を下げてくる。
「いえいえ、お互い大変ですけど頑張りましょう」

 こうして、ルベールに来て二度目の仕事はまたしても井戸の修理になってしまった。

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