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この連載のこと

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 何年も前に、やすらぎさんから「ミケちゃんのこれまでのお話を書いてください」とお申し出があり、「はい、いずれは」とお約束していました。

 でも、水玉がもたもたしているうちに、ミケちゃんのツイッターはどんどん人気になっていきました。
 今も、フォロワーさんは増え続けています。
 この「ミケちゃん、おはよう」の連載を開始した時点でのフォロワーさんは1万8千。それが、この一ヶ月で、さらに2万1千になりました。


 2017年には著名なライターさんがWebサイトのフェリシモ猫部(佐竹茉莉子さん「道ばた猫日記」)やsippo(朝日新聞運営)に記事をあげ、それがまたYahooニュースに転載されるようになりました。
(「ミケちゃん、おはよう!」の連載中の8月9日にも、Benesseのねこのきもちweb magazineでミケちゃんは紹介され、その記事もYahoo!ニュースに転載されました。さらには8月18日には前述のライターさんによるミケちゃんのお見舞いの記事がフェリシモ猫部のサイトにアップされました)


 それもあって、今更、水玉猫ごときが作品にまとめて書くまでもないんじゃないかと、従来の怠け癖といじけ根性も手伝って、さらに延ばし延ばしになっていました。


 実は、今年の始めに、4月1日のミケちゃんのお泊り連続記念日から連載開始しますと、やすらぎさんにお約束したのですが、当日になっても1話どころか、1字も書いておらず、とんだエイプリルフールになってしまいました。


 それが7月の最終週になって、突然、何かに取り憑かれたように、この連載を思い立ったのです。
 社会が平穏であってさえ、明日は何があるのかわかりません。
 それなのに、このパンデミック。
 更には、昨今の気候変動。
 いつ、どんな災禍があっても不思議ではありません。
 1時間後、30分後、5分後に、確実に命があるという保証など、誰もしてくれないのです。
 
 今、書いておかなければ、ミケちゃんとの約束が果たせないままになると、この夏の予定を慌てて全部変更し、これまで集めておいたミケちゃんのメモの整理を始めました。
 我ながら、衝動的だったとしか思えません。


 7月の28日に作品登録して、7月31日の18時に1話目の「三毛猫はラッキーキャット」を公開しました。
「甲状腺機能亢進症1」にも書いたように、その16分後に、思いもしなかったミケちゃん体調不良のツイート。

 水玉は慌てました。
 連載開始直後に、ミケちゃんに万一のことがあったりしたら、後味が悪いどころではありません。
 以前からお約束していたとはいえ、飼い主のやすらぎさんとは何の打ち合わせもなく、いきなり連載を始めてしまっていたので尚更なおさらです。

 連載を中止し作品自体を取り下げようかと、迷いに迷いました。


 それでも、連載を続けたのは、もしかしたらミケちゃんが「これまで歩んできたこと」を、今このタイミングで書いて欲しかったんじゃないかと、ふと思ったからです。
 単なる思い過ごしかもしれません。単なる偶然かもしれません。あるいは、こじつけかもしれません。
 でも、そんな気がしてならなかったのです。


 8月11日のツイッターで、やすらぎさんが「ミケちゃん、おはよう!」を紹介した後こんなことをおっしゃっていました。

「本当に、本当に偶然当時お世話になった病院のスタッフの方が昨日初めてマッサージを受けに来てくださってビックリ(☉。☉)
 ミケちゃんといると奇跡のような事が、普通に起こります」

 8月10日と11日のエピソードは、「手術当日」と「妊娠」。
 ちょうど、その病院のエピソードだったのです。
 出来過ぎなほどの偶然です。

 もし、何かに取り憑かれているのだとしたら、それは猫の妖精か元締めか、猫の秘密結社なのかもしれません。
 

 行き当たりばったりの連載だったのに、途中から、やすらぎさんがミケちゃんのツイッターで、その日のエピソードの過去ツイートを投稿してくださるようになりました。
 写真や動画を見るのと見ないのでは、まるでイメージが違います。
 そのおかげで、ミケちゃんのフォロワーさんたちが、ツイッターで盛り上がってくださいました。

 ミケちゃんの当初からのフォロワーさんたちとは、今までのことを一緒に振り返ることができ、新しいフォロワーさんたちには、ミケちゃんのこれまでのことを知ってもらうことができました。


 ミケちゃんのツイートの中には、ミケちゃんとやすらぎさんだけではなく、たくさんの猫や人がいます。その一つ一つに物語が、あります。
 フォロワーさんたちも、同じです。
 お一人お一人に別々の物語があって、その物語は他の物語に交差して、ツイッターを通じて新しい物語が更に紡がれていきます。

 フォロワーさんたちの中には、ご自身が闘病中の人たち、ミケちゃんと同じに飼い猫飼い犬が闘病中の人たちもいます。
 その人たちがミケちゃんのツイッターで出会い、励まし合い、時には思いを打ち明け、相談しあう……。
 ともすれば悪い面が強調されがちなツイッターですが、なかなか捨てたものじゃないなと実感したこの一ヶ月でした。


 読んでくださった皆様、ありがとうございました。
 やすらぎさんこと冨森猛様、ミケちゃん、ありがとうございました。
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